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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第128回 「考える社員」が自然増殖する組織に変容するために必要な時間はわずか○○○、まだ手をつけず時間を浪費しますか?

首都圏である分野で、2番手のT社。あと2年で首位を合い言葉に社員一丸となって前に進んでいました。

ところが、いくつかの事業部では退職率が高い状態が続いていました。人材難の中、技術者の流出は、経営課題の中でも、緊急で対応するべき課題のひとつでした。こうした背景があって、S社長が弊社に相談にいらっしゃいました。

S社長は、技術者の採用コストの上昇率が想像以上であることに大変な危機感をもっていました。社長曰く、T社の強みは理念を強く打ち出し、40年の歴史がありながらも、若い社員が活躍する組織へと変貌したことでした。そのため、技術力がいくら高くても同業他社で長年働いた人は、考え方になじめずに辞めていくことが多かったそうです。そのため、若手の技術者に絞って採用をしていていたのです。

法定通りの基準を満たす必要があり技術者の確保は売上げに直結します。採用は社長の重要な仕事だといって、S社長はあの手、この手と次々に策を繰り出すももの、急激な採用コストの上昇は、一時的な費用の上昇に留まりませんでした。

30代で技術レベルでは既存の社員と同等、もしくは低いにも関わらず、新規採用する技術者の給与は20%以上高くなっているのが現状。そんな状況の中で、ある2つの部門では、特に短期間に人が辞めていく状態が続いていました。


S社長と話をした後、離職率が高くなっている2人の部長と話しをしました。2人の部長に共通なのは、職人気質。「俺なんか教えられたことなんかないですよ」「とにかく自分で調べてねぇ。相手にバカにされないように、取り繕うのに必死でした」等々。

そして、最近の社員の傾向については、「最近の若い人は、自分で考えようとしない。」「調べないで全部聞いてくる」という分析でした。そして、ため息をつくように「最近はようやっと言ったことはできるようになってきたんだけど、、」とどちらかが言うと、2人とも「そうそう」「そうそう」と下向き加減になりながら、肩を落としてうなずき合うのでした。

2人の部長も、売上げを上げるために、技術部門も協力したいという気持ちもありました。ところが、部下の能力アップが前述の状況で、遅々として進まないことがネックなり、営業がとってくる仕事をこなしきれないのではないかという不安を抱えていました。

更に話を聞くと、国家資格をとることよりも、実際に現場を収めることのほうが難易度が高いということでした。この話を聞いた時、「これはいけるな」と私は思いました。


実際に2人の部長が、部下にどのような声かけをし、指示を出しているのかを調査しました。
そして、育成計画の有無とその内容についても確認しました。すると、面白い現象が見えてきました。

「言ったことしかやらない」「考えない」ということが問題だといっていたのですが、部下に対する指示だしの場面、声かけの場面では、ほぼ100%部長から部下への伝達に終始していました。

まさに、上司が「話すだけ」、部下は「聞くだけ」の構図です。この構図が繰り返す限り、部下が考え、部下から提案が出てくるようにはなりません。部下との対話の仕方を改善しなけば現状の問題はそのまま有り続けるのです。

また、部下の育成計画もありませんでした。そのことについて確認すると、「みんなそれぞれ経験も、状況も違うから」という回答でした。

こうした状況が見えてくるにつれ、私はさらに「これは短期間で改善できるな」と強く思うようになりました。


「相手の経験値が違い、状況も違う」というのは、もっともな答えなのですが、これは単なる言い訳に過ぎません。時々まことしやかに、「いつも相手のことを考えながら、相手に合わせて調整します。」なんていうことを言う人がいます。もしこの言葉通りデキル人は、部下育成のプロフェッショナルなはずです。もし、部下の育成に問題を抱えている人がこの台詞をいおうものなら、要注意です。実際には何も教えてない人がいう言葉です。現に、この2部長の下では、離職者が、他部門よりも30%以上高かったのです。

有望な部下が辞めている理由は、「自分の将来展望が開けない」というのが主な理由です。「他の会社のほうが自分は成長できそうで、その結果、将来よりよい選択肢を手にすることができると思う」と考えるから人は辞めていきます。

