代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第140回 こんな状況でも最高売上げ更新する企業の共通点

先週ある企業のH部長と定例の面談の日のこと、課題であった営業部門の強化の状況を聞いていると、「うまく行き始めると思ってもいない問題も出てきますよ。」というのです。私が、「もしかして?」と尋ねると、「はい、今月も、最高更新です」と、本当に嬉しそうに満面の笑みで答えられました。

「それって、最高売上げ確定ってことですよね。」と更に水を向けると、「はい、まだ三ヶ月ありますけど既に最高達成です!」とまた笑顔。

プログラムが始まる半年前、M社長と話した時は、営業部に配属された4名の新卒社員の立ち上がりが悪く、営業部門の数字が思わしくないという相談を受けました。


営業部門のトップのH部長、Y課長、S係長と面談をさせてもらったところ、問題は、新人の立ち上がりの悪さだけではありませんでした。注目される現象として、”新卒の立ち上がりが悪いこと”は確かにありました。が、それは、組織の問題によって生み出された現象のひとつに過ぎなかったのです。

営業部が陥っていた問題は、2-3年前までは一本調子で二桁の伸びだったやり方が、通用しなくなったことした。そしてその原因は、外部の環境変化ではなく、組織運営にあったのです。


H部長は大変エネルギッシュな方で、社長と二人三脚で会社の成長を支えてきた功労者でした。関東から、地方大都市圏へと会社の展開が始まる過程で、営業部門は、完全に社長から切り離され、H部長に任されました。

社長の期待に応えるべく、H部長は、毎年目標を必達を大前提に厳しい組織運営を続けてきました。既存顧客とのパイプをつなぎ止めることに必須な業界慣習を尻目に顧客ニーズの拾い上げ、新しい提案で、新規顧客を数を飛躍的に増やしていったのです。

ところが、このところ、新規開拓の件数が減り、売上げの伸びが急減速していたのです。


H部長が、業界の慣習によって生み出された、顧客ニーズの洗い出しの手法によって飛躍的に顧客が増えていきました。問題の解決策として提案したサービスが当たり、シェアを急速に伸ばすことができたのです。

顧客の層が厚くなったことで、顧客企業が抱える課題の種類が広がっていきました。H部長の場合は、顧客の課題を聞けば、的確な解決策を数秒でひとつだけではなく、いくつかの観点から2つ3つと提示することができました。

H部長直属のY課長はH部長と同等の解決策の提示ができていましたが、Y課長以外の3人の課長は、それができず、H部長に毎日のように怒鳴られていました。

結局、顧客の課題を係長と営業メンバー8名が集めてきますが、適切な解決策を出せるのは、4名の課長ではなく、H部長とY課長だけでした。


どの浴槽にも排出口がありますが、排出する量よりも、2倍、3倍の量の水の湯を注げば、やがて浴槽からお湯が溢れはじめます。

まさに営業部で起こっていたことは、この浴槽に等しい状態で、持ち込まれる課題に対して、対処する量が足りず、顧客への対応が出来ない状態になっていました。

この問題の根源は、H部長の組織運営スタイルにありました。H部長の組織運営スタイルはいわゆるトップダウン。顧客に最善最適の解決策を提案するがモットーでした。

H部長と同等の判断を下せる人には任せるのですが、4名の課長の中で、1名の課長だけにしか任せることができてなかったのです。


よくよく聞いてみると、H部長は、その1名だったYさんを教育したように考えていたのですが、何度聞いても、どのようにそれを実現したかをH部長は答えることができませんでした。

H部長が任せたいけど、任せられない3人の課長に対し、普段どのように接しているかを聞いてみると、「課長3人の持ってきた案にひとしきりダメ出しをし、H部長の案を授けている」というのでした。

H部長からその話を聞いた後に、今度は3人の課長に聞いてみました。すると、H部長に対しての不満が異口同音に語られました。というのも、過去と同じような案件に遭遇した時、H部長に指示された解決策を用意して、H部長に提案しても、結局ダメだしされるというのです。ところがYさんが同じよう対応する場合は、なぜかは分からないが、YさんにはOKがでるのだとか。H部長がお気に入りのYさん以外は、Hさんも部長から拒絶されるのだという見解でした。


H部長も、現状を良しとしているわけではなく、なんとかして、現状を打破しようと思っていました。ところが、任せたい気持ちはあるものの、部下である3人の課長に具体的にどのようにしたら任せることができるようになる方法が分かっていなかったのです。

3人の課長に任せられない理由を聞いたところ、「顧客に迷惑はかけられない」という返事でした。そこで「いま、顧客をお待たせしているのは、顧客にご迷惑をかけていますよね。」と私がお伝えすると、H部長は「はっ」と顔を上げて、「そうなんです」といってうなだれたのでした。


プログラムをスタートして、4ヶ月で、状況は一変しました。3名の課長が、Y課長同等に課題解決をすることができるようになったのです。

浴槽の排出量が増え、入ってくる湯の量と同等になったのです。排出量は更に増えていきました。そして、浴槽のお湯の量が減り始めたので、今度は入ってくる量をもっと増やすことができるようになったのです。

新卒で配属された営業マンも、嬉々として顧客開拓に励むようになりました。新卒を担当する係長もまた、短期間に部下の行動、成果を返る方法を身につけたためです。当初社長が掲げていた問題は、わずか数ヶ月で解決してしまいました。


組織が拡大する過程で、H部長が抱えたような問題は、よく起こります。ただ、この状況は、自然発生的に起こることです。対処方法を知っている人はほとんどいません。

誰もが陥るのは、H部長と同様、作業量だけを増やそうとします。しかし、作業量を増やすことでは、顧客企業がその企業を選ぶに値する価値を提供できません。

そもそも、この原因に気づくこができずに、停滞状態から抜け出せないリーダーは少なくありません。


さて、あなたの会社の場合は如何でしょうか?

組織全体の課題解決力を増やす手法を理解して、企業価値を維持し、売上げを拡大
していますか?

それとも、停滞の状態から抜け出せず、組織の中に怒鳴り声がこだましている
状態を続けていますでしょうか?