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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第127回 それは幹部社員と呼べません!

関東地方でサービス業の会社に所属する、新任課長になった31才のYさん。社長から将来を期待されている逸材。それまでもYさんには、後輩はいましたが、「指導する」「育成する」は仕事ではありませんでした。それが役職者になってからは部下育成は、大切な仕事のひとつになりました。

「営業としての成果も社内で一目置かれるYさんなら、きっと部下をもってもうまいことやってくれるに違いない」そう社長は考え、周囲の心配をよそに、社長の一声で飛び級昇進となりました。

そのYさん、1年半後に、社長に「課長を辞めたい」という相談をすることになりました。Yさんの部下の2年目と3年目の部下が相次いで退職希望を口にするようになったからです。Yさん曰く、「このまま部下をみる自信がない」と。

退職希望の2人は社長の慰留により、別の部署に配置換えで事なきを得ました。社長はYさんに、単に相性が悪かっただけだと、もう一度チャレンジするようにとアドバイスしました。

ところが、Yさんの営業2課に残った3名のスタッフの顔が晴れることはなく、業績も不調のまま、社長も困り果てて、弊社にご相談にみえたのです。


早速Yさんがどのようなマネジメントをしているのか調査すると、やはり、「これじゃ、成果はでないよなぁ」というやり方になっていました。

実はYさん、コーチングを学んでいました。「部下に対して、コーチングを使えばうまくいく!」というアドバイスを自分の尊敬する大学の先輩からうけたのがきっかけだったそうです。

自分の尊敬する先輩からのアドバイスを信じて、時間とお金をかけてコーチングを学び、会社でも実践したのに、先輩から聞いていた状況とは似てもにつかぬ状況になり、どうしたものかと頭を抱えていました。

少し前に流行したコーチングは、「相手と対等の立場にあり、相手に答えがある」という前提に基づいています。しかし上司と部下は対等ではないので、組織にはあいません。前提がズレてるので、上手くいくわけありません。

例えば、セブンイレブンのセブンペイは失敗しました。セキュリティーが甘すぎた結果のことでした。結果論ではありますが、システムにいたずらする人はいない、という前提に立てっていたともいえます。その前提に立てば、確かにセキュリティーを強化する必要はなくなります。

ファミペイ、ペイペイその他は、システムはいたずらされるものという前提に立っているので、そのための二重チェックが必要、違法アクセス阻止の対策を十分にしていたのです。

前提が違えば、やり方も、結果も違います。なので、マネジメント技術として、前提が違うコーチングはうまく行かないのは必然といえます。

誤解のないように言っておきますが、私はコーチングを否定しているのではありません。私は今も、コーチを雇っています。コーチングのおかげですごく成果を出しています。コーチング技術がダメとは微塵も思っていません。寧ろとても有効なものだと思っています。ようは使い方です。お腹が痛い時は、眼科に行かずに、内科に行きます。眼科がダメなのではなく、単にお腹には、眼科ではなく、内科が合っているのです。

外部の人からコーチングを受けるときは、対等な立場でなければうまくいきません。上司と部下のように、対等ではないという前提では、うまく機能しないのです。


顧客は企業に価値の提供を求めています。顧客が求めるのは、社員の努力した量ではなく、結果だけです。顧客が求めるのは、価値の量だけです。こうした顧客の要求に応えるために、企業が提供する価値の最大化が常に求められるわけです。

企業の価値は企業内で作られるもの。一人一人社員がつくるものです。一人一人の社員が価値を作る行動に向かってなければ、価値の最大化は長続きしません。

当然日々のマネジメントの中に、社員一人一人が価値を上げることが、組み込まれていないといけません。

また、価値は、意志だけでは生まれず、行動によってのみ生まれます。一人一人が、価値を生み出す行動をしなければ、企業価値の最大化という言葉は、戯言です。むなしく響く雑音です。


Yさんは、一人一人が価値を作ることが大切だと分かっていました。自分ではそれが出来ていました。でも、部下にそれをやらせきることができなかったのです。

Yさんがやったことは、部下の「意志の確認」に終始していました。部下が「やります!」「意識していきます!」「常に注意します!」という宣言をすると、「よし頑張って!」といって会話が終わる。部下と何度会話しても、同じことの繰り返し。

なんとなく部下を思いやっているようでもあり、部下もまたなんとなく、頑張っている気になりで、会話の時の雰囲気は悪くないのです。でも、行動が伴ってなかったのです。

価値を作り出す行動。これは、社員一人一人が最初の一歩を踏み出すところから始まります。ところが大多数の社員は、そのたった一歩を生み出せず、現状維持が精一杯というわけです。

一人一人が一歩踏み出すことで始めて企業総体として、新たな価値の提供の一歩を踏み出すことができる。もちろん、実際は、人によっては100歩進み、人によっては、30歩下がる、と能力や経験値によってバラバラですが、いずれにしても、企業の価値は、社員一人一人が生み出す価値の積算になります。

大多数の社員は一歩が出ない。足が動いていても、その場で足踏みするだけで、前に一歩が出ない。この大多数の社員が一歩踏み出すことを実現するのが、マネジメントの技術です。


Yさんの場合は、マネジメント技術を学び始めて、3ヶ月目で、一人の部下が成約を勝ち取るということを経験しました。一人だけなら、偶然です。しかし、ここから怒濤の快進撃が続きます。もちろん、今も続いています。

1年半前、4名の部下の半分の部下が退職したいとう状況から、僅か半年間で、社内トップの営業課になったのです。

これは特別なことではありません。マネジメントは技術ですから、誰もが実践すれば必ず成果につながるのです。


さて、御社では如何でしょうか?

社員の成長を着実に後押しする仕組みがあり、社員が一人、また一人と変化することが当たり前に起きていますか?

それとも、社員の成長を願いながらも、全く方法論がわからず、停滞した状態が続いていますか?仮に、幹部社員がその状態だとしたら、幹部社員とはとても呼べません。

もし、それがあと1年、3年続くとしたら、どんな将来がまっていますか?