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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第120回 あるトラブルメーカーの部長に起きた驚くべき変化とは?

急成長を続ける九州地盤のIT企業の部長のYさん。上場も視野に入ってきたというF社長からYさんの話を聞いたのは3年前のことです。
「コンプライアンス上、今の社労士とは別の方にまず相談したほうがいいですよ」とF社長に最初にお会いした時にお伝えしたのを覚えています。

社長から聞いたYさんのトラブルは、親しくしている社労士から時々耳にする「ヤバイ案件」に近い内容でした。そのトラブルの解消に当たり、その会社がお付き合いしている社労士の指示にしたがってるという対応策を聞いた時は、どう考えても十分には思えなかったのです。

結局のその件は、私のご紹介した社労士と弁護士の方のアドバイスも勘案し、社長がうまく処理し、事なきを得ました。しかし、この問題を起こした当事者であるYさんにとって部下とのトラブルはこれが初めてではありませんでした。

F社長曰く、Yさんにはこれまで大小様々なトラブルがあったというのです。当然といえば当然なのですが、F社長を除く残り3人の取締役からのYさんへの評価は決して高くありませんでした。

他の取締役の評価が低いことをF社長は知っていましたが、社長はYさんのことをとても高く買っていました。ところが、コンプライアンス上の問題を指摘されると、さすがに社長も不安を感じ、弊社にご相談にいらしゃったのでした。


Yさんは、今でこそ自らプログラムを書くことは稀になったといいいますが、プロジェクトマネージャーになる5,6年前までの10年間は、プログラマーとして活躍していました。

社長曰く、プログラマーとしての腕もなかなかのものだということでしたが、それがまた、Yさんが部下との間に引き起こしてきた数々のトラブルの元にもなっていました。

Yさんの部下が極度のストレス状態に陥るのは、常にプログラマーばかりでした。本来、Yさんはプログラムの内容を吟味する役割ではなかったのですが、少しでも時間ができると、プログラムの内容を見ては、事細かく修正点をプログラマーに指示していたのです。

急拡大に伴って、経験値の浅いプログラマーが大量に入社し、ひとつのプロジェクトに参加するプログラマーの内、ベテランと呼ばれるプログラマーは、多くても半分。通常は1/3以下でした。


技術力の低い若手のプログラマーには、技術指導役の先輩が任命されていて、先輩がプログラムの内容のチェックをした上で、提出される決まりになっていました。

ところが、その先輩がチェックしたものに対しても、Yさんは、容赦なくダメだしをしていました。

1回、2回なら、プログラマーもYさん指摘を受け入れるのですが、半年以上のプロジェクトになると、一人のプログラマーは5回、6回以上も受けることになります。

もちろん、プログラマー達にとって、Yさんからの指摘は嬉しいことではありませんでした。本来はその役割にないはずのYさんからのだめ出しには嫌気がさしてきますし、それがまかり通る会社にも、不満を募らせていきます。

指摘が5-6回を超えると、大体おきまりのパターンになります。「なぜ、先輩がいいと言ったものにYさんはいちゃもんをつけるのか?」という声が日に日に増大し、Yさんが指摘を受けた時に、露骨に嫌な顔をするようになります。

そうすると、Yさんが、そのプログラマーとチェック係のベテランを呼びつけ、会議室で説教が始まります。酷いときは2時間、終始怒鳴り散らす。プロジェクトが中盤にさしかかると、
毎日のようにYさんは、誰かを怒鳴りつけるようになるのです。

こうなると、Yさんが関わるプロジェクトで、プログラマー達は、1日も早くプロジェクトが終わることだけを願うようになります。プロジェクトの終わる頃には、ぽつぽつと出てくるようになるのです。


Yさんは全く悪気無くやっていました。寧ろ、本人達のために、しっかりとダメだしをして、態度を改めさせなければ、本人達のためにならないと心の底から思っていたのでした。

Yさんに言わせれば、チェック役のベテランのプログラマー達は、若いプログラマー達をちやほやしすぎていて、要求する技術レベルが低すぎました。

「それが当たり前と若手に思わせたら、これから先、プログラマーも会社も困るだけではないか。」こうYさんは考えていたのです。

F社長は、Yさんのこの考え方を評価していました。このように考えて行動してくれる社員は大変貴重な存在と思っていたのです。一方、F社長は、常々Yさんに対して、「お前の言っていることは正論だけれど、伝え方、修正の仕方がおかしいから、もう少し相手に受け入れられるように話せ」と伝えていました。

