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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第130回 あいつはやる気がないので辞めさせてください!

法人向けのサービスを手広く展開する会社の執行役員のDさん。社長からも将来を期待され、有力な後継者候補の一人です。そのDさんは、この1年で別人のように変わった方でもあります。

Dさんの業界の定説は、一般企業に比べて離職率が高く、これは業界の特性上仕方がないとされています。「10名いれば8名は、いわゆるやる気のない奴ら。どのみち3年で辞めていきます。」とDさんは、平然と言ってのけました。

それを聞いて、私はすかさずDさんに質問しました。「その状況がそのままで変わらないならDさんは何のための上司なんですか?」Dさんは、一瞬にらみつけるような目をしましたが、すぐに作り笑いをして「そのために木村先生に来て頂くことになったのですよね。」とかいってその場をやり過ごしました。

Dさんはなかなかの狸。鎧をしっかり身にまとって、ここまで昇りつめたのでしょう。そこから、しばらくDさんは、しばらく私との面談でも取り繕いを続けました。

改善行動は、将来をより良くしようとする意識がないと生まれません。更に言うなら、現状維持しようとする意識よりも、将来を良くしようという意識が高くならなければ、改善というのはかけ声だけで終わります。改善する意欲が現状維持よりも大きくなければ改善の一歩が踏み出されることはないのです。

Dさんは、今までの自分のやり方、在り方、を維持しようと必死に抵抗していました。が、つい観念する日がやってきました。


人が成長するための理論はもう確立しています。その内容をDさんとも共有しました。Dさんの過去の体験に照らし合わせても、「まさにその通りだった」とDさんも納得した様子。

その後で、人の成長を遮る上司の行動、言動はどういうものかも明確にしてDさんと共有しました。その時、Dさんの顔はミルミルこわばっていきました。

その日の面談でもDさんは、取り繕い、普段通りを装いましたが、その日の夜、Dさんからメールがありました。

そのメールには、Dさん自身が、まさに部下の成長を阻害する元凶にあったことを認め、部下の成長を支援しつつ、業績を上げ続けるようになりたいし、それを実践できるように絶対になる、という旨の力強い意思表明が綴られていました。

その後、Dさんの部下への接し方は大きく変わりました。Dさんの部下達は、Dさんの態度の変化に最初はドキマギしていました。それが3ヶ月過ぎた辺りから、Dさんの問いかけに、積極的に答えるようになっていきます。

匿名のアンケートでも、Dさんとの面談は自分のためにとてもなっているし、これからも続けたいという超えが9割を超えたのです。


これまで企業の幹部と呼ばれる人の口から「あいつはやる気がない」「あいつは考えない」「あいつは自分で解決しようとしない」といった言葉が出るのをどれほど聞いたでしょうか。

挙げ句の果てに、「あいつはやる気がないから辞めさせてください!」なんて真顔で社長に直訴する役員も一人や二人ではありません。

企業の規模、業種業態に関係なく、同じような言葉が飛び出すのですから、これが普通の反応なのでしょう。確かに私自身かつて、同じ言葉を使っていたことを思い出しました。

任せられる部下、任せられない部下、という区分けで部下を分けてみると、これまたどんな企業、組織でも、任せられない部下のほうが圧倒的に多くなります。

だからこそ、社長と社員の間に、幹部社員が必要に成っているのですが、どこかでこの幹部社員の役割がうやむやになってしまって、自分の役割を勘違いする幹部社員が続出しているのです。

あらゆる企業の幹部社員の仕事は、任せられる社員を増やすこと。幹部社員の仕事の時間の多くの時間は、一人ではまだ心許ない部下達に向けられるべきです。それなしに、任せられる社員が増えるワケがないのですから。

出来てない状態を出来るようにするのが幹部社員の一番大切な仕事。それなのに、「出来てない状態」の人を捕まえて、「なんでお前できてないんだ!」と言って「出来てない状態」の人に腹を立てるというのは、もはや滑稽な紙芝居です。

ちょっと別のことに置き換えて考えてみます。米作りをしている農家の人は、種籾を見て、「なんでまだ種籾なんだ!?」と文句は言いません。きちんと世話をすれば、種籾は芽を出し、苗となり、やがて一粒の種籾が100倍以上の稲穂となって大きな成果を手にするのです。