そのためには、育成計画がなければ話にならない。相手に未来を見せてあげることができないからです。

そして、「言われたことしかやれない」部下も上司にとっては困りものですが、「指示したことだけやっていろ」と言われる部下にとって、その上司の存在は頭痛の種です。

将来有望な人が辞めていく組織に共通なのは、育成計画がなく、上司がいい加減に対応していることと、部下に指示ばかりしていることの2つが当てはまります。

この2つが当てはまる組織は、部下の成長は遅く、指示されたことだけしかやらない社員ばかりになっていきます。


2人の部長に、「考える部下を増やしたいか?」「部下の成長スピードを上げたいか?」と聞くと、2つとも、「もちろん実現したい」ということでした。そこで、2人の部長には、新しいやり方を実験のつもりで取り組むことを約束してもらいました。

実験なので手順が重要。その通りやれば、良い結果につながりますが、手順を勝手にかえると、もちろんその実験は失敗します。

「半年間、新しいやり方で実験をして、ダメなら元にもどしましょう。」と約束して、実験は開始となりました。1人は48才。もう1人の部長は56才。最初は、なかなか私が御願いしたやり方通りになりません。やる気はあっても、ちょっと気を抜くと、自分流のやり方に戻りそうになるのです。

しかし、私のチェックが入るものですから、行きつ戻りつしながらも、実験の手順に沿ってやれるようになっていきました。

4ヶ月目に、2人の内の1人が部下から改善提案があったと報告してくれました。そして、もう1人の部長は、5ヶ月目に部下の書類提出期限が改善したこと、ミスがほぼゼロになったことの報告がありました。

どんなビジネスも、顧客の問題解決をすることが、最終目的です。ですから、組織内で行われる上司と部下の仕事上の対話も、問題解決になってるはずです。

このプログラムを受講し、実験を開始するまでは、問題解決するのは、いつもこの2人の部長自身でした。部下が遭遇する、問題に対して、1から10まで部長が解決策を指示していました。

ところが、5ヶ月目には、部長が指示することはゼロになりました。その代わり部下が解決策を自ら話すようになったのです。

実験している本人達は、徐々に進行していくため、いつの間にか昔からそうだったような錯覚に陥ることがあるのですが、私が指摘すると我に返ったように目を丸くします。

最初に二人から聞き取りをした時の困った状況から比べると、状況は文字通り一変しているのです。「部下に考えてもらいたい」「より規模の大きな現場をこなせるようにスキルアップしてもらいたい」といっていたことが、5ヶ月目で実現できていることに驚くというわけです。


2人の部長のみならず、この実験をした時にほとんどの人が言う言葉があります。それは、この実験の前も同じことを部下に要求してきたのに、ほとんど改善がみられなかったのに、この実験では、うまくいった、というもの。嬉々として言うというよりは、ちょっと残念そうな印象を受けます。

この残念な気持ちは私もよくわかります。私自身も、そうでした。自分で答えを見つけることに私たち日本人はそこに美徳を見いだしがちなのです。

でも、それは学生時代のルール。社会人のルールは違います。石にかじりついて自分一人で思い悩んで、答えを出すまでに時間がかかるより、正しいやり方を知っている人から教えてもらって早く答えを出す方が大切です。

こういうと反論する人がいますが、単なる意固地になっているだけなんです。自分が消費者のた立場にたってみたら、どちらが正しいのかは誰の目にも明かです。

例えば、あなたが、フレンチレストランで料理を頼んだとしましょう。待てど暮らせど料理が運ばれきません。その日の厨房にいたシェフはまだ経験が浅く、あなた頼んだ料理は一番苦手な料理でした。まだレシピがうろ覚えだったのです。

彼は責任感が強く、当日休みだった料理長に電話するのではなく、レシピの詰まった棚からその料理のレシピを探し出そうと一生懸命探します。その時間が実に30分。料理長に電話すれば3分ですんだものを。

通常よりも30分遅くなって、得意げに彼があなたの前に料理を持ってきます。その時、待ちくたびれたあなたは、彼の行動を褒め称えるでしょうか?それとも、叱責するでしょうか?


さて御社の場合は如何でしょうか?「考える社員」が増えるために必要なことは実行されていますか?

それとも、「やり方は知ってる」なんて嘯いたまま、従前のまま「言われたことだけやる社員」を徐々に増やしてしまっていますか?

それによって、どんな問題が引き起こるのか?その損失はどの程度になりそうか?計算したことがありますか?