しかし、YさんがF社長のアドバイスに応えることはありませんでした。

Yさんは、F社長を大変尊敬していましし、F社長がYさんのことをとても評価してくれていることもわかっていました。そして、部下とトラブルになる度に、社長に迷惑をかけていることも知っていました。

その時のことを振り返って、Yさんは、「社長の言葉を実践して、変えたい気持ちはあったもののやり方がわからなかった」と言っていました。


Yさんと2回目の面談の時、私は、Yさんが原因で辞めた人数を数えてもらいました。Yさんの感覚では、10名弱。人事の担当役員に言わせば22人でした。Yさんに22人が退職することの意味を様々な側面から考えてももらい、何をどのように変えるべきなのかを話し合いました。

その結果、Yさんは、変わる決断をしたのです。実際、プログラムの内容に一生懸命取り組んでいることはよくわかりましたが、それから4ヶ月間は、なかなか変化を目にすることはありませんでした。5ヶ月目にYさんから手応えを感じるようになった、と言われましたが、部下の行動変化はまだ見えてませんでした。

ところが、6ヶ月目には、大きな変化を見て取ることができました。


プログラムが始まった当初は、Yさんの前では、石のように黙りこくっていたAさん。6ヶ月目には、Yさんに対して、具体的な改善策を次々に提案するまでになっていました。始まった当初は、上司と部下の面談といいながら、お互いに固い表情で、寒々とした感じだったのが、半年後は、時折笑い声まであがる中で、お互いイキイキとした表情で面談しているのでした。

Yさんは、Aさんが良い成果報告をしてくれた時は、上手くいった要因を具体的に聞き取り、そして、言語化することで、Aさんが良い成果を出すときに共通する良い行動パターンを探り当てることまで出来るようになっていました。

こうなると、AさんもYさんとの面談をすることが喜びに変わっていったのです。そして、Aさんもこれまでとは違う行動と取るようになっていました。

実際、最後の1ヶ月では、プロジェクトで得た新しいプログラムの知識を社内で共有するために、自ら他部署のメンバーと協力して、社内データベースを構築することを提案し、実行に移しつつありました。


以前のAさんを知っている役員達は驚いていました。プライベートで余程良いことがあったのかと思った人もいたようです。

確かに、以前のAさんは、お世辞にも良い社員とは言えなかったのです。業界経験年数が比較的長い割には、周囲の人が困っていても無頓着、プロジェクトが問題に直面し行き詰まっても、知らん顔という自己中人間だったのです。それが、僅か5ヶ月で、行動も、考え方も大きく変わっていったのですから、周囲が驚くのも当然です。

F社長に頼んでAさんに直接インタビューをさせてもらいました。Aさんは自分の変化の要因を次のように語ってくれました。「Yさんとの面談を重ねるなかで自分自身のことを振り返るきっかけを多くもらったこと」「Yさんと一緒に進捗を確認する中で、それまでは、面白さを感じたことのなかった作業や業務が楽しく感じるようになったこと」

僅か5ヶ月間でYさんが変わり、その部下のAさんも、自ら改善案を出し、そしてそれに積極的に取り組むまでになっていました。

もしYさんが変わらなければ、Aさんの変化はもちろんなく、当初の状態が続けば、Aさんは辞めていった一人になっていたことでしょう。


そして、Aさんに起きた変化は、一時的なものではありませんでした。その後、Aさんは改善を継続してやりつづけその能力が評価されて、1年後には、新規事業部の技術担当課長に抜擢されたのです。

成長し続ける社員と、その逆に、仕事に面白さを感じることなく、やらされ感一杯で毎日を過ごす社員の違いのひとつは、自らの成功パターンを認知しているか否かです。

Yさんは、たった5ヶ月で、いつも部下とトラブルを起こす、トラブルメーカーから、やらされ感満載だった部下を自ら改善活動に積極的に取り組む部下ひ変革する力を手にしたのでした。

でも、これは驚くべきことでは実はありません。このような変化はこの企業にだけ起こったことでもないのです。このような変化を起こせる上司になるためには、マネジメント技術を手にすれば誰しも実現できるようになるのです。


さて御社は如何でしょうか?

御社には、以前のYさんのようなトラブルメーカーはいますか?
もしいるとしたら、そうした人によって、引き起こされる問題によってもたらせられる負
の影響はどんなものがあるでしょうか?また、その負の影響はあとどのくらい続きますか?