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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第159回 V字回復は意図して出来る!⇒短期的に業績回復したい社長がやるべきこと


 50億円の売上げを誇る販売業の社長から、コロナ禍中に、ご相談を受けました。それから1年半、今年の8月過去最高月商を実現。こちらの会社は、コロナ禍で下がる前から業績が低迷していました。コロナ禍で、大きく一段下げましたが、見事にV字回復を遂げました。社長曰く、「これほど短期間での回復があるとは想定外!」と喜んでいただいてます。

 コロナ禍では、様々なことが変わりましたが、結局、売上を上げるための根本は何一つ変わらない。これは、歴史を100年振り返れば分かること。環境変化に応じて、変わるものと変わらないものがある。変わらないものを見定めて、そこを強化する。やったことはそれだけですす。

 営業活動を強化すれば、売上げは上がる。至極、当然なのですが、これを推進することが難しいので困っている組織は多くあります。

・コロナがありました
・お客様が渋り始めました
・在庫の問題が起こりました
・社員が辞めました
等々、

 出来ない理由を繰り返し聞いていると、どこぞの国のフェイクニュースよろしく、社員達は、出来ない理由を繰り返し聞いて、洗脳状態に陥ります。こうした状態を、赤字慣れ、負け癖などといいます。
 洗脳、慣れとは恐ろしいもの。取締役営業部長も例外ではありませんでした。営業の鬼とまで言われた営業部長の口から、売上低迷の理由が、幹部会議の場面で繰り返し語られるようになって5年以上が経っていました。

 


「出来ない」という洗脳状態から脱する

 社長、取締役営業部長、そして、長期低迷の支店長の店長の3名がプログラムに参加いただき、組織改善プログラムがスタートしました。4ヶ月には、営業活動量のアポイントの数、訪問数が2019年比を上回る支店が出てきました。営業成績を改善することは、難しいことは何もありません。ただ、洗脳状態を解けばよいだけです。

 正しくは2017年後半から、売上の伸び鈍化が鮮明になっていました。それから、出来ない理由が増えていました。

・頑張っても難しい。
・頑張っても、維持が精一杯。
・今までのやり方は通用しない。
・営業マンが足りない
・競争力がないから厳しい。競合に負ける。

等々、競合と競り合って失注する度に、繰り返し言われる言葉に営業マンが洗脳状態にありました。
 かつての鬼の営業、部長も手をこまねいたわけではありませんでした。様々な策を出し、これなら、いける。これなら挽回できる。そんな策を出し続けてきたのです。
 しかし、状況は悪化するばかり。口には出さない、人には見せないものの、鬼の営業は、すっかり自信喪失状態にありました。

 私は、営業部長に御願いした、3つの指標からなる過去データを確認しました。問題点が浮かび上がりました。営業部長に確認すると、こんな返事が返ってきました。

「木村先生、私もそこが根本だと思います。支店長達にも何度も指摘して、目標の死守を伝えてきました。私の力不足です。」
「いえ、そうではありません。ここは売上目標とは直接関係のない数字です。なぜ、この数字が改善しなかったか。」
「コロナ禍で、顧客の方から断れることが多くなりました。」
「コロナ禍の前から下がっている理由は何でしょう?」
「・・・」
「この数字は、顧客とは関係ありません。この2ヶ月ここに集中しましょう。」

 指摘した内容は、「新人営業マンであっても、出来ること」でした。ただ、やるだけ。本来なら、全営業が達成できる数字です。
 ところが、支店によって隔たりがでてきました。もちろん、これは想定内の出来事です。業績改善のための、最初の一歩で、最強の一歩。やれるはずがやれない。これを全員に周知することが、目的でした。

 プログラムに参加していただいた、支店長の支店では、指示内容、確認項目、確認の間隔を徹底してもらいました。「やれば出来るよ」という姿を全社に示すために、この実践が鍵となります。この支店では、結局、2019年比、180%を実現。訪問件数は、2019年比で、250%となりました。
 「あれ?できるじゃん。」
この支店の支店長、営業マン、そして、営業部長も、洗脳から解けました。


