代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第113回 「私にはもう無理です!」と部長から言われたら考えるべきこと

ある地域でNO1企業の取締役のSさんと話していたら、直属の部下に関する相談がありました。その部下というのは40代の部長のKさん。数ヶ月前に、部長職を辞めたいと言い出したそうです。

そのKさんは部長として、新しい部門を率いていました。会社としては、比較的経験値が低い
事業領域ながらも、テスト的に進めてみたそうです。すると、他部門でやってきた経験、ノウハウがつかえそうだということがわかり、更に人を投入して拡大していこうということになりました。

組織が急拡大する中、中途社員が大量入社してきました。一通り研修が終わり、現場に配属されました。技術者として実績はある、だからまるで手が動かないわけではない。

手は動くし、そこそこ進む。ところが、自社のやり方ではない。そして、「仕事が完了した」
本人は言うのですが、自社の基準に照らしてチェックすると、「完了とは言い難い」。

K部長は、当人たちに「研修で習ったでしょう?」「研修では違うやり方でやるべきと教わりましたよね」と確認しても、ほとんどは、「そうでしたっけ?」と悪気はない。


Sさんは、切羽詰まった様子でKさんから相談を受けた時、事の次第を聞いたところ、こんな返事が返ってきたそうです。

「何度注意をしても、改善する時があっても、ほんの一時のことでまた同じことをする。また注意しても、同じことの繰り返しで、自分にはこれ以上無理です」と。

Sさんは「もう少し時間をかけてやろうじゃないか」「そんなに急ぐことはない」と伝えたものの、Kさんからは「増加する一方のクレーム対応にも疲れ果ててしまった」という返事だったそうです。

そこで、一端その件は、Sさんが預かることにしました。Sさん自身も、事実確認をしなければ対応策が立てられないと思い、中途入社組の中でも、クレームが頻発する4名と個別の面談をしました。

「何度も注意を受けているにも関わらず、改善しない理由は何か?」ということを聞いたところ、意外な返事が返ってきたというのでした。

4名から異口同音に帰ってきた言葉は、「何度も注意された記憶はない。そんなに迷惑をかけていたとは申し訳なかった」という返事で、拍子抜けしてしまったというのです。

実際、4人中3人はその後、行動も変わり、クレーム件数も減ってきたそうです。


4人との面談が終わった時に、SさんはKさんとも再度面談をしました。「何度も注意を受けていたとは思っていなかった」と当人たちが言っていたことをフィードバックしたそうです。すると普段は穏やかなKさんが、珍しく強い口調で「そんなはずはない。あれほど注意をしたのに」言い返してきたそうで、その時の対応に困ってしまったんだと、当時を振り返りつつ、ため息。

その後の様子を聞くと、Kさんは、その4名を避けるようになり、その他のメンバーKさんの前では4名の名前を出さないようにしたりと変な気を遣うようになったそうです。ほどなく部門全体の雰囲気も悪くなります。

問題となった4名以外の複数のメンバーから、SさんのところにKさんの態度に対する不平が上がるようになり、会社はKさんを別部門へ異動させることを決定しました。

Sさんも、他の役員も、Kさんには異動を機に、また前向きに仕事に取り組んでもらいたいと期待しているようでした。しかし同時に、また同じようなことが起こりえることを心配していました。そこで、Sさんが相談してきたのでした。


更にSさんに詳しく話しを聞いて見ると、そのKさんが対応に苦慮した4名には、実は共通点がありました。

それは、4名とも、年齢も上、そして業界歴も長いことでした。その後にSさんにも調べてもらったのですが、それ以外のメンバーは業界歴こそ、Kさんよりも長い人がいたものの、年齢はみなKさんより若かったのです。

実際にKさんと話をしたワケではないので、全ての原因が特定できたわけではありませんでしたが、私がSさんに伝えたことは、経験や年齢が上の部下を持つ上司が陥りがちな、マネジメントが機能不全に陥る原因と対策です。

Kさんのように、年上の部下、業界歴が長い部下をもった上司が、その年上の部下に、上手に注意ができず、年上の部下のパフォーマンスを変えられないということは、多くの組織で問題を引き起こしています。

今回Sさんが経験したように、他の人が面談すると、嘘のように相手の行動が変わるということもまた起こるのです。

何が原因で同じような問題が起こっていて、それをどのようなステップで改善できるのかは、既に決まった処方箋があります。これは単に、正しいマネジメントのやり方を知らないが故に起こることなのです。

私がコンサルティングでご支援摺る会社でも、数多く遭遇する問題のひとつでもあります。実に多くの組織に起こっていますし、Kさんのように、やり方を知らぬが故に、対処法を誤り、Kさんのように、距離をとってみたり、逆にマイクロマネジメントに走り、修復不能な反発を招いたりします。

やっている本人にしてみれば、あの手この手で試行錯誤するわけですが、その状況から抜け出せずにもがき続け、疲れ果てていくのです。

また、正しいやり方があるともしらずに、自らの無能さを呪い、関係する部下を呪い、それまでの実績を不意にする人もいます。
多くの組織で似たようなことが起こり、上司も部下も底なしの渦の中に引き込まれていきます。これはもう悲劇です。


一方、正しいマネジメント手法を身につけると、まるで違う結果を手にすることができます。

マネジメント未経験の28才の店長が、自分の親ほどの年齢であり、社内でも有名な頑固者を部下に持ちながらも、過去最高の売上げを実現したり、32才の新リーダーが、40代後半のかつての上司を動かし、半年ぶりに売上げ予算を達成させてり、35才の課長が、業界歴25年のベテランを部下に持ち、低迷していた状態から、社内トップの営業成果に引き上げたり、という具合です。

業界も扱う商品も、サービスも違いますが、これはいつも同じやり方をすることで、必ず効果が上がるやり方があります。このやり方を実践する人はマネジメントの経験もバラバラ、年齢もバラバラです。それでも同じ成果がでる。それは、これが技術だから起こりえることです。

技術なので、そのやり方を知り、繰り返して練習すれば、誰しもが出来るようになるのです。


さて、御社のリーダーたちは組織を動かせていますでしょうか?それとも、自分も自滅し、組織も壊しているでしょうか?

もし、動かせないリーダーがいたら、経営幹部は適切な方法を示しているでしょうか?