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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第179回 2代目、3代目社長に必須の組織を動かす力

 

40代のT副社長が悩んでいることがありました。一番の悩みは、古参幹部との接し方です。自分に様々なことを教えてくれた先輩達でもあります。幹部の中には、普段は部下に対して語気荒く対応する人も数名いましたが、次期社長の自分にだけは、気を遣ってくれて、丁寧に教えてくれていました。

彼等の協力なしに事業の継続はありませんが、彼等を社長として束ねることを考えると、不安が募ります。それぞれの幹部は、会社を支えてくれている猛者です。創業者である現社長ですら手を焼くことがある個性の強い面々でもあります。

 


 

T副社長とお会いしたのは、現社長から、売上の低迷を受けて、マネジメントのご相談をいただいた時でした。遡ること2年前、まずは、社長お一人が、古参の幹部に対して実践するとのことで、始まりました。3ヶ月目にさしかかった時のこと、社長が言いました。幹部全員にプログラムに参加させたい、とのことでした。

現社長はゼロから事業を立ち上げた方です。結果に厳しい社長です。思ったよりもプログラムの費用が安く、正直あまり期待してなかったそうなのです。この金額ならば、何か一つヒントでも見つかればと実践されたようでしたが、プログラムを受講して「これだ!」と思われたそうです。

私の方の日程が合わず、希望された規模を一気に導入とはなりませんでした。その代わり、半年毎に2回に分けて行うことになりました。2期目の際にT副社長にお会いしました。現社長はT副社長に最初に参加させたかったようですが、T社長の日程が合わずに、2期目となったのです。

T副社長とその他の2期目のメンバー2名、合計3名の進捗はとにかく早かった。という印象が強く残っています。変化の早かった理由は、1期目のメンバーメンバーと部下達の変化の様子を端で見ていたからでしょう。自分も早く参加したいと考えていたようでした。

1期目のメンバーから内容を教えてもらうものの、「そんなことで、あんなに変わるのか?」と釈然としなかった、と正直に教えてくれる人もいました。しかしプログラムに参加して、変化の裏側にある仕掛けを学ぶほどに、参加メンバー全員が一様に前のめりになっていきました。1期目のメンバーが対象としている部下の変化の度合いに期待値は高まる一方だったと言います。

 


 

いよいよT副社長とお話をした時に、T社長から相談を受けたのが冒頭の内容でした。あれから1年。現在は、私は、将来の選抜された次世代幹部候補のメンバーに対して、プログラムを提供中です。毎月行われる報告会には、社長に加え、T副社長も2ヶ月に1回参加されています。

先日T副社長が、報告会の後に時間が欲しいと言われました。報告会の後に1時間T副社長からご相談を受けました。T副社長からの質問を聞いて、私は「もう大丈夫。」そう感じました。

質問の内容は多岐にわたりましたが、質問の形式が一緒でした。「これ以外の方法は何がありますか?」というものでした。いただいた相談は、実践する前の不安や悩みはありませんでした。

まず、自分が実践した内容を整理して話され、その後に、ご自身で考えた改善案をおっしゃられました。そして、私に尋ねられるのです。「これ以外の方法は何がありますか?」と。

マネジメント技術を自分のものにしていなければ、こうした質問は出てきません。自分の実践結果にある程度自信があり、更にそのスキルの幅、考え方の深みを追求する内容です。間違いなく、ある程度の量を実践した者のみが会得できるレベルにあったのです。T社長がここまでのスピードで進化されることに、私も正直、驚きました。

ただ、この驚きの感覚は、これまで組織運営に悩みを抱えている2代目社長や、次期社長の方々とお話する時に抱く、共通の感覚です。幹部社員と、経営者の覚悟の違いがそうさせるのでしょう。「乾いたスポンジが水を含むように・・・」という言葉の通り、マネジメント技術を習得されていきます。

 


 

私の回答を聞くと、「なるほど一本取られた!」「その手があったか!?」「あ、確かに言って以前お話されてましたね、それ!」ととにかく楽しそうなのです。この反応をみて私は、更に安心したのです。「自分の物にされているのだなぁ。」とただただ、感じ入りました。

当初、T副社長がマネジメント技術を学ばれた時は、このような反応ではありませんでした。質問も、実践する前の相談が多かったのです。「こんな場合はどうしたらよいでしょうか?」「もし、こんな反応だった時は、どのような対応したらよいでしょうか?」とおっかなびっくりの状態でした。もちろん、これは、T副社長だけではなく、誰もが最初は見通しが聞かないので当然なのですが、振り返ると、微笑ましいほどの変わりようです。

 


 

2代目、3代目社長は、創業者と違います。創業者は、ゼロからの立ち上げで、会社の隅々にまで、神経が通っています。ほんの小さな変化であっても、自分のセンサーが反応し、次々と手を打っていきます。

創業者は、現場を体験し尽くしているので、過去自分が体験した一次情報と引き当てることができます。現場を離れて長くなっていても、表面的な情報の背景を深くイメージすることができます。一つ一つのアクションがどのように収益に結びつくのか、一瞬でイメージできるので、決断も早い。

2代目、3代目には、こうした感覚はありません。社内に起こる事象の捉え方が、自分の感覚的に捉えることが難しいところから始まります。全てにおいて、最初から自分が体験した時しか得られない、一次情報を持ちえません。手に入る情報は、幹部社員を通した二次情報に触れる機会が多いのです。もちろんこれはデメリットばかりではありません。しかし、この場合は、幹部社員との信頼関係がなければ、情報の漏れの補完が効かず、決断するほどに、問題を生み出すことになります。

 


 

2代目、3代目が、組織を引き継いだ後、組織で成果を上げ続けるためには必須のことがあります。それは、マネジメント技術です。自分よりも10歳以上年齢が上の幹部社員に対してさえも、確実に求心力を発揮することができるようになります。

幹部社員からの求心力を手にすることができなければ、組織の成長どころか、組織の運営すらも危機的な状況に陥ることだってあります。そして、あらゆる点において、スピードが鈍化し、成長の維持が難しくなり、衰退が顕著となるのです。

実際に、私の知り合いのコンサルタントからの紹介で、経営危機に陥った企業の相談をかつて何度か受けたことがありますが、幹部社員が次々に辞めてしまい、現業の維持すら難しくなった事例がありました。

マネジメント技術を手にすることで、現場の経験、知識で創業者に見劣りする2代目、3代目社長であっても、幹部社員に対して、求心力を手にすることができます。この先には、未来が拡がります。現業を幹部に任せて、新社長が若さを活かして、新規事業を創ることだってできるのです。

将来の不安は、マネジメント技術を手にすれば、意図をもって解消に向かって進めていくことができます。まず目の前の一人の幹部を3ヶ月で成長軌道へと導いてみてください。それができれば、マネジメント技術を手にしているという証拠になります。
もしそれが出来なければ、自分でその技術を獲得するために時間とエネルギー使うよりも、早く技術を手にいれて、実際に目の前の幹部社員達と組織の未来を変えることに時間とエネルギーを使うべきです。