コラム「組織の成長加速法」-第254回 計画を「必ず実行する会社」と「しない会社」の決定的な違いとは?
先日、ある企業の技術部門管掌の取締役から、こんな切実なご相談を受けました。
「木村先生、聞いてくださいよ……」
お話を伺うと、その会社のナンバー2である営業部門を統括する専務が、期の計画達成を「必達」とするために、現場にかなり無理な要求(急な仕様変更やタイトな納期など)を強引に押し付けてきたというのです。しかも、社長もその専務のやり方を後押ししているとのこと。
工場側としては「計画を達成しなければならないのは痛いほど分かるが、このままでは現場が壊れてしまう」と板挟みになり、深く悩まれていました。
この企業の売上げ規模は80億円でした。80億の規模になっても、このような事案が日々発生しています。
会社として計画を達成することは至上命題。
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高い目標を掲げ、それに対して「絶対に実行する」という強い意志で進め、確実に計画を達成していく会社
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様々な理由や言い訳が並べられ、計画を実行しないこと、未達で終わることが「まあ、当たり前」になってしまっている会社
この「計画を実行する会社」と「実行しない会社」の間には、いったいどのような違いがあるのでしょうか。今回は、この両者の決定的な違いを紐解き、目標を確実に達成するための「規律」を、実際にどうやって会社の中に実装していくのか、その具体的なマネジメントの仕組みをお伝えします。
計画とは「予想」ではなく「現在の決定事項」
マネジメントの基本中の基本として、「計画」というものに対する認識を全社で一致させる必要があります。
そもそも計画とは何でしょうか。それは単なる将来の予想や希望的観測ではなく、「将来に対する現在の決定事項」です。将来の目標を達成するために、今現在、何をすべきかを規定するものが計画なのです。
目標が10倍であれば今日やるべき行動量も5-10倍になり、目標が半分でよければ今日の行動もそこまで必要ない、というように、計画を立てることでそこに向かう行動量や実行量が必然的に決まってきます。
計画が未達に終わる会社では、この「計画=必ず実行するもの」という大前提が崩れており、達成できなかった理由や言い訳が社内でたくさん並べられるという大きな問題を抱えています。
計画を達成する会社は、これを「予想」ではなく「実行するもの」として厳格にフェーズを進めています。非常に抽象的な言葉を使えば、そこには明確な「規律」があるのです。規律がある会社では、やるべきことをやらないという小さな妥協すら「ありえない」という基準が根付いており、とにかく決めたこと通りに物事が進んでいきます。
「それは、その会社の社員がめちゃくちゃ優秀だからできるのだろう」と思われるかもしれませんが、決してそうではありません。普通の会社では当たり前ではないことが、構造として当たり前に機能しているだけなのです。
なぜ人は「計画通り」に動けないのか?(構造を読み解く)
マネジメントの基本が「計画通りに実行すること」であると、頭で言葉として理解できない人はおそらくいません。しかし、実際にそれを実行できる人は驚くほど少ないのが現実です。
例えば、「目の前にあるコップを右から左へ動かす」という単純な作業であれば、できない人は誰もいません。しかし、それが「仕事」になった途端にできなくなってしまうのです。なぜなら、日常の業務の中には様々な「刺激」が飛び込んでくるからです。その刺激に対応しているうちに、本来やらなければならない計画が頭の中から離れてしまい、他のことにかまけて「今日やるべきこと」ができなくなってしまいます。
本来は最優先事項である計画を優先して行わなければならないのに、刺激によって優先順位がズレてしまう現象が起きるのです。これは特に、経験の少ない新人層において恒常的に起こり得る「構造」です。経験値の差によって判断がブレてしまうという構造は、どんなに本人が頑張ろうとも、すぐに変えることはできません。
さらに、冒頭の事例のような「社長と現場のズレ」もまた構造的な問題です。 社長は常に会社の1番先を見て話をしており、見ている量も、得ている情報も、圧倒的な経験値も持っています。そのため、決定者である社長の判断と、実行者である現場の判断がズレてしまい、現場から「社長がまた勝手に決めてきた」と反発が生まれるのは必然なのです。
経営者はこの「経験値や視点の違いからくる構造」を読み解き、それに対応するマネジメントを行わなければなりません。
会社に「規律」を実装する、たった一つのシンプルな方法
では、この経験値の差から生まれる「優先順位のブレ」を埋めるために、マネジメントはどう対応すべきでしょうか。