根本問題は、策の善し悪しではない。100の実践か、10の実践かの違い

 プログラムを受講して、元営業の鬼は思い知ることになります。挽回策が間違っていたのではなく、ただ、実践されてなかっただけで、策は、十二分に価値があったことを。

 この支店の成果を目の当たりにして、元営業の鬼は、覚醒しました。再び、鬼になったのです。目に光がもどりました。もう迷うことはなくなりました。鬼の大号令が全社に響きます。鬼がこのプログラムで担当した2支店は、先の支店を凌駕する実績を叩き出しました。

 鬼にとっても、この2つの支店は重要な意味がありました。営業部長にとっては、弁慶の泣き所、、、ともいえる支店でした。部長就任から6年。とにかく部長の方針に従わない店舗として、鬼にとっては、ストレスを感じる支店でした。

 プログラムを進めながら、新しい組織運営の方法を伝えました。当初の鬼の反応は、「こんなことで、あいつらが動く!?・・・そんなはずがあるものか。」でした。これも想定済み。どこの企業でも、同じような反応です。
 しかし、鬼の目は驚きでまん丸になります。「あら!?え?」という鬼にとっては、理解不能な現実が現れたのです。

 あれほど抵抗してきた2名の支店長は、素直に聞いてくれただけではなく、どの支店よりも良い成果を叩き出したのでした。それが、全社を動かすきっかけとなります。

 それから、鬼が言う言葉が変わりました。「○○の意図をもってこの施策を実施する、30分を1日2回。外交の営業も、・・・・」という具合に、意図を言語化し、支店長にもその意図を共有するようになりました。「支店長が何をすればよく、どういう結果をだせば良いのか」を明確にしたのです。

 営業部全体の実践量が忽然と変わりました。営業部長が直接対応した2支店、私のご支援した支店は、他支店を大きく突き放す実践量を叩き出します。それにズルズルと引きずられる形で、多支店の実践量も上がりました。

 営業部全体が、悪しき洗脳から覚醒したのです。そして、続く躍進につながって行きます。


社長、幹部は、社員の行動を変える術を持て!

 業績改善というと、戦略の見直し、戦術の見直し、はたまた、事業先戦略の見直しなど、多くの切り口があります。

 もちろん、より確かな戦略、戦術があれば、それに超したことはありません。しかし、どれほど正しい戦略、効果的な戦術があっても、それは実践されなければ、絵に描いた餅です。 どれほどの組織がこの単純な構図の中にあって苦しみもがいていることか。実践できること以外は、意味がない。

 組織を意図通り動かすことができると、組織の実践量が圧倒的に増えていきます。5年、10年の社歴がある会社は、何を実践すれば、どういう結果がついてくるかわかっています。しかし、どういうわけか、そのことを忘れてしまいます。

 根本的な問題は、結果を出すための実践量であるのに、実践量が下がっていることを見過ごしてしまいます。いつのまにか、業績低迷の理由が別のことに置き換わります。戦略の問題、環境変化、そして、挙げ句に、製品・サービスの競争力の問題だ、などと言い始めるのです。

 更に今は、若い人達は、仕事よりも家庭を優先する、云々。だから、実践量を上げたくても上げられない云々。そんな新しい言い訳が登場しています。

 この会社もそうでしたが、実践力が上がると共に、一時的に残業時間が増えた支店はありました。全体的には、プログラムの進行と共に残業時間は、減り続けていきました。
 この会社に行って、「2年前と比較してみてください。」と支店長や営業リーダーに話しを向けると、「売上げは随分上がって、忙しいけど、不思議と残業時間は減っています」という旨の答えが返ってきます。

 社長、幹部に必要なのは、目の前の社員を確実に動かす技術を手にすることです。新しい戦略を練るよりも、今ある戦略をか苦実に実行できる状態を3ヶ月以内に創ることが最善の手です。さすれば、コロナ禍以前に戻るだけではなく、過去最高実績を実現するのも夢ではなくなります。