代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第234回 成長企業の社員と衰退企業の社員 の違い! 社員個人の「成長課題」が 明確か否か

とある地方の30億円企業の経営者の方から、緊急の相談をいただいた時のこと。
「営業部門の低迷から部門のトップを交代したものの、ほとんど成果が出ていないのです」――そう切り出されました。

社長は2代目で、かつては営業組織を率い、数億円規模の会社を30億円企業に育て上げた実績をお持ちです。その後はさらなる成長を狙い、営業部門を外部から招聘した元大企業の営業部長をトップに据えました。ところが、みるみる業績が悪化していきました。社長は意を決して、信頼するベテランのMさんに託しました。それでも、想定通りに進まずにご相談に見えたのでした。

Mさんは長年、社長の思いを言語化し、営業プロセスを可視化するなど大きく貢献してきた人物。Mさんからお話を度に、私も、Mさんの頭の回転の速さと実行力に何度も驚かされました。新しい課題をスラスラと指摘し、改善策を次々に語る頼もしい存在だったのです。

「伝えたのに伝わっていない」すれ違い

しかしMさんの部下である営業部長2名に話を聞くと、少し様相が異なりました。Mさんに対してのイメージが崩れていきました部下2名からは、まったく違う反応が返ってきました。
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名の部長にMさんが伝えたといわれる内容を私の方で改めて確認してみました。

すると、「特に聞いていません」「言われていません」――
一方のMさんは「確かに伝えた」と、日時や場面を具体的に説明してくれます。

私にはどちらも嘘をついているようには思えませんでした。そして多くの場合、上司の言い分も部下のいい分も事実なのです。同時に起こることがあるのです。それがこのすれ違いです。このすれ違いこそが、組織の改善を止める典型的な落とし穴なのです。

成長課題が認知されていない限り、人は動かない

社員が動く条件はシンプルです。自分の成長課題を明確に認知できているかどうか。
もし改善が進まないなら、「まだ認知できていない」と考えるべきです。にもかかわらず、多くの上司は「そんなはずはない。確かに伝えた」と言います。ここにもう一つの落とし穴があるのです。

上司の役割は「伝える」ことではありません。上司の役割はあくまでも、社員が成果を出すことです。そのために、①部下が自分の成長課題を明確に理解していること②部下がその成長課題の克服のための一連の行動をとること。を実現させることです。それができると、必ず改善は前に進みます。

「こんなやり方でできるはずがない」と疑ったM部長

私がそのための具体的な方法を説明したとき、M部長の顔にははっきりと「こんな簡単なやり方で成果が出るわけがない」という表情が浮かんでいました。長年の経験がある方ほど、様々な経験を経ています。「人がそんなに変わるものか」と疑うのは自然なことです。

部下の変化が上司を変える

ところが3ヶ月目、4ヶ月目になると、営業部長2名が次々と行動を変え、それぞれの組織で成果を出し始めました。M部長の目の前で起きた変化は、彼の疑念を確信に変えました。
「このやり方で本当に人は変わる」――そう実感した瞬間、M部長自身も変わったのです。

組織は意図的に変えられる

現在、M本部長は執行役員に昇格し、一人の部長は新規事業の営業責任者へ。さらにもう一人の部長は営業部門トップとなり、3年で10億円以上の売上拡大を実現しました。

人が動き出したとき、組織はまったく違うステージに進みます。これは偶然ではなく、正しい課題設定と仕組みによって、意図的に再現できるプロセスなのです。

まとめ

改善が進まないのは、社員にやる気がないからではありません。まず、最初の最初に、成長課題を認知できていないからです。
社員の成長課題を言語化し、行動を促す仕組みを入れれば、人は必ず動きます。そして人が動けば、上司が変わり、組織が進化するのです。

あなたの組織の何人が成長課題を認識できていますか?
そして、先週、何人が成長課題の解消の行動をとり、成果を得ていましたか?