もし、種籾が、種籾のままだとすると、種籾に悪態をついて時間をやりすごすことなどありません。芽を出すために、水やりが足りないのか、肥料が足りないのか、はたまた、その他の環境に改善の余地か゛なにかあるのではないかと一生懸命考え、次々と手を打ちます。これが普通のことですし、当たり前のことです。

組織に入社してくる社員というのは、いわば種籾です。適切に扱えば、育ち、大きな成果をもたらしてくれます。そのやり方も、試行錯誤する必要はなく、ただ、やるべきことをやるべき順番にやるだけ。


一方、やり方を知らないと、種籾の状態に変化がないことに、不安になり、やがて不満に変わり、自分の職務をわすれ、その不満の解消にやっきになり、種籾に罵詈雑言を浴びせ続けることになります。

それがどれだけおかしなことかすら、気がつかず、「籾のままだなんて役に他立たない、捨ててしまえ!」ということすら平気で言ってのけるのです。

出来ない部下は、困った人ではありません。寧ろ、出来ない部下に悪態をつくだけの幹部こそが、困った人です。

繰り返しますが、今でこそ私もこのように考えられるのですが、以前は、まさに出来ない部下に対して悪態をついていました。だからこそ、出来ない部下に悪態をつくだけの幹部の気持ちもよく分かります。


これまで様々な規模の会社、多種多様の業種に関わり、そうした会社の経営者と幹部、1000名以上と出会ってきて分かったことがあります。それは、ほとんどの会社の幹部は部下のことを本心から蔑んでいるような人はいません。ただ、正しい部下との接し方を知らないだけでした。

Dさんもそうでした。ご自身のことを「元々本当に出来が悪く、社長にとても迷惑をかけた部類だった」とよく口にしていました。自分も本来は怒鳴りつけている部下と変わらなかった、ここからそう思っていたのです。

ところが、Dさんの成功体験が邪魔をします。Dさんの成功体験は、「ダメだった自分でも、社長に毎日のようにこっぴどく怒られても、言われたことを愚直にこなし、やり切ったことで、いろんなことを任せてもらえるようになった。」というもの。このDさんの成功体験は、「ダメならダメなりに、もっと努力するべきなのだ!」という信念に紹介していきます。

このように自分に厳しく成功を勝ち取った人は、あまりに軽薄にみえる部下達を見ているとついつい堪忍袋の緒が切れて、切れて、すり切れて、いつも怒鳴り続けるようになってしまうのです。会社の幹部となる人は、ほとんどの場合がこのケースいっても過言ではありません。

そして、知らず知らずの内に、「最近の若者はまったくなっとらん」という論調にすっかり慣れてしまい、いつのまにか「部下の成長をむしばむ元凶」になり果てるのです。

自分自身にとってもマイナス。部下にとってもマイナス。会社にとてもマイナスです。この状態に陥った幹部社員は、まるで蟻地獄に落ちた蟻のように、自ら蟻地獄からでることはなかなか出来なくなってしまいます。これもまた、1000人以上を見てきて実感しています。


蟻地獄に足を取られて落ちてしまった蟻は、本来何も欠点はありません。もちろん、歩くことも出来るし、上に登っていく力もあります。でも、蟻地獄から抜けだことはできません。そのやり方が間違っているからです。でも、それに気づくことはありません。ただ必死でもがき続けるだけなのです。

Dさんもそうでした。プレーヤーとしては一流でしたし、会社のことも人一倍よく考えていました。Dさん自身のパフォーマンスには全く問題がなかったのです。ただ、やり方が間違えていたのです。

蟻地獄に小枝を投げ込むと、蟻はすぐさま、小枝を伝って、蟻地獄からでることができます。私がDさんに渡したのも、この小枝と同じように、部下を引き上げ、着実に成長に導く手法です。

Dさんはその手法にのっとって、あっという間に、蟻地獄から抜けだし、組織で成果を上げるということをやってのけたのです。これはDさんにだけ起こることではありません。どんな蟻にも小枝を渡すと、見事に抜け出るが如く、誰にやっても、この技術は効果を発揮するのです。


さて御社の場合は如何でしょうか?
まだ、やる気の無い部下にして、不満を持ち、部下に対して毒づいているでしょうか?

それても、やる気の無い部下に対して、正しい手法を用いて活かす術を身につけているでしょうか?