代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第219回 20歳リーダーがベテラン部下を操縦し、売上を爆伸びさせた 再現率97%の《論理×非論理》スイッチとは? 

 

マネジメント技術とは論理的な手法そのものなのか?── 先日、ある経営者の方から真正面からこう問いかけられました。もし「YES NO で即答せよ」と迫られたら、私の返答は少し回り道になります。なぜなら 「論理だけでは到底足りないが、論理がなくても成り立たない」 という、いささか歯切れの悪い真実がそこにあるからです。気合いや根性といった精神論に頼る必要はありませんが、最後にものを言うのは覚悟である──この一見矛盾した二つの要素が溶け合ったところに、本当のマネジメントの醍醐味が潜んでいます。

 

 そもそもマネジメント技術とは何でしょうか。一言でいえば 「人が思わず動いてしまう仕組み」を設計する科学 です。二十歳の新米リーダーでも、この技術を手に入れれば十歳年上の先輩社員を違和感なく巻き込み、一丸となって成果へ向かわせることができます。その背後で機能しているのは、論理的に配置された人間心理の設計図 にほかなりません。したがって、偶然や属人的カリスマに頼ることなく、再現可能なかたちで「人が動く」現象を再生産できるのです。

 

 この考え方は、高額商品を売り続けるトップセールスの世界と驚くほど似通っています。彼らは意識的か無意識的かを問わず、顧客の心理を段階的に揺り動かすを持っています。言葉づかいは千差万別であっても、契約に至るまでの心理曲線は不思議なほど同じ形を描く。だからこそ、彼らは毎回高い確率で契約を結び、しかも顧客から感謝されるわけです。その難度の高い「高額商品の販売」に比べれば、社内で部下を動かすことははるかに簡単──にもかかわらず、型を知らなければ成果は運まかせになってしまうのです。

 

 実際、先日わたしたちのプログラムを受講した超営業集団のリーダーたちは、一様に「店舗が過去最高の状態に躍り出た」と口を揃えました。驚くべきことに彼らが使ったのは、営業初心者でも扱えるほどシンプルな対話フレームだけ。それでも、人が動くメカニズムを正確に押さえていたため、短期間で目を見張るような成果が連発したのです。この事実は、技術が年齢や経験を軽々と超越しうることを雄弁に物語っています。

 

 ここまでを「論理」と呼ぶかどうかはひとまず置くとして、心理という単語に違和感を覚える方もいるでしょう。けれども「心理」は文字どおり 「心の理(ことわり)」 であり、そこには確かな法則が宿っています。トップセールスが同じ順序で人の感情を動かすように、わたしたちも 「人間なら誰しもこう反応してしまう」 という共通項を土台にして対話の型を組み立てる。だから、この段階までは十分に論理的だと言えるのです。

 

 ところが、組織の階層が課長・部長クラスに達すると、論理だけでは突破できない壁が立ちはだかります。それが 非論理 と呼ばれる領域、すなわち理念やビジョン、さらには数年単位で見据える長期目標の世界です。A=B、B=CゆえにA=C、と明快に示せないため一見すると霧に包まれている。しかし不思議なことに、このとらえどころのない旗印こそが組織の血流を一気に逆巻かせる燃料になります。歴史を振り返れば、聖徳太子の十七条憲法や織田信長の「天下布武」、ソニーやホンダの創業理念など、論理を超えた大義が人々に巨大なうねりを起こさせた例は枚挙にいとまがありません。

 

 もちろん「非論理」とは何でもありの混沌ではありません。組織研究は近年、企業に必要な非論理──たとえば ビジョンの言語化、ストーリーテリング、象徴的行動の設計──を体系化し、リーダーが後天的に学べるスキルへと昇華してきました。これにより、カリスマの個性に頼るのではなく 「誰でも鍛えれば使える技術」 として非論理を扱える時代が到来したのです。

 

 ここで強調したいのは、私たちの目標がカリスマを生み出すことではないという点です。カリスマ創業者が去った後に組織が崩れる例は、古来「長者三代続かず」と戒められてきました。創業期を駆け抜けたカリスマを引き継ぐのは、論理と非論理を統合した仕組みにほかなりません。二代目、三代目でも持続的に成長できる組織こそが、真に強い企業なのです。

 

 結局のところ、論理的な対話の型で再現性を担保し、非論理的なビジョンで人々の情熱に火を点ける。 この二つが噛み合った瞬間、組織は業界の慣性や外部環境の変化をものともせず、驚くほどの速度で次のステージへ跳躍します。もしあなたが「より強く、より速く、より高い組織」を本気で目指しているのなら、この 「論理 × 非論理」 を自在に操るマネジメント技術を、ぜひ手に取ってみてください。次の変革は、ここから始まります。