コラム「組織の成長加速法」-第242回 上場企業役員が“覚醒”した瞬間に起きたこととは?
上場企業の役員でも、覚醒には「転機」がある
今年担当させていただいたリーダーの中には、上場会社の役員の方もいらっしゃいました。
長い長いリーダー経験を持ちながらも、業績の悪化に苦しんでおられました。
この方をMさんとしましょう。Mさんは技術部門出身で、会社の核となる部門を率いていらっしゃいました。
部下からは一定の信頼を得ていたものの、部門の雰囲気はどこか閉塞感があり、
「この先どうなるんだろう…」と将来に不安を抱える社員が少なくなかったのです。
離職率の高止まり──このままでは、人材が枯渇してしまう……。
じつはこのようなケースは少なくありません。
経営幹部として長年勤めてきた方ほど、ある種の“殻”に閉じこもってしまう傾向があります。
「今さら新しいやり方なんて」と、無意識にブレーキをかけてしまうのです。
マネジメント技術 × 裏の仕掛け
そんな中、組織の立て直しのためにマネジメントの技術を手にしたMさんは、大きな手応えを感じていました。
これまでにないほど、相手を計画的に後押しできている感覚があったのです。
マネジメント技術を導入する前までは、Mさんにも「やるべきことはやってきた」という自負がありました。
ですが、伝えても伝えても、返事はすれど、もっともらしい理由とともに、物事が進まない膠着状態が、
組織内の至るところで発生していたのです。
半年間ご一緒して、Mさんにはある“転機”が訪れました。
実はこの転機は、私がご提供しているプログラムの中に組み込まれている仕掛けのひとつです。
なかなか一歩を踏み出せなかったリーダーが、「カチッ」という音とともにスイッチが入り、
ガラッと変わる瞬間があるんです。
もちろん、マネジメントプログラムの中には、他にもたくさんの“転機のスイッチ”が散りばめられています。
なぜなら、リーダーの成長なくして、組織の成長はあり得ないからです。
「学ぶだけ」で終わるマネジメントの落とし穴
Mさんのように真面目で誠実な方ほど、
「マネジメントを学べば、自然と部門は良くなる」と信じています。
でも、これはよくある誤解です。
学んだことを“実践に落とし込む設計”がなければ、成果は出ません。
学ぶだけでは、残念ながら現場は変わりません。
なぜなら、多くのリーダーは「知っている」ことを「やっている」と錯覚してしまうからです。
もちろん、当の本人は懸命に取り組んでいます。
ですが、マネジメントを学んだ後も、実際の現場では、マネジメント以外の業務に忙殺されてしまっているのです。
本当の変化は、“知っている”ではなく、“やる”ことから始まります。
Mさんが成果を出し始めたのも、「明確な未来」を決め、そこから逆算して“今日の行動”を変えたその瞬間からでした。
未来から逆算することが、覚醒のスイッチになる
私がこれまで1,500名以上のリーダーと関わってきた中で、覚醒のスイッチが入る瞬間には共通点があります。
それは、「リーダーが自分の未来を決めたとき」です。
未来の目標が決まると、「今日何をすべきか」が一変します。
たとえば「半年後に○○を実現する」と決めると、今日何を始めるかが明確になります。
逆に、未来が曖昧なままでは、行動もぼんやりしたままなのです。
Mさんも、あるワークを通じて、自分の理想のリーダー像と向き合い、それをチームに宣言しました。
この“宣言”が、自分の背中を押し、周囲の行動まで変えていったのです。
行動を変える仕組みを組織に埋め込め
私のプログラムでは、常にリーダーが自ら実践し、体得したものを部下にも“時間差”で伝え、実践してもらうという形式をとっています。
これはリーダーにとっても納得感が高く、実践しやすいスタイルです。
そしてもう一つ、大きな効果があります。
それは、社員はリーダーの言葉より“行動”を見ているということです。
リーダーが自ら未来を決めること。
そこから逆算して“今日の行動”を変えること。
それがリーダーの“覚醒スイッチ”が入った後に起きること**なのです。
そして、それを実行に移すための“仕組み”があれば、誰でも変われます。
今、御社のリーダーは未来を語っていますか?
「なんとなく忙しい毎日」の繰り返しになっていませんか?
未来からの逆算──これは、個人のパフォーマンスを引き上げるだけでなく、
組織全体を“意図をもって”動かすための、最も重要な鍵なのです。
成長の起点は「未来を決めること」
組織が成長するには、まずリーダーが覚醒すること。
その第一歩が、「自分の未来を決めること」です。
未来が決まれば、行動が変わります。
行動が変われば、成果が変わります。
そしてその変化は、周囲の社員にも波及し、組織全体の動きを変えていきます。
リーダーの変化とは、組織の未来を変える“スイッチ”でもあるのです。