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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第64回 成長加速する組織への転換は、社長の勇気にかかっている

「部長のYが変わらないと会社の未来がない」年率2桁の成長を遂げている中でも幹部のYさんの名前を挙げてそう断じるS社長はまっすぐ前を見据えておっしゃいました。

前年度比2桁の成長を維持するのは、どんな業界、どんな組織においても容易なことではありません。いくら追い風が吹いていても、市場の成長に合わせて組織を拡大させなければ不可能だからです。

組織を拡大させれば直面する課題は、どの組織でも同じで、一人当たりの労働生産性が下がるというジレンマに遭遇します。放置すれば、クレームが増え、コストが増え、利益がカツカツならまだしも、マイナスに転じるというわけです。

そんな中でも、S社長の企業は、即戦力の中途社員と新卒採用を両方進め、業界平均以上の成長を維持してきました

ところが、全社員における新卒の割合が増えてくると、如何せん多勢に無勢。一人当たりの売上額が見劣りするのが、新卒1年目から新卒3年目まで。ベテラン社員がこれ以上支えるのは限界。新卒社員の成長スピード、その上の中堅の生産性改善が待ったなし。というところで、弊社に依頼を頂いたというわけでした。


S社長のいう「部長のY」というのは文字通り「部長のY」さんだけを指すのではありませんでした。役員直下の日々の現場を動かす部長級の社員が、しっかりと社員育成が出来る状態にならなければ今後の成長は単なる組織膨張になることを象徴的に言い表した言葉でした。

常務、取締役、部長職の方々は当初は戸惑っていました。それまでは、売上げ至上主義を徹底してきただけに、S社長の本心を図りかねていたからです。

コンサルティングが進むにつれ、社長の揺るぎない姿勢を繰り返し見せつけられるにつけ
社長の本気度に呼応するようになっていきました。やがて、参加者は自分の直属のスタッフの成長支援に真剣に取り組むようになりました。

OJTとはまるで違うやり方。戸惑いながらも、徐々に慣れるに従って、大きな変化を目の当たりにします。それまでは、「部下の問題」で、「繰り返された問題」が、次々に解消していくのです。

現場を抱える部長達が言った言葉があります。それは「部下の問題ではなかった」です。これはこの組織に限らず、コンサルティングを受けると異口同音に聞く感想です。

念のため申しあげますと、これはあくまで過程のことで、ゴールではありませんが、成長支援が日常的にルーティン化していることの現れであることは確かです。


一方、成長主義になかなか舵を切れない会社もあります。

トップセールスマン、一部のハイパフォーマー社員に依存する会社は成果至上主義からなかなか脱することができません。売上げを完全に一部の社員に依存しているので、後輩、部下の世話をする分、売上げが下がるというわけです。中長期的にみれば、リスクだらけなわけですが、このリスクは、社長には見えてもそれ以外の社員には見えません。

「トップセールスマンの下に、新人をつけていれば、やがてそこそこできるようになるだろう」という淡い期待で実際に人を配置すると、新人は次々に辞めていきますし、よしんば辞めなくても、何年たっても、成果の上がらない状態が続いてしまいます。


成果至上主義から、成長主義への切り替えは、経営者にとって葛藤が伴います。その理由は「やったことがないから」というのは、少々短絡的です。「成長主義に切り替える!」と口でいうのはたやすいのですが、経営者自身の考え方、やり方の再点検を伴うために、人によっては痛い選択だからです。

S社長の事例に良く現れていますが、この切り替えは、社長のリーダーシップなしには起こりようがありません。成長主義を実践する勇気が社長にあるかいなか、継続的な売上げ維持、拡大が見えてきたところで、社長が決断を下さなければならないことです。

短期的には成果至上主義は理にかなっていますが、成長主義に切り替えない限り、中長期の成果は担保されない。この事実を見据えた社長の勇気が必要です。


さて、御社は如何でしょうか?

目の前の成果より明日の成長を優先するという覚悟は定まっていますか?
それとも、目の前の成果にかまけて、成果至上主義を続けていますか?