代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第68回 素直な社員は○%

「M&Aを加速させ事業領域を拡大させたい」「(そのための)事業を任せられる幹部育成を早急に進めたい」いずれ日本一を狙うであろう企業グループを率いるH社長から命を受けて、選抜された幹部候補のコンサルティングを担当していた時のこと。

若くして、H社長の目にとまる圧倒的な成果を上げて、新任役員になったSさんが言いました。

「木村先生、やはり素直じゃないヤツは、何やらせてもダメですよね。」
「彼は、もう34才だし、もう伸びないといます。」
「注意しても、言い訳ばかりで、改善まで時間がかかるんですよ」
と成果を出さない直属の部長の名前を挙げて、イライラした調子で言いました。

私は、間髪を入れず指摘させてもらいました。
「今のままならSさんには組織を作れません」と。


一度言ったら、言われた通り素直に実行し、成果を次々に上げていく人は、組織の中に3-5%程度います。しかし、この3-5%だけしか社員としてふさわしくないとすれば、経営は成り立ちません。

一方で、Sさんのように素直じゃない社員を目の敵にするリーダーが後を絶たないのも事実です。

Sさんのように自分自身が、その3-5%であった人というのは、自分のように立ち回れない社員のことが理解できません。そして、素直じゃない社員に対して日々イライラを募らせていくのです。

Sさんのようなリーダーは、組織の中から自分に似た社員を見つけ出し、周りに配置しようと画策します。事が上手く運び、配置することができると、当然成果がでますから、益々自分の考え方に固執していくのです。

しかし、如何せん「素直100%の社員」は絶対数が少ないので、組織の成長は必ず歯止めがかかります。短期的に成果を出すことにプライドを持っているSさんのようなリーダーには、成長の減速は受け入れがたい。すると冒頭で紹介した様に、更に成果を出さない「素直じゃない社員」に更に厳しく接するというわけです。


Sさんと話をしていて、これまた以前担当したある企業の幹部社員、Oさんのことを思い出していました。Oさんも、Sさん同様に、それはそれは社員に厳しい人でした。ある社員は、Sさんのことを台風のようだと評しました。Sさんは自分の意向に沿わない社員がいると、徹底的に追求し、なぎ倒していったからです。

Oさんのお眼鏡にかなう社員だけでは、成果が頭打ちとなり、対応を変えることを迫られていた頃に私はOさんと出会いました。Oさんに、マネジメント技術の向上の必要性を説き、「素直じゃない社員に成果を出させる技術」を半年間かけてマスターしてもらいました。その結果、すぐにOさんは台風という不名誉な称号を返上します。

次の半年間では、他の事業部で成果が上がらない社員を引き取り、そのメンバーと共に、全事業部トップの成績を収めるまでになりました。そして、それは今でも継続しています。

社長がOさんを評して曰く、「人材再生工場」です。


もちろん、全ての社員が、Oさんの手にかかれば再生するかといえば、違います。あらゆる組織に素直100%の社員が3-5%いるように、頑固100%の社員もまた10-15%いるからです。

20代から30代前半までなら、多少の頑固は修正可能ですが、40代、50代の年期の入った頑固社員は途方もない時間がかかります。組織の中で20年30年もの間、頑固を貫き通すには、そのための技術も高くなっています。40代、50代の頑固者の言い訳、カモフラージュ、のレベルの高さといったらありませんから。


話を元に戻します。

組織で成果を継続して上げるためには、組織の中の7-8割を占める「素直じゃない社員」と成果を上げることが絶対条件です。素直100%の社員は、会社にとって宝です。ですが、この人達は、放っておいても成果を出す人達。この人達を集めて成果がでるのは当たり前ですし、それをマネジメント技術の成果であるとは誰も見なしません。

素直な社員だけを追い求めるようですと、それは経営ではなく博打です。

私達リーダーが研鑽するべきは、「素直じゃない社員に成果を出させる技術」です。組織で永続的な成果を出すためには、この技術の獲得こそが必須条件です。


さて、現在の御社は如何でしょうか?
素直な社員の獲得だけにエネルギーを費やしていませんか?
それとも、「素直じゃない社員に成果を出させる技術」の獲得にエネルギーを使っていますか?