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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第170回 気づかない社員の増殖が利益を蝕む。今すぐマネジメントを転換すべき時。

F社長にコンサルティングのご報告をしていた時のことです。

「お陰様で、みんなの成長を実感できます。○○事業部のメンバーは顔つきが違います!」と満足げにおしゃった後に、頭を少し右に傾けて、視線を落として沈黙。そしてF社長がため息交じりにおしゃっいました。「Yがねぇ。ちょっと元気がない。クレームが何件か続いているのも、応えているようなんですよ。」と。

 

Yさんというのは、40代の後半の部長の方です。一度だけ以前、ご挨拶したことがありました。Y部長の部門は、毎年10名弱の新卒が配属される社内で最大の人員数を抱える部門です。社長からも、人育ての第一人者として、常々名前は挙がる方でした。


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社長は、Yさんのことについて、このように言いました。「Yがいるから、△△事業部は、ここまで大きくなれました。お陰様で、会社の成長スピードが速くなってきたのです。これはいいことでした。」「Yの成長が頭打ちになっているのでしょうね。今度は、Yが会社のスピードが追いついていないと思うのです。次回、Yを御願いしてもよいでしょうか?」

 

Yさんは、最大事業部を率いるトップでした。F社長のお言葉を受けて緊急で2週間後から対応することになりました。Y部長は多忙の方でしたので、初回のご面談時間は調整がつかず、夜8時からとなりました。

最初のY部長との面談の際、Y部長は、トレードマークの文字通り人なつっこい笑顔で迎えていただきました。しかし、その笑顔にはなんとなく力がありませんでした。F社長がいつもY部長のことを誉めてらっしゃることを伝えると、またあの人なつっこい笑顔になりましたが、その後には、深い憂慮が顔に刻まれていました。

Y部長が直面している問題の数々を1時間半かけて伺っていきました。その当時、Y部長が一番悩んでいたことをざっと要約すると、”若いメンバーの能力は着実に上がり、出来ることが増えて、先輩社員の負担も軽減してきてはいるものの、作業の質が上がらず、お客様からのクレームが増えていることが問題”とのことでした。

 


 

お客様の満足を積算されたものが売上高です。不満足が積み上がる先にはどんな会社にも不幸な未来しかありません。お客様の不満足の発生は、それに対する経営者や幹部社員の認識の度合い、実際のお客様からのクレームの大小に違いはあれど、あらゆる組織に共通する事柄です。

この問題の根本には何があるのか?

 


 

若い社員に対して、リーダーや先輩社員が指導する際に、よく遭遇する言葉としては、次のようなものがあります。

・「若い社員が言われたことが出来るようになった。しかし、プラスαの配慮が出来ない。(最近の若者は・・・)」

・「言われたことは出来るが、自分で考えてお客様の立場に立てない。(少し考えたら分かるだろうに。)」

・「自分本位で、お客様の気持ちに寄り添えない。(相手の気持ちを理解したら、簡単なことなのに)」

お客様からクレームがあった場合、リーダーや指導役の先輩がこのように感じるのは、よく分かります。何度も注意して、別のお客様から同様のクレームが発生する場合は、脱力感も伴うものです。

1回のクレームで終われば、そもそも問題になりません。何度も同じ問題が発生することで、リーダーや先輩は「何度注意しても直らない。一体どうしたらいいのだ!?」と悶々と悩み、憤ることになるのです。

 

一方、部下の立場になってみれば、意図的にサボっているワケではないことがわかります。お客様を怒らせたいわけでもないし、先輩に注意されることを期待しているわけでもありません。
リーダーにしてみれば、「反省の色が全くない」ことで更に腹を立てるわけですが、本人も実は悩んでいるケースも多いのです。

では、どうしたら良いのか?

 


 

効果的な対応策の一つは「気づかない社員に、気づけ!」というのを止めることです。そして、気づきを求めるのではなく、具体的な改善点を指摘することなのです。

これをリーダーの方々に伝えると、「そんな余裕はない。」「そんなことをしていたら、幾ら時間があっても足りない。」「それでは、問題が解決しないのではないか!?」と激憤し、ヒートアップする方もいます。

 

でも、考えてみてください。リーダーである自分自身が、40代、50代になって「分かる」ことがあります。そして思うのです。”20年前の、あの時の自分は若かった”と。

仮に、タイムマシンがあって、20年前の自分に伝える機会があるとしましょう。そうなったら、20年前の自分は素直に受け入れることができるか?と自問すると、多くの人は首を横に振るのです。

”きっとあの時は、誰が何をいっても、受け入れることはできなかった”と。
”きっとあの時の自分には、正しいことを言われても、気づけなかった”と。

つまり、相手は「気づかない」のではなく、「気づくことができない」というわけです。

だから、「気づかない社員に気づけよ!」というのを止めて、具体的な改善点を伝えると、拍子抜けするほどに、改善してしまうことはよくあります。


 

では、再び考えてみましょう。「この問題の根本には何があるのか?」

この問題の根本には、問題の所在の勘違いがあります。問題の所在は、マネジメントする側にあるのです。マネジメントする側に、具体的な改善点を伝えられないという問題です。

 


 

ここまで、リーダーにお話すると、感の良い方は理解される方もいらっしゃることでしょう。ところが、それは大多数ではなく、少数派です。

私は、この問題にこの20年間、あらゆる企業で遭遇してきました。大多数の方は、この根本原因に気づいていません。

ただ、悲観する必要は全くありません。

なぜなら、この問題が私が遭遇し続けている理由は、この問題が難しい問題だからではないからです。この問題を解消するポイントはとても単純です。

この問題は、学校の先生が、四則演算のやり方を理解してない相手に、「早くやれ!」と怒鳴り続けるのではなく、足し算、引き算、かけ算、割り算のやり方を復習し、かけ算、割り算を先に計算るルールを伝えればよいだけです。

「気づけない」相手に対して、「気づかない」ことにイライラを募らせるのではなく、相手に「具体的な改善点」を伝えば、目の前の問題が解消することを多くのリーダーが理解していないだけなのです。

根本原因がわかってしまうと、対処法は簡単です。しかし、ここにちょっとしたハードルがあります。実践するためには、少し練習が必要なのです。

これまで1000名以上のリーダーにお伝えしてきて思うのですが、このことをいくら座学で教えても、なかなか上達しません。だからこそ、私は力説したいのです。

「全てのリーダーが会得するべきマネジメント技術の一つですよ。」と。

先ほどお伝えしたように、やり方さえ会得すれば、あっという間に目の前の部下の行動を変えることができます。

 

その逆で、やり方を知らなければ、いつまでも、この問題でリーダーも、部下も、そして、組織全体が疲弊していきます。

放置すれば、気づかない社員は増殖していきます。そして、お客様も離れていきます。マネジメントを転換しなければ、利益が減っていくのです。

マネジメント技術は、気づけない社員を気づく社員と同じ動作に導くことが簡単にできます。クレームを減らすだけではありません。狙い通り、お客様の満足を勝ち取れるのです。

つまり、利益を爆発的に生み出すことが出来る、それが私達がお伝えしている、マネジメント技術です。