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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第133回 任せられる社員が足りない!やはりこの、、、

とある地域で業界NO1を狙う企業(NO1のポジションはもうすっかり射程内)のY社。このY社は、M&Aで、同業を傘下に収めました。Y社のM社長は、今後もM&Aを積極的に仕掛けて育方針です。

最初のM&Aが試金石になるということで、40億円規模の企業の役員も経験した人をヘッドハンティングし、そのM&A先に派遣しました。

その人とは、転職してもらう過程で何度も会食したそうです。何度も会い、お互いに夢を語り、お互いに夢を確認しあったそうです。こんなタイプの人は自分の会社にはいない。社外には優れた人がいるもんだと、社長はすっかり魅了されました。すっかり意気投合し、社長に請われるまま、転職が決まりました。彼なら安心して任せられるということで、M社長は、大船にのった気分でいました。

ところが、そのM社長の意に反して、彼に任せたM&A先では、トラブルが頻発します。顧客からのクレームが増え、勤怠の乱れ、書類の提出遅れ、そして、意欲が高く本体の幹部候補にもなり得ると目されていた社員2人の退職。

M社長は、任せた以上はしばらく様子を見ようと考えていたそうです。当然多少の混乱はあるし、人が辞めていくことも、ある程度折り込み済みでした。しかし、M社長には不満があったのです。確かに任せてはいたのですが、報告、相談がなかったのです。社長も実際に言葉を交わしたことのある、有望な社員の退職も後から、事後報告として、書類が回ってきて知ったのです。

社員という資源を手に入れることが最大のM&Aも目的だったので、他の社員はともかく、この2人が辞めることに、社長はとても残念に思っていたそうです。とはいえ、相手のプライドを気づけてはならないと、注意しながら、辞めた2人の退職理由を聞いたそうです。その時が転換点だったと振り返ります。

2人の社員が辞めた理由は、「混乱の中で、行き違いがあったようだ」という答えでした。
何か人ごとのような口ぶりに、信頼を寄せていたその責任者に不信感を感じるようになった
と。


任せて1年が立とうという頃、今度は社内の管理部門から、社長の耳に、管理本部のルールから逸脱して、注意しても改善が見えずにこまっていること、経費も売上が減っているにもかかわらず増えていること、等々問題点が入るようになっていました。

意を決して、社長がM&A先の事務所を連絡せずに訪問した時の驚きを当時の事務所の状況を
細かく描写しながらM社が語ります。相当ショックだったのでしょう。

2階の管理部門に足を踏み入れた時に、おしゃべりに興じ、けたたましく笑い声を上げていたそうです。社長の顔をみるなり、顔を引きつらせ、わさわさと慌てる様が目に焼き付いていると。

再び1階の営業部門に戻り、課長2名を誘って、会社の社屋の並びにある古い定食屋で昼食を取りながら、話を聞いていると、責任者があまり社内にいないことが分かってきました。どうやら、本社で打ち合わせをしたり、顧客訪問をしていることになっているようでした。

そこで、社長は、もう彼に任せることはできないと決めたそうです。事業部長という肩書きはそのまま、彼の役割もそのままで、副部長職を置き、そこに本社から送り込むことにしました。図らずも、事業部長のズブズブぶりが明かになります。同業出身で、分かっているはずだったのですが、営業が困り果てて、事業部長の彼に指示を仰ぐべく相談しても、のらりくらいで、具体的な指示がなく、結局、副部長から手取足取りやり方を説明することになりました。

既に1年近くになるのに、買収時に一番の課題だっった営業力の強化がほとんど進んでいないことがわかりました。事業部長が、営業のプロセス改善は何度も手がけてきたというので、敢えて本社のやり方を押しつけずにいたのです。

確かに新しいプロセスは事業部長から提示されたようでしたが、断固とした切り替え指示も期限もなかったということで、結局今まで通りのスタイルが続けられていたのでした。更に、相変わらずよく分からない外出が続いていました。

社長もあまりに、放置し過ぎた事を反省して、理由をつけてこの事業部長、月1回の報告ミーティングをもつことにしました。その報告ミーティングが始まって3ヶ月目で、本人から辞表がでてきたそうです。

