コラム「組織の成長加速法」-第236回 「やるべきことが実行されない」問題を完全解決!

金融業の役員Fさんからのご相談
「今年もまた、予算を未達の月が多いのです。売上は横ばい。けれど、やるべきことさえできれば、数字は追いつくはずなんです」
そう話されたのは、ある金融業の営業部門を束ねる役員のFさん。
ご自身も現場を熟知しており、部下の努力も否定されていません。ただ、そのFさんが、ため息まじりに続けたのです。
「わかっているんです。やるべきことが“実行されない”のですよね――と。」
この言葉、実は多くの企業で聞かれます。「社員はわかっているはず・・」「でも実行できない。」「継続できない」この問題の本質に迫ります。
「やるべきことが実行されない」——全リーダー共通の悩み
やるべきことができない社員。これは部下を持つすべてのリーダーが抱える共通課題です。
Fさんのように、やるべきことが明確になっているはずなのに、社員が実行しない。そんなケースは枚挙にいとまがありません。
では、なぜ人はやらないのか?
社員を活かせるか、活かせないか。そこにリーダーとしての真価が問われます。
そして、これは一時の気合いや精神論では解決しません。むしろ、組織設計とマネジメントの“技術”の問題なのです。
仕組みがあっても成果が出ない会社の共通点
今回ご相談をいただいた企業は、歴史もあり、従業員も300名を超える中堅規模。
制度も充実し、DX化も進み、見た目には「やるべきことをやれる環境」は整っているように見えます。
ですが、現実は数字が動かない。
その理由は、シンプルです。「仕組みが運用されていない」。
もっと言えば、仕組みの先にある「人を動かすマネジメント力」が足りていないのです。
仕組みは手段。成果を生むのは、仕組みを動かす人間の力です。
「やるべきことが実行されない」問題が解決しない理由
この「やるべきことが実行されない」問題、間違った認識で捉えると、永遠に解決しません。
制度を強化すれば、行動が変わる。ルールを設ければ、社員が動く。
そんな幻想が、ますます組織を硬直させてしまうのです。
これまで通りのマネジメント手法、これまで通りの会議体、これまで通りの指導。
それで結果が出ていないなら、それは「方法が間違っている」ということ。
一刻も早く、認識をアップデートする必要があります。
問題の構造を理解すれば、答えは自ずと見える
「やるべきことが実行されない」問題の構造は、実はとてもシンプルです。
人間の行動原則は、「闘争(やる」」か「逃走(やらない)」か。この2つしかありません。
この構造を知っているかどうかが、マネジメントの成功率を大きく左右します。
選択の場面で、どちらの行動をとるかは、本人の「内的判断」に委ねられています。
つまり、「やる」か「やらないか」は、その人の“頭の中”で決まっているということ。
これを理解せずに、外側の仕組みだけで人を動かそうとしても、うまくいきません。
「自分事」になるかどうか。それが行動の分岐点
人は、自分の言葉には従いますが、他人の言葉には反発するもの。
経営者がどれだけ「やってほしい」と願っても、部下の頭の中で「自分事」になっていなければ、行動にはつながりません。
よくある話です。「本人の将来のためにも必要なことなのに、なぜ動かないのか?」
その答えは、「本人の中でそれが“自分の意志”になっていないから」です。
他人事のままでは、人は決して本気では動きません。
「動かす技術」をリーダーが持っているか?
部下を動かすには、正論だけでは足りません。否、「やるべきことを実行しない」社員の場合は、“リーダーが考える正論“では絶対に動かない。「やるべきことを実行しない」社員にとって、それは他人事だからです。
経営者・管理職が持つべきなのは、「相手の中に“自分事”をつくる技術」。
それが、人を動かすマネジメントの核となるスキルです。
この技術は一部の天才だけが持つ才能ではなく、誰でも習得可能な“技術”です。
実際、20代の若手マネージャーから、80代の創業経営者までが身につけ、
3ヶ月で目の前の社員に変化を感じたという実例も少なくありません。
「やるのが当たり前」の文化が業績を変える
ある企業では、この技術を5年以上継続され、先日久しぶりに社長とお会いしました。
売上は当時の1.8倍。上場準備も進行中。社長はこう言われました。
「うちはもう“やるべきことをやる”が当たり前の文化になりましたよ」
想像してみてください。
社員が毎日、やるべきことを迷わずやってくれる組織。
その状態が5年間続いたら、会社はどう変わるでしょうか?
逆に、今と変わらない5年が続いたとしたら…。
どちらの未来を選びますか?
気合ではなく、「技術」が未来を変える
「やるべきことをやらせる」のは、精神論でも根性論でもありません。
社員の気合を期待する前に、リーダー自身が「やらせる技術」を持つこと。
それこそが、組織の未来を大変革を決定づける唯一の手段です。
気合で一時的に動かしても、長続きはしません。
必要なのは、人が自然と動いてしまう仕組みと技術です。
御社では、社員がやるべきことを“自分事”として動けていますか?
「やるべきことができない」を社員の責任として放置していませんか?
リーダーが、「相手の中に“自分事”をつくる技術」を手にすれば、業績は改善します。そして、人と組織の悩みから解放されます。一度立ち止まって、今のやり方を点検してみてください。