代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第92回 大成功する事業承継 成功の鍵

弊社の支援先には、事業承継に様々な角度で関わっている企業が何社もあります。中には、この業界にあって、知らない人はいないというほど、高い認知度を誇る会社も含まれます。

その会社は、M社です。何千社も支援をしてきたこのM社のY社長とはお会いする時は、実際の支援現場のお話を生々しい事例と共に伺うことになります。こうした話を聞くにつけ、経営者としての引き際をどのようにするのかという問題、人間として、どうあるべきかというあり方が経営自身にも突きつけられるのだなということがわかります。そしてまた、それまで組織とどのように向き合ってきたかということも、否が応でも浮き彫りにされるのが事業承継というタイミングです。

Y社長に限らず、こうした事業承継に関連する企業の経営者とお話をすると、共通して出てくる言葉が2つあります。ひとつは、「どんなにやり手の経営者であっても、事業承継って何度も経験するものではないので、誰もが素人。」ということ。

そしてもう一つは、「事業承継は、あらゆる組織にとって、伸るか反るかの重大テーマなのに、我流で対処すると飛んでもないことになる。」ということ。

最近では、就活ならぬ、終活なんて言葉が出てきて、個人レベルの人生の閉じ方がクローズアップされるようになりましたが、聞けば「大切なこと」とは口を揃えていうものの、全員がそこに積極的に取り組むわけではないと言います。想像するに、あまりそのテーマ、あまり楽しいイメージではないからでしょう。

多くの経営者が、事業承継というものに、積極的に取り組まないのも、同じ理由です。とはいえ、事業承継という言葉が、日経新聞に載らない日はありません。組織の成長支援に関わるものとしては、一人でも多くの経営者が事業承継への取り組みを少しでも早く始めることを願ってやみません。

というのも、関わった企業の事業承継を見てきて、準備のない事業承継は悲惨なことになるのだなぁということを前述の専門家同様に見聞きしてきたからです。


さて、事業承継というと、どんなことが頭に浮かびますか?

株、税金、資産防衛等々ではないでしょうか?実際、日経新聞に出ている事業承継の内容の9割は、株、税金、資産防衛の内容です。経営者の代替わりというほんのわずかな時間を切り取って、お金がらみのことがクローズアップされがちです。

ところが、事業承継を組織の側からの視点でみると、組織にとっては、ある一時期のことではないですし、ゴールでもありません。何が事業承継の一番重要事なのかは、経営者その人その人に関心の違いはあるものでしょう。

しかし、組織にとって何が一番重要かは、決まっています。それは、事業承継後も業績が拡大し続けることです。なんとか家具が事業承継を機に坂を転がるように業績悪化の一歩をたどっていますが、そんなことが起こっては一大事です。

この観点において、事業承継を考えると、事業承継のために、何を準備するべきかは決まってきます。創業者が営む組織は、よくも悪くも創業者中心の組織です。創業からある時点までは、創業者の強力なリーダーシップがなければ成り立ちません。組織の拡大と共に、その形は変化していきますが、組織の中心が経営者であることは間違いないし、組織を乗り物に例えれば、メインエンジンはやはり経営者自身です。


創業経営者から、2代目への事業承継を組織の側の視点で考えてみます。もし、2代目の経営者が、創業経営者のクローン人間なら、組織には何の影響もありません。今までと何も変わらないでしょうから。

残念ながら、そのようなことは現実的にはあり得ないことです。創業経営者ほどのパワーをもった二代目が現れることは、万に一つ。事業承継は、組織の生死がかかる重大事なのです。

多くの創業経営者は、謙遜だけではなく、半分本気で、「自分が出来たんだから、他の人にもできる」「自分が出来たのだから、自分の身内にだってできる」とある時点まで考えています。これがくせ者。

この発想が、事業承継の準備を遅らせます。よしば、株、税金、資産防衛ということへの準備ができたとしても、組織の強化にまで手がまわりません。


具体的に、「組織の強化とは何をすることなのか?」これはもう答えは決まっています。それは、「自ら考える社員の創造です。」

創業経営者の行動力、決断力と二代目経営者のそれらとのギャップを埋めることができなければ、事業承継後に組織は衰退して、下手をすれば倒産です。

前述したように、2代目経営者個人にそれを求めるのは現実的ではありません。ギャップを埋める方法は一つで、組織の強化で埋めるほかありません。


好む好まざるに限らず、経営は経営者に集約されるのではなく、分散化する他ありません。そして、その分散化は、考えられる個人の創造でしか補うことができないのです。

例えば、創業経営者の行動力、決断力が200だとしましょう。2代目経営者のそれが100で、残りを40の力を3人で埋めていくような印象です。

これができると、事業承継後も、組織は発展していくことができます。事業承継後の組織が、成長を継続できるか否かは、「考える個人を増やすことができる否かにかかっている」これが、事業承継成功企業、失敗企業をみてきた私の結論です。

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「考える個人の創造なんて、できるの?」そんな質問が聞こえてきそうなのでお答えしましょう。答えはもちろん、YES。正しい方法を行えば、3ヶ月で、指示待ちだった個人は、考える個人に変貌を遂げていきます。

さて、御社の場合はどうでしょうか?

考える個人は着実に増えていいますか?
それとも、指示待ちの個人が増えていますか?