コラム「組織の成長加速法」-第239回 「忙しい」が口癖のリーダーの大逆転、未来を呪う言葉をバネにする
営業力の強さで業界から注目されている企業の役員の方々のプログラムが始まったと同時に、
営業部門の執行役員の方からご相談をうけました。
関東地域のあるブロックの営業成績が振るわないというのです。地域が地域だけに全社売上へのインパクトも大きいため、喫緊の課題として、役員会では注目のトピックでした。
ブロック長を3年で2回も交代して、てこ入れを図っているものの、芳しい見通しがみえず、この執行役員の方も関西本社から何度も足を運んでいましました。
5支店が参加のブロック長の方とお話をさせていただくと、2つの問題が浮かび上がってきました。
忙しいリーダーが見落としていた「本当に見るべきもの」
新任のブロック長は、面談の最中も何度も「忙しい」と口にしていました。
売上改善の鍵となる3つの支店について尋ねると、こんな答えが返ってきたのです。
「忙しくてまだ(支店長達と)個別には話せていませんので、詳しくは……」
赴任4ヶ月経っているにも関わらず、状況把握ができていない。
その時点で、すでに“成果が出ない構造”ができあがっていたと言っても過言ではありません。
さらに、各支店長について「予算未達」「指導に弱い」「一人で抱え込む」などの課題が挙げられましたが、それに対する具体的な改善策や対話のアプローチは、まったく語られませんでした。
つまり、「課題を把握している“つもり”」で終わっていたのです。
この“つもり”の連鎖が、組織の未来を静かに食い尽くしていきます。
忙しさに飲まれた瞬間、未来をつくるチャンスを手放している
リーダーの発する「忙しい」という言葉は、リーダーにとって最も危険な思考停止ワードです。
この言葉を頻繁に使う人の多くのリーダーは、「優先順位の判断」を誤っています。
本当に忙しいのではなく、「何に時間を投下するべきか」が見えていない状態です。未来を変えるには、まず“忙しさを脱する行動”が必要です。
今の状態を変えたいのなら、先延ばしにせず、今すぐ未来への布石を打たなければなりません。
未来を変えるのは、「今、何に時間を使うか」という小さな選択の積み重ねです。
リーダーが成果を出せない理由:課題を“設定できない”という現実
多くのリーダーは、「問題点」は語れます。
しかし「課題」となると、ほとんどの方が言葉に詰まります。
事実、私のこれまでの経験からも、「問題の指摘」はできても、「課題の設定」に進めるリーダーは10%にも満たないという印象です。
それは能力の差ではなく、“課題設定のやり方を知らない”だけなのです。
課題とは、現実と目標のギャップを明確にし、行動へと落とし込む“実践の設計図”の最も大切な要素です。これがないと始まらないのです。
「忙しい」ままでも成果を出せるリーダーは、何が違うのか?
私はこれまで1500名を超える経営者・幹部の方々と対話を重ねてきました。
共通しているのは、皆さん本当にお忙しいということです。
ですが、それでも「成果を出せる人」と「出せない人」の差が明確に出ます。
それは、“忙しさ”のせいではなく、
「課題を設定し、仕組みに落とし込む力」があるかどうかの違いなのです。
仕組みと言っても、難しいことを指しているのではありません。
必要なのは、日々の行動が「目標につながる」ように設定されているか──ただそれだけ。
この基本さえ外さなければ、どんなに忙しくても、組織は確実に動き始めます。
未来をつくるとは、「1時間の使い方を変えること」
マネジメントの目的は、過去の延長線を維持することではありません。
未来をつくることにこそ、マネジメントの本質があります。
だからこそ、「忙しいから無理」と言うのは、本来の役割を放棄しているのと同じ。
未来を手放すリーダーに、部下はついてきません。
御社のリーダーたちは、
本当に「未来を見据えた1時間の使い方」ができていますか?
未来は、呪いの言葉ではなく、社員の課題を言い当てることで変えていく
「忙しい」は、努力の証ではありません。
未来を後回しにする“言い訳”です。
未来を台無しにする、呪いの言葉「忙しい」を終わらせるために、今こそ反転させていきましょう。
課題を正しく設定し、行動に変える仕組みを整える。
この当たり前のようで難しいことが、組織の命運を分けていきます。
リーダーの「忙しい」状態を終わらせるためには、リーダーの仕事を分散させることを可能に
する、能力アップした社員を増やすことが結局一番の近道です。