社長としては渡りに船ではあったので、強く引き留める気はなかったそうです。が、自分があれほど信頼した人がこのような有様になったのか解せず、その理由を確認するために、詳しく話し聞いて見たところ、、、

その方は、肩書きこそ、40億円企業の役員経験をしていましたが、出来上がった組織の参謀という位置づけで、役員についたそうです。よくよく聞けば自ら組織を動かしたりした経験は無かったことがわかりました。

社長は、「彼は出来る人」と思ってしまい、どんな困難をどんな風にくぐり抜けてきたかという確認を怠ったのでした。彼は、「評論家的に、こうすれば出来るはずだ!」は得意だったのですが、実際には目の前の部下一人を動かすことができなかったのです。

もちろん、本人はそこに引け目を感じていました。そのため、指示は丸投げで、だんまりを決め込みました。後は外に出て営業活動?をしていたとかなんとか。


M社長は、「だまされた」と思ったそうですが、自分の見る目のなさが原因と反省していました。小さな傷ではなかったですが、取り返しがつかないほどの大きな傷にならずに済んだことを幸運と捉えて、前に進もうとされていました。

しかし、M社長は、当初のM&Aで広げる目算が崩れて、そのことのほうに落胆していました。実際に、緊急対応で、本社の営業部長をM&A先に派遣して立て直しつつはあったのですが、本社の売上の伸びが鈍化するという状況に陥ってしまったのです。

そんな矢先、M社長が弊社に相談にいらっしゃったのでした。その事業部長が辞めてまだ日が経っていなかった頃で、「いい話には裏がある」そんな気持ちにも支配されながら出向いたと、後で、冗談混じりに教えてもらいました。実際、弊社に相談に見えたM社長は、とても警戒されている様子でした。

M社長から課題をお伺いさせている中で、社長はポツリ、ポツリと今回のいきさつをお話しいただきました。そのM社長がその場でおしゃったのが、「このままでは、M&Aを更に続けることはできなくなります。任せられる社員が足りない。やはりこの部分が解消できないと将来が描けない」という一言。

そこから、すぐに、M社長も含めて、幹部4名のプログラムが始まりました。50代の技術部門のトップ、40代の取締役2名が参加。頑固で知られた50代の技術部門のトップが、率先して部下との面談を進めるようになり、直下の部長と課長もそれぞれの部下への指導計画を作り、取り組むようになりました。

北と南でそれぞれの地域を統括する取締役2名も、ついつい後回しになっていた業務改善に取り組むようになり、営業利益率が一部では5%以上改善しました。自分の会社でも、確かに効果でると実感され、追加で実施することになったのが営業部門の4名の部長と課長。技術部門の課長と主任4名が対象として、プログラムが続いています。

営業部門の4名の中の2名には、計画中のM&A2社を任せられるようにと社長は心に決めて選出されました。


日本国内の事業で売上げを増やすためには、今後M&Aの選択肢は当たり前のものになってきます。しかし、M&Aが広がる中でも、成功率は10%以下といわれるのです。なぜか。結局、M&Aした先の売上げを伸ばすことができないからです。

一時的に売上げの積み上げはできます。しかし、マネジメントがうまく行かず、蜘蛛の子を散らすように買収先の社員が抜けてしまえば、そのM&Aは失敗事例の仲間入りです。

もちろん、辞める人達はいます。場合によっては、辞めてもらわないといけない人達も多くいる場合もあります。その結果、一時的に売上げが減ることだって避けられません。しかし、もし、経験値の低い社員を、ある一定の期間をもって引き上げられるという技術が社内にあったら、必ず回復させ、それ以上に拡大させることができます。

べったり張り付いて、指示を出し続けなくても、自ら考え自ら問題を解決する社員を、着実に創れる技術を社内にもっているか?が鍵です。

これさえあれば、現在の事業で勝ち抜いている企業が、一気にその企業規模を加速するための、強力な武器を手にすることになります。

Y社が特別なわけではありません。任せられる幹部、任せられるリーダーを育成する手法を手にすれば御社でも必ず実現できる未来です。


さて御社の場合は如何でしょうか?
M&Aを展開しようとした時に、その企業を任せたい社員は、十分に育っていますか?

それとも、現状を回すのすら困難な状況で、任せる社員の不足している状況をこれからも続け、拡大するチャンスを潰し潰して続けていきますか?