代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第237回 「勝手にやる気が出るチーム」はこうしてつくる。疲弊しないマネジメントの鍵

 

「やる気を出させるな。やるべきことをやらせろ」の落とし穴

「木村先生、部下に“やる気なんか気にするな、やるべきことをやれ”と指導してきました。でも…現場はどんどん荒んで、結果は悪化するばかりです。何がいけなかったのでしょうか?」

ある中堅企業の部長さんからご相談をいただきました。

この問い、実はとても根深いのです。そして今も昔も、組織のあちこちで繰り返されているテーマです。

「モチベーションが全てだ!」という人もいれば、「いやいや、モチベーションなんて気にするな!」という人もいる。

極端な意見が飛び交うこの問題に、どんな視点が必要なのか?今回はその誤解を解き、本質を整理してみたいと思います。


「モチベーションは管理できない」への違和感

結論から申し上げると、モチベーションが高いに越したことはありません。

そして、完全に管理することは難しい。これは確かに事実です。

しかし、そもそも私たちが求めているのは、「完全な管理」ではなく、「高い状態をできる限り維持すること」ですよね?

つまり、「管理できない=無意味」ではないのです。

むしろ、「どうすれば高い状態をつくれるのか?」に意識を向けることが、マネジメントとしては本筋なのです。


モチベーションは「設計できる」

ここで視点を変えてみましょう。

たとえば、映画を思い出してみてください。

映画は、観客に笑わせたり、泣かせたり、ドキッとさせたりするように、感情を“設計”して作られています。

私たちはその設計どおりに感情を動かされ、涙したり、共感したりするのです。

実は、モチベーションも同じように「設計」できるのです。

完璧な再現性はないかもしれません。でも、一定の方法で、一定の効果を生み出すことは可能です。

私自身、クライアント企業でこの「モチベーション設計」を実践し、成果につながるケースを数多く見てきました。


モチベーションの本質とは?

そもそも、マネジメントの目的は「感情を整えること」ではなく、「行動を生み出すこと」です。

つまり、「行動につながるモチベーション」さえ引き出せれば、それで十分なのです。

そして、行動の結果が積み上がることで、自然と感情も変わってきます。

よく、「やる気が出ないから行動できない」という声を聞きますが、実は逆。

「行動するからやる気が出る」のです。


誰もが使える「切り替え力」

モチベーションの上下は避けられません。

むしろ、重要なのは「下がったときにどう立て直すか」です。

モチベーションが高い人とは、落ち込まない人ではなく、落ちたときにすぐに切り替えられる人のこと。

これは訓練で身につけられる力です。

実際、業績の高い企業では、メンバー個々の「モチベーションの切り替え力」を高める仕組みが導入されています。

一度落ちても、スッと立ち上がれる組織かどうか。それが、成長スピードの差を生みます。


部下のやる気が下がったとき、どうするか?

「モチベーションは個人の問題だろ」と片付けてしまうのは簡単です。

でも、放置するとどうなるか?

――退職リスクが高まります。

――チーム全体の生産性が低下します。

――リーダーが疲弊し、最後にはそのリーダー自身が燃え尽きます。

そんな現場を、私は何度も見てきました。

しかも問題なのは、こうしたリーダーが孤軍奮闘し、「素手でモンスターと戦う」ような状況に追い込まれてしまっていることです。

その結果、リーダーの心が折れてしまうのです。


モチベーション低下は“怪物”ではない

ここで朗報です。

実は、モチベーションが下がる原因はほぼすべて明らかになっています。

人類は何千年も前から、組織という場を持ち、どうすれば人が動くのかを研究してきたのです。

そして、実際の職場で起きるモチベーションの低下に対しても、効果的な打ち手はすでに揃っています。

それは、誰でも使えるような、シンプルなツールばかり。

にもかかわらず、それを導入せず、「なんとか頑張ってくれ」とリーダーに押しつけてしまう。

これが、現場疲弊の最大の原因なのです。


「やる気」を扱うのではなく、「やる気を生み出す仕組み」を扱う

マネジメントに必要なのは、モチベーションを直接コントロールすることではありません。

必要なのは、高いモチベーションが生まれやすい環境をつくり、維持することです。

たとえるなら、植物に毎日「元気出せ」と声をかけるのではなく、日当たりや水やり、土壌を整えること。

そうすれば、自然と伸びていきます。


まとめ:モチベーションは“放置”ではなく“設計”せよ

「モチベーションは管理できない」という言葉を真に受けて、放置していませんか?

確かに、完全な管理は難しい。

でも、「モチベーションが高まる状態」は、十分に設計できます。

マネジメントの役割は、社員の内面を変えることではありません。

行動を引き出す仕掛けをつくること

そして、その結果として「やる気」が後からついてくるのです。

御社では、どうでしょうか?

モチベーションが自然に生まれる仕掛けは設計されていますか?