結論から言えば、「本人に判断を委ねてはならない」ということです。 人が素早く結果を出すためには、優先順位の判断を本人任せにしてはいけません。
「かわいい子には旅をさせよ」といったように、自立を促す環境で学ばせることも時には事実として重要です。しかし、実際の会社の業務において、全てを独立採算で本人に任せきりにすることは不可能です。
本人に判断を委ねず、優先順位を崩さないためにリーダーがやるべきこと。それは実にシンプルな方法で、「確認をする」ということです。
確認をすることで軌道修正が効き、「修正が効かなかったからできませんでした」という事態を防ぐことができます。この「確認をすること」こそが、組織における規律の発揮なのです。
これなら、成り立てのリーダーにもすぐにできます。
「規律」を維持してください!と話すと、目が泳ぎ出す方々が多いのですが、この確認の仕方を教えると、「それならできそうだ!」となります。まず、一歩前進です。
実際、リーダーの確認がなければ現場は緩んでしまい、計画は決して達成できません。 当たり前のように聞こえるかもしれませんが、これができている会社は業績が上がり、できていない会社は上がらないという明確な違いがここにあります。
生産性を高める「確認」は、未来への「時間の投資」
確認作業を通じて組織の生産性を高めるためには、どうすればよいのでしょうか。
部下が複数いると「1+1が2にならない」ことがよく起こります。こうした際に、生産性を劇的に高める方法は、「確認を増やすこと」に他なりません。
具体的には、「ただやっておいてね」と丸投げするのではなく、次の3つのタイミングで階段状に確認を行います。
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最初の計画(スタート地点)段階での確認(何をするか)
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途中の段階での確認
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最後どうなったかの確認
「何度も確認するのは面倒くさい」と最初は思うかもしれません。しかし、実際には3分、5分、10分といった短い時間で済むものです。途中で確認せずにズルズルと間違えたまま進んでしまう方が、よほど生産性を落とします。
この短い確認の時間は、リーダーが自分自身の時間を増やし、生産性の高いチームを創るための「時間の投資」です。何ヶ月も我慢する必要はなく、時間を投資すればすぐに何倍ものリターンとなって返ってきます。
「信号機」のフィードバックと「心の温度」を上げるマネジメント
では、確認をする際にどのようなコミュニケーションをとるべきか。 「何やってんだ!馬鹿野郎!」と恐怖で人を動かそうとしても、人はその恐怖にも慣れます。このやり方では、いつか終わりが来ます。重要なのは、確認を通じて「フィードバック」を行うことです。
フィードバックとは「信号機」のようなものです。 「今は青ですよ」「今は黄色ですよ」「赤ですよ」と状態を伝えてあげるのです。経験値の浅い社員は正解を求めているため、「今は青だからこのままでいいよ」と言われると安心して前に進むことができます。
遅れている時には「このままだと時間に間に合わないから修正しよう(黄色信号)」と伝えます。確認しながら、必要な修正と改善を練っていくことが、最もブレなく計画を達成する道です。
さらに応用編として、相手の「心の温度を上げる」マネジメントも不可欠です。 内発的な動機、「自分から頑張ろう」というエンジンを駆動させるためには、達成感を満たしてあげることが有効です。そうすれば「もっと頑張ろう」という意欲が湧いてきます。
経営者が率先して「規律」を実装せよ
いかがでしたでしょうか。 冒頭の工場部門の悲鳴や、社長と現場のすれ違い、そして計画が実行されないという問題は、決して現場の怠慢でも、社員の能力不足でもありません。「経験値の違いによる優先順位のブレ」という明確な構造から生じているのです。
この構造を乗り越え、計画を「絶対実行する会社」へと変革するための武器が「規律」であり、規律を組織に実装するための具体的なアクションが「確認」です。
現場に無理を強いるのではなく、経営者やマネジメント層自らが「確認」という時間の投資を行い、適切なフィードバックと承認によってメンバーの心の温度を上げていくこと。
「なるほど、問題は個人の能力ではなく、確認の欠如という構造にあったのか」と気づかれた経営者の皆様。ぜひ明日から、現場のメンバーに対する「3分の確認」から始めてみてください。その小さな規律の実装が、確実に計画を達成し続ける強い組織を創り上げる第一歩となるはずです。
