代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第238回 リーダーとして成長する人とプレーヤーから脱皮できない人の違い

ある営業組織のリーダーのマネジメント支援をしていた時のことです。

ある営業組織のリーダーのマネジメント支援をしていた時のことです。

業界歴20年、リーダー歴15年。

その業界の営業といえば、ギラギラした感が多い印象の業界。
その中にあって、珍しく落ち着いた雰囲気を持つ40代中盤のHさん。
最初にお会いした日に、こう自己紹介をされました。

「もうリーダーとして15年以上やってきましたが、最初の10年は失敗ばかりでした。」

役員に最も近いポジションにいる幹部社員として、自らも数字を背負いながら、若手の育成にも情熱を注ぐHさん。

そんな誠実な姿勢とは裏腹に、当時、彼のチームの売上は停滞していました。

私が伴走することになり、3ヶ月目あたりからHさんの言動は目に見えて変わり始めました。そして半年後、組織は“常勝集団”へと変貌を遂げます。

その鍵となったのが、すべてのリーダーに共通する「プレーヤーからの脱却」に欠かせない、ある重要なステップでした。


成長の起点は「自分の未来像」を描けるかどうか

Hさんの変化は、彼が「自分が5年後、10年後にどんなリーダーになっていたいか」を明確にした瞬間から始まりました。

これまで“今の延長線”で生きていた彼が、「未来から今を選ぶ」という視点を持ったことで、日々の行動の優先順位が大きく変わったのです。

多くのリーダーにとって、この「未来像の明確化」はシンプルながら強力な起爆剤。

未来から逆算して考えることで、行動の意味が明確になり、迷いなく進めるようになります。


目標思考は「訓練できる技術」であり、リーダーの必須スキル

「私は感覚派なので…」

Hさんも、最初はそうおっしゃっていました。

けれど、リーダーである以上、目標をもとに意思決定することは“好み”ではなく“責任”です。組織を率いるとなった以上、選択の余地がありません。

目標思考とは、曖昧な行動を防ぎ、チーム全体に軸を持たせる技術です。

そしてこれは、訓練すれば誰でも身につけられます。

Hさんの場合は、「予算達成の定義」を言語化し、チームと共有するところから始めました。

小さな第一歩が、リーダーとしての飛躍につながったのです。


プレーヤーから抜け出せないリーダーの共通点

当時のHさんも、数字を背負うプレーヤーとして一線に立ち続けていました。

「現場を知ることが大事」と、営業にも足繁く出向いていたのです。

それ自体は悪いことではありません。ただ、それが“やった気になってしまう”罠にもなります。

プレーヤーとしての役割と、リーダーとして組織を動かす役割はまったく別物です。

両方を同時に全うするのは極めて難しい。だからこそ、「将来自分はどちらを選ぶのか?」を明確にすることが必要です。


「自分ができる」ではチームは育たない

Hさんは非常に真面目で、努力家。

自分に課されたことは、全力でやりきるタイプです。当然、誰もが納得する結果を出し続けました。そして、リーダーに抜擢されたのです。

その経験から、部下にも同じようなやり方を求めてしまっていました。

ところが、自分事であれば「やればできる」も、部下にとってはそう簡単ではありません。

部下が成果に向けて努力を重ねられるようにするには、“自分で考えて動く環境設定”と“動く先にある未来設計”が必要です。

これこそがマネジメントであり、プレーヤーとの大きな違いです。言葉で説明すると、何やらとても難解に思えるかもしれませんが、たった1枚のシートに決まった手法でポイントを記載するだけです。

Hさんはここに気づいてから、チームの動きがガラッと変わっていきました。


成果が出るリーダーは「視野」が広い

停滞していた頃のHさんは、チームの数字だけを見ていました。

しかし、リーダーが見るべきは目の前の売上だけではありません。

「部下の未来」「チームの文化」「明確な成果とその道のり」「他部門や経営視点との整合性」など、全体像を捉えることが不可欠です。

伴走の中で、Hさんは社外の事例や他部署の視点を積極的に取り入れるようになり、「自分の部署」から「会社全体」へと意識が拡大していきました。この話は一度は誰もが聞いたり読んだりしたことばかりですが、実践となると全く進まない人もでてきます。
Hさんも、最初はまったくこの点が抜けていましたが、定型のステップを経てできるようになりました。

結果、チーム内の連携がスムーズになり、個人では達成できなかった成果が、組織単位で実現されるようになっていったのです。


リーダーの変化が、組織全体を動かす

Hさんが自らのあり方を見つめ直し、行動を変えたとき、部下たちにも変化が生まれ始めました。

これまで指示待ちだったメンバーが自ら動き、若手が数字を意識するようになり、チームにエネルギーが満ちていったのです。
指示状態の人の生産性は著しく低いのが常です。”自ら考える”状態に変わった時、生産性は1.5倍、1.8倍と急激に増えていきます。

成果の出る組織とは、優秀なメンバーが揃っているからではなく、リーダーの変化によって土台が整い、可能性が爆発した結果。

まさに、リーダーの進化こそが組織変革の最大のレバレッジである――そう実感させられる事例でした。


まとめ:未来を描けるリーダーだけが、組織を導ける

プレーヤーとして優秀な人ほど、リーダーとしてのステップでつまずきます。

しかし、リーダーは「やる人」ではなく「動かす人」です。

未来を描き、目標を言語化し、チームの行動を設計する。これが、本来のリーダーの仕事です。

もしあなたが「自分がやった方が早い」と感じているなら、危険信号かもしれません。

Hさんのように、未来から逆算することで、組織の可能性は一気に開けていきます。

あなたの組織のリーダーは、”5年後、どんなリーダーになっていたいか?”が明確ですか?