代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第252回 優秀なリーダーがいなくても、社員が育つ会社の秘密

「社員に成長してもらいたい」は、呪いの言葉です。

ご支援する企業の経営者の方々に、共通する言葉があります。

それは、「社員に成長してもらいたい」という言葉。

中には、「今は、ただただ、それしか考えてない。」という方もいらっしゃいます。

「社員の成長しか、組織の成長につながらない。」

これを骨の髄まで感じていらっしゃるからこその言葉です。お客様から選ばれ続けるために、これほど本質的なことは、他にないと思います。

ただ、その言葉が強ければ強いほど、ある落とし穴にはまりやすくなる、とも言えるのです。


では、「社員を成長させる」とは、具体的に何をすることなのでしょうか。

研修を増やすこと? 目標管理を徹底すること? 評価制度を整えること?

どれも間違いではありません。ただ、どれも本質ではないのです。

社員を成長させるとは、日々社員が進化できる「環境」を、会社が提供することです。

人は、環境に合わせて自分を変えていきます。意志の強さに関係なく、環境がその人の行動を決定します。逆に言えば、成長環境さえ整えば、社員は「勝手に」成長していく、とも言えるのです。


「環境」という言葉は、つかみどころがないように聞こえるかもしれません。

でも、実態は、意外なほどシンプルです。

社員の成長環境とは、直属の上司との関係のことです。

社員が一日の中でもっとも多く接するのは誰か。会社でも、経営者でもなく、直属の上司です。その上司との関係が、社員の行動を、思考を、成長を、毎日決定づけています。

直属の上司との関係が肯定的でなければ、どれほど制度や仕組みを整えても、成長環境にはなりません。


では、成長環境を実現するために、直属の上司は何をすればよいのでしょうか。

ここに、大きな誤解があります。

「部下には、やさしく接しなければならない。」 「部下を怒ってはいけない。」

この思い込みが、善意のまま、部下の成長を静かに止めています。

現場では、何が起きているか。

部下が思うように動かない。指示の出し方を変えてみる。伝え方を工夫してみる。それでもうまくいかない。そのうち、何が正解なのかすら、わからなくなっていく。

部下の顔色が気になって、強く言えない。違和感を覚えても、受け流してしまう。「良かれ」と思って選んだその対応が、状況を静かに悪化させていく。

これは、リーダーの能力の問題ではありません。

悩みの渦中にある人は、問題の外側から見ることができません。リーダーたちは、目的と手段が混在した状態に陥っているのです。


目的に立ち返ると、霧が晴れてきます。

部下への接し方、指示の出し方、注意の仕方。これらはすべて「手段」です。

目的はひとつ。部下を、持続的に成長させること。

目的を起点に考えると、手段は柔軟になります。やさしくすることも、厳しくすることも、どちらも必要です。「やさしくしなければ」という縛りから解放されたとき、リーダーの視野はぐっと広がります。

ただ、接し方を磨くことより、もっと大切なことがあります。

部下が成長する「仕組み」を、つくること。

個々のリーダーが試行錯誤を繰り返しても、正解にたどり着ける保証はありません。事実、多くのリーダーが、何年もの間、深い悩みの中に留まり続けています。


昨年末から支援を開始したある企業では、準備段階を経て、1月からマネジメント技術の実践が始まりました。

8名のリーダーのうち、7名が実践初日に部下の変化を実感しています。

接し方を変えたからではありません。部下が成長を実感できる「仕組み」が整ったからです。


最後に、もっとも大切なことをお伝えしたいと思います。

「部下を成長させる」とは、部下自身が成長を実感して、初めて成立するものです。

上司が「成長させた」と感じても、部下が実感していなければ、それは成長環境とは言えません。あるリーダーのもとで、部下が持続的な成長を実感し続けること。それこそが、本物の成長環境です。

「社員に成長してもらいたい」という言葉は、環境なき状態では呪いになります。しかし、仕組みが整った瞬間、それは会社全体を動かす力に変わります。

その環境を会社全体に広げていくこと。それが、経営者にしかできない仕事だと、私は感がています。