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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第112回 動かなかった社員が短期間で成果を上げる要素とは?

「これを使ってくれれば、上手くいくんですよ。やらないから、問題が出る。 何度も言ってるんだけど、やらないんですよ。」と憤りとあきらめと入り交じった表情で話す、S社長。その隣に座っているY常務も大きくうなずきます。

このS社長とY常務の二人三脚で圧倒的なスピードでこの20年走り続けてきました。しかし、ここに来て、離職の問題が頭痛の種。

S社長は胸を張っておっしゃいました。「我が社の売りは、仕事のやりがいと厳しさです」実際、数年働くと、他社に比べると4倍速で成長するそうです。顧客から満足はもちろん、感謝をも勝ち取るようになるためには、基礎が大事、というのがS社長の信念。そのため、最初の3年はみっちりと仕事のやり方を徹底的に教え込むというスタイルが続けられてきました。

その結果、S社長の狙い通りに、仕事の質が担保されて、お客様からは好評価を受ける。他社から、スイッチしたお客様からは、大絶賛される、ということも珍しくないそうです。


その一方で、新入社員の定着の悪化は、会社の根幹業務を揺るがす事態になっていました。

元々、入社5年の離職率は、業界平均よりも、数倍高い状態だったといいます。なので、人が辞めるということには、経営幹部も、社員の方も、慣れっこになっていて、「あ、また辞めるんだ!」そんなことが毎年繰り返されてきました。

ところが、過去5年、離職率が急激に跳ね上がったかと思うと高止まりしています。5年離職率が80%に迫ってくると、それまでの様相とは違う現象が起きました。S社長がいう離職ドミノが起こり始めたのです。大量に退職者が出ると、残って引き継ぐ社員は、通常業務よりも、引継ぎ業務に翻弄されるようになります。その量に圧倒され、職場の雰囲気は極度に悪化していったのです。


「どんなことがあっても、売上げの踊り場は絶対に作りたくない」そう公言していたS社長も、深刻な事故、クレームが増えてきたことを受けて、「売上げの踊り場を作る」こと以外の選択肢がなくなりました。丁度その頃、S社長が弊社のセミナーにいらっしゃり、お話を伺ったのです。

S社長の事例は、少し極端な事例ですが、ご相談に訪れる経営者の方々に共通する課題のひとつが含まれています。それは、動くはずの仕組みが動かないということ。

導入前は、長らく懸案となっていた課題の解消がいよいよ実行されると、意欲満々で始まるのですが、導入後半年たつと、「それを導入したら解決されるするはずだった問題が解決されない」ということだったり、「すごく効果のあるはずの仕組みが動かない」という現象にぶち当たり、すっかり意気消沈してしまうのです。

因みに、S社長の場合は、2つの仕組みが機能不全に陥っていました。ひとつは、能力を上げるための社内の仕組みが形骸化して、社員が使わなくなってきているというもの。故に、トラブルが多くなってきたと感じていました。

もう一つは、課題解決のために、新しい仕組みを導入したものの、当初の予定通り、導入期間は過ぎたものの、うまく活用されていないというもの。これに関しては、仕組みが会社の現状に合わないと考えていました。

過去からの仕組みと新しい仕組み、その取り組み方法は、似て非なるものもありますが、共通する点もあります。

それは、「あらゆる仕組みは、活用されてこそ、その機能を発揮する」というものです。言い換えると、活用されなければ、全く無いもの同然。これが仕組みというものです。


仕組みの導入は、新しい道具の導入に似ています。

例えば、木を切る道具として、斧だけであらゆる作業をしている人達がいたとします。

その一群の中の棟梁が、別の現場で、「かんな」や「のこぎり」という道具に触れて、「これはすごい」と、「かんな」や「のこぎり」を人数分買ってきて渡すわけですが、誰も使わない。

棟梁は、「大枚をはたいたのに何でみんな使わないのか!」といって腹を立てる。ただ、どんなに怒っても、みんな使わない。

「かんな」「のこぎり」使えばわかる便利な道具。しかし、それを買っただけで、使われなければ、意味を持たない。当たり前ですが、道具そのものが、問題の解決をするわけではありません。

同様に、仕組みそのものが、問題の解決をするわけではない。


人が言った通りに人は動かない。これは、何百年も前から同じことが言われています。つまりこれこそが人の本質です。人の本質がそうなのだから、マネジメントは、そこから組み立てなければ成り立ちません。

この本質に立ち返って組織を作り上げられているか?という観点から自社をチェックしてみてくだし。仕組みを次々と試す前に、やることがあるのです。それは、何かを「徹底させる」ということです。

これさえできれば、あらゆる仕組みは、次々に実行され、今とは違う成果につながるはずです。


S社長が現場の最前線を離れて3年。新しい仕組みも古い仕組みも、形骸化が進みました。離職が高い部門の部門長を集めて聞けば、「業務が大変だ!」というのが退職の一番の理由とされていました。

しかし、新ためて調査すると、違う結論が導きだされました。社員がいう「大変だ!」というのは、厳しいことが大変なのではなく、成果がでなくて、不安になり、多くの人が徒労感で「大変だ!」と感じていたのです。

問題は、業務量や業務内容ではなく、現場のマネジメントのやり方にありました。仕組みに疑義を挟むような意見がでるとすぐにそれに迎合する。部下が「大変だ」というと、「わかったそれじゃ、それは止めよう!」

ただただ、物わかりのよい上司、それが部下の痛みを共有する良いマネジメントだと勘違いしていたのでした。

なぜ、そのように変わったかというと、S社長とY常務以外の人は、「徹底させる」ということができてなかったのです。すると、結果的に、みんな自分勝手にやる、だから、当然成果がでない。仕組みの問題ではなかったのです。


創業経営者はゼロから事業を組み上げた人ですから、組織内で徹底、徹底、そして、徹底させることをし続けてきました。

もちろん自ら作り上げたことなので、どんな角度から質問がきたところで、何ひとつ動じることはありません。

ところが、創業者が現場を離れると、別の人が社内に物事を徹底させる役目を負うことになります。このタイミングで組織が急速に弱体化することが実に多い。

社長に代わって現場を仕切る経営幹部たちは、創業経営者から、耳にたこができる程、「やれ!やれ!やれ!」と言われてやってきた。だから結果がでたのです。しかし、何でこれが必要で、何でこれを止めてはならないか、考えずにやってきたのも事実です。

すると、若い身勝手なメンバーからの質問に満足に答えられないという事態に陥ります。そして、仕組みが次々に骨抜きなっていくのです。


結局、S社長が現場から離れてから、あまりにも長期間、組織全体に、自分勝手な解釈、それに基づく成果のでない行動が溢れていました。自分基準が横行する、典型的なダメ組織になっていたのです。

S社長自身、なかなかこの状況を認められませんでした。社長が本気で取り組まないこで、組織が変わることはありません。最初の5ヶ月間は、膠着状態。

6ヶ月目にして、変化が明確になったのです。次々と提案が生まれるようになりました。

更に6ヶ月続けた時、離職率が突出していた部門の離職率が半分となりました。そして、それ以外の部門の離職率は軒並み低下したのです。

5年後離職率の結果はまだ先ですが、S社長も、Y常務も結果に大満足。既に足下では、受注活動を活発化させても、受け皿の不安はなくなりました。

2人は今は売上げの急拡大に向けて、新しいチャレンジに邁進されています。


さて、御社には、何か新しいことを導入したら、うまく機能していますか?
それとも、うまくいかず、新しいことを試す羽目になっていますか?

後者だとしたら、まずひとつ、社内で徹底することを定着させる、全てはここからです。