コラム「組織の成長加速法」-第233回 成果に“ムラ”のある社員が、5ヶ月連続達成した理由──「気のゆるみ」を個人の問題にしないマネジメント術
「あのFが、今月も予算達成しました!」
ある金融業の大阪支店長、Mさんと面談を始めたとき、Mさんは満面の笑みでそう切り出しました。
「木村先生、あのFが5ヶ月連続で予算を達成しました!来月も達成できれば、社長賞も夢じゃありません」
Fさんはもともと、特別に成績が「悪い」社員ではありませんでした。
ただ、良いときと悪いときの波が激しい、いわゆる「成果にムラのある人材」だったのです。歴代の支店長たちが手を焼いた存在が、なぜ今では「連続達成の常連」になったのか?
その裏には、多くの企業が直面している「気のゆるみ」という見えない敵への、新たな向き合い方がありました。
「できるはずなのに、なぜかやらない」──その原因は“気のゆるみ”にある
経営者や幹部からいただく相談の中で、最も多いのが「成果のムラ」に関する悩みです。
「できるはずの人が、なぜか数字を落とす時期がある」
こうした状況の背景には、誰もが経験したことのある“気のゆるみ”が存在します。一度うまくいったことで安心してしまい、次の行動が雑になる。ちょっとした油断が、気づけば大きな数字のズレになって表れるのです。
この問題は、多くのリーダーが「わかってはいるけれど、どうすればいいかわからない」と頭を抱えている部分でもあります。
特に、ある程度ビジネスが安定した「1→10」のフェーズにある企業では、現場の仕事がシンプルになるため、「やるべきことがわかっているのに、できない」という現象が頻発しがちです。Fさんもまさにそうでした。「できるけど、やらない」──この状態を放置すると、組織全体のパフォーマンスが不安定になってしまいます。
「たるんでる」では何も解決しない。問題は“仕組み”にある
「やる気がない」「危機感が足りない」「たるんでいる」
成果にムラのある社員を見ると、ついこんな言葉が口をついて出てしまうかもしれません。しかし、こうした「個人の内面の問題」として片付けてしまうと、組織はいつまで経っても変わりません。
なぜなら、気のゆるみは人間である以上、誰にでも起こりうるからです。経営者や幹部だって、例外ではありません。たまたま自分は乗り越えられているから見えづらいだけで、誰もが持つ普遍的な弱点なのです。
業績を上げるために必要なのは、個人の「気合い」や「根性」に頼ることではありません。“誰でも頑張り続けられる仕組み”をつくることです。
Fさんが劇的に変われたのは、彼自身の「内面」が変わったからではないのです。支店長のMさんが、「気のゆるみが起こるタイミング」を先読みし、先回りして関与するマネジメントに切り替えたからです。
成果を“再現”するマネジメントは「めんどくさい」から「楽しい」へ
「そんなこと、わかってるけど難しいんだよ…」
そう思われるかもしれません。正直に言うと、かつて私もそうでした。マネジメントは「めんどくさいもの」だと感じていました。指示したのに動かない、確認したのに忘れている、といった空回りが多かったからです。
しかし、マネジメントの技術を学び直し、「仕組み」による関与を始めてから、考え方が180度変わりました。
社員が自ら考え、行動し、成長していく姿を見ることが「楽しくて仕方がない」時間に変わったのです。
「今回は、やるべきことを継続できているな」
「こんなことまで、自分で考えるようになったのか」
そう思える瞬間が、マネジメントのやりがいへとつながります。この感覚は、私だけでなく、多くの経営者や管理職が同じように感じ始めています。
Fさんが5ヶ月連続で目標達成できたのは、偶然ではありません。それは、個人の頑張りではなく、「行動が続く環境」と「緩んでも軌道修正できる仕組み」を整えた、再現性のある結果です。
あなたの会社にも「Fさん」はいませんか?
もし今、あなたの会社に「本当はできるのに、成果にムラがある」社員がいるとしたら、ぜひ問いかけてみてください。
「その人が『やり切れる仕組み』は整っているだろうか?」
そして、もう一つ。
「成果の『継続』を前提としたマネジメントができているだろうか?」
気のゆるみは、個人の問題ではありません。それは、設計で乗り越えられるのです。
社員は変わります。変わらないのではなく、変われる仕組みがなかっただけ。御社でも「成果にムラのある社員」が「安定して結果を出せる社員」に変わる土台をつくってみませんか?