代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第228回 「やるべきことはわかっている。でもやれていない。」現象の正体

役割を明確にしても業績が上がらない理由とは?

「木村先生、前期が始まってすぐ幹部と役割についてじっくり話し合いを行いました。役割の理解は十分なはずでしたが、業績の回復が見えてきません。何が足りないのでしょうか?」

創業18年、売上30億を超える企業の社長からいただいたご相談です。
実はこの悩み、非常に多くの経営者が直面しています。「役割の明確化は終わったはずなのに、成果が伴わない」。その原因はどこにあるのか。今回は、その構造と打ち手について深掘りしていきます。

「役割は理解している」は過程。「役割を実践して結果を得る」がゴール。

幹部と丁寧に話し合い、「自分もその通りに考えていた」との言葉を得た時、経営者は「これで大丈夫」と安堵します。方向性の共有はできているように思えます。
しかし、それは途中の段階に過ぎません。理解しているつもりでも、現場での行動に落とし込まれていなければ、成果は出ません。言葉と行動の間には、想像以上に深い谷があるのです。

役割通りに動いているのに赤字? それは理論破綻です。

「幹部は自分の役割通りに活動しているはずです」と語る経営者の目の前で、本体事業が赤字に沈んでいる——。これは冷静に考えると、矛盾そのものです。
仮に幹部が本当に役割通りに動いていたとすれば、最低限の黒字は確保できるはず。赤字という結果は、行動と結果の間にズレがあることを物語っています。役割が絵に描いた餅になっていないか、見直しが必要です。

「知っているけど、やっていない」は知らないと同じ

役割を明確にしたことで「何をすべきかはわかっている」と言う幹部は多いです。しかし、わかっていることと、日々それを実行できていることには、雲泥の差があります。
たとえるなら、夏休みの宿題を覚えてはいるが、結局やらなかった子どもと同じ。行動に移されていなければ、それは「知らない」のと結果的に何も変わりません。

売上がなければ、すべては始まらない

どれだけ正しい戦略があり、どれだけ明確な役割分担をしていたとしても、「売上が立っていない」のであれば、その取り組みは失敗です。
経営の世界では、「売上なくしてすべてなし」が原則。組織は成果を出してこそ、初めて正当化されるのです。役割の明確化も、行動も、最終的には数字で語られます。

ステージによって疑うべきものは違う

もちろん、0→1の立ち上げ期であれば、すぐに売上が出ないこともあるでしょう。しかし、すでに事業として実績があり、数字目標が設定されているステージであれば、目標未達の原因は、まず「行動量」を疑うべきです。
「営業には行っている」と言いながら、実際にはアポイント数が足りない。提案はしているが、受注に結びついていない。そのギャップは、数字にすべて現れています。

「やるべきことはわかっている。でもやれていない。」現象の正体

「やるべきことはわかっている。でもやれていない。」——この言葉が出る組織では、マネジメントが形骸化している可能性が高いです。
社員や幹部が動かないのは、意識が低いからではなく、行動を促す仕組みが設計されていないから。マネジメントとは、「やる仕組み」であって、「やるべきことを確認する」だけでは不十分なのです。

人は忘れる生き物。だから仕組みが必要

人間は環境に流されます。上司から「今すぐやって」と言われても、数分後には電話が鳴り、別の対応に追われ、最初の仕事の存在すら忘れてしまう——それが人間です。
「わかりました!」の返事だけでは、実行されたとは限らない。だからこそ、行動の特定と実行の確認ができる「やる仕組み」が不可欠です。

一度言えば動くのは少数派。大半はやったつもり

「一度伝えれば大丈夫」と思ってしまうのは、マネジメントの甘さであり、指示の曖昧さの文化の始まりでもあります。指示の曖昧さは、組織の成長を破壊し、組織を停滞させます。
優秀な一部の社員は、一度で動けるかもしれません。しかし、多くの社員は「わかったつもり」「やったつもり」で終わっています。
その結果が売上未達、未完了業務、未提出資料となって現れるのです。

まとめ:「役割を明確にする」だけでは不十分

多くの経営者が「役割を明確にしたのに、成果が出ない」という壁にぶつかります。
その原因は、役割の理解行動をイコールで結んでしまっていることにあります。
本当に必要なのは、「行動が起こる仕組み」を組織に組み込むこと。
行動を促し、継続させ、成果に結びつける——それがマネジメントの本質です。