代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第222回 “個人頼み”経営に終止符!辞める社員が減り、売上が伸び続けた驚きの営業チーム育成法

 

なぜ、あの会社は“崖っぷち”から生まれ変われたのか?

経営の現場には、数字では測れない「もどかしさ」が渦巻いています。

売上は上がっているのに、なぜか将来が不安。現場の空気も、どこか重たい。

そんな違和感が、ある日突然、経営者の心を深く刺す瞬間があります。


社員の幸せを追い求めて

今回ご紹介するのは、“社員の幸せ”に心血を注いできたY社長の物語です。

彼の会社もかつては、「勢いだけ」で駆け抜けてきた時代がありました。

トップ営業マンだったY社長は、その手腕で会社を急成長させ、中途入社の猛者を集めては、次々と右肩上がりの数字を叩き出してきました。


エース頼み経営の限界

しかし――。営業社員が20名を超えた頃から、事態は暗転します。

「エースが抜けるたびに、売上がガタ落ちする」

まるで“砂上の楼閣”のような経営。いくら実力者を集めても、組織の屋台骨はぐらついたまま。Y社長は、真夜中に天井を見上げながら、考え続けました。

そして彼は、一つの決断をします。「個人プレーから“チーム営業”へ」。

営業サポート体制を築き、個の力に依存しない、安定成長する組織を目指し始めたのです。


新卒育成の壁

ところが――、ここで新たな壁にぶつかります。

中途社員中心のカルチャーで育った組織には、「営業を教える文化」が根付いていなかったのです。新卒採用を始めても、育成どころか、続々と退職していく。

初年度に採用した新卒4名も、数年で誰一人残りませんでした。

組織の根っこから変わるには、何が必要なのか?

「チーム営業」が掛け声だけで終わるのか――。Y社長の焦燥と挑戦の日々が続きます。


希望の光・Mさんの登場

そんななか、あるキーパーソンが現れます。

彼女の名はMさん。異業界から飛び込んだ中途社員で、最初は全くの素人。けれど持ち前の負けん気で、入社2年目には誰もが認める成果を出し始めます。

部長主導の新プログラムを受けたMさんは、「自分も受講したい」と社長に直談判。社長はその熱意に心を打たれ、Mさんを新卒チームの教育係に大抜擢します。


挫折と挑戦の日々

そこから、ドラマが始まります。

新卒採用は何度も挫折しました。残ったのは常に一握り。5年目には一度、採用自体をストップするほどでした。

けれど、Mさんは諦めません。部長や役員たちも巻き込みながら、ゼロから新卒育成の体制を作り直します。

6年目、再び新卒6名を迎え入れます。Mさんは3年間で15名の新卒を率い、全社の40%以上の売上を生み出すチームを作り上げたのです。しかも、その間に辞めた社員はわずか1人。

かつて「定着しない」「育たない」と言われていた組織が、見違えるほどの成果を出すようになったのです。


逆境の中で生まれた成長

もちろん、全てが順風満帆だったわけではありません。Mさん自身、不安と焦りに何度も襲われました。

新卒6名のうち4名は順調に育ちましたが、2名はなかなか成長しません。Mさんは壁にぶつかり、涙を流すこともありました。

それでも彼女は、コツコツと“マネジメントの技術”を学び、試行錯誤をやめませんでした。

そして――プログラム開始から1年半後。

“伸び悩んでいた2人”が、なんと受注まで3年半かかるはずの大型案件を、たった2年目で獲得したのです。社内に歓声が沸き起こり、Mさんは静かに、けれど確かに涙を流していました。

その後は快進撃。新卒チームは全社を支える原動力となり、かつての“砂上の楼閣”は、“盤石の組織”へと生まれ変わったのです。


人は、組織は、必ず変われる

実は――社員を動かすのに、特別な才能や運は必要ありません。

必要なのは、再現性ある「技術」と「順番」。

難しいことは何一つありません。けれど、“順序どおり”に一歩一歩、技術を積み重ねることで、社員は必ず変わります。

この物語は、新卒チームを例にしていますが、年齢や経験は関係ありません。

「素直な人しか育たない?」いいえ、違います。

むしろ「言ってもやらない」「決めてもやらない」「継続できない」――そんな現実と向き合う経営者こそ、この技術で“人と組織が変わる”醍醐味を味わえるはずです。


会社は変われる。人も組織も、必ず変わる――。

さあ、あなたの会社は、次にどんなドラマを描きますか?