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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第141回 目の前の売上げと同じく、○○を上げない企業は滅ぶ

「50億円になった時どんな組織にしたいですか?」と、会社の規模を倍にしたいとおしゃったH社長に聞きました。「どんな?そ・し・き!?」とつぶやく社長に「先ほど上げていた、組織の課題は、解決されているとしたら?」

とイメージ化するお手伝いをすると「そうですねぇ。F部長、Y部長、それからK部長には、グループ会社のトップになっていてもらいたいですね。」と、話ながらドンドン嬉しそうな顔になっていきました。

H社長率いるT社は、高いサービスを売りにあまたの競合から抜け出した筋肉質の強い企業です。ここ数年はすこぶる順調だったのですが、一部の領域で、競合と競り負けるようになってきたのです。

まさにイノベーションジレンマの世界だと、H社長は、幹部の尻を叩くのですが、「対策を打ちます」という言葉から半年以上、まるで状況が改善しない状況で業を煮やした社長がご相談にみえたというわけでした。


脳科学者によれば、私達の脳というのは、体の部位の中でも、もっともエネルギーを消費するところ。脳を野放しにすると、エネルギーの消費が、今の何倍にもなるとのことでした。

人類の歴史の中で圧倒的に長い期間、食物は常に足りない状態で、脳は省エネ化する必要があったのです。

2才児、3才児の脳は、発育段階にあるので、脳は野放し状態です。すると、自分で歩けるようになった子供達は、新しい発見、喜びを求めて、何でも口にれてみて、手で触ってみて、大喜びの連続です。これは、脳が野放しになっている状態です。

ところが、これでは、エネルギーの消費が拡大する一方です。そこで、脳は進化しました。毎日同じおもちゃを見て、新しいおもちゃをみるごとく大喜びしないように脳は省エネ化するようになったのです。

これを私達は「慣れ」と言います。「慣れ」ると、喜びは少なくなり、惰性になっていいます。これは、自然ななりゆきだというわけです。

惰性の先にビジネスの成功はありません。困った問題です。


自然な流れである「慣れ」に、経営者はどのように対抗するべきなのでしょうか?また、そもそも、それは可能なのでしょうか?

結論からいうと、成長している企業は、この「慣れ」を打破している企業です。だから、世の中に、いくらでも事例はあります。

T社のように「慣れ」に浸ってしまい、成長から停滞に陥った企業ですら再び成長軌道に乗ることももちろん可能です。

ここで大事なことは、経営者はその方法を知っているかということです。ここに、イノベーションは必要ありません。ただ、その方法を知っているか知らないか、ということです。


T社では、コンサルティングを始めて4ヶ月目に明確に違いが見えてきました。まず2人の部長とその組織に明かな変化が見え始めました。

報告が中心の会議だったのが、議論が中心の会議になりました。会議の基準が変わったのです。

そして、営業部門では、新規開拓数が、わずか4ヶ月で1.3倍に増えました。営業の基準が変わったのです。

H社長も最初は半信半疑でした。ところが、実際に2名の部長が短期的な成果を上げたことから、残りの1名の部長のことも安心して見守っていました。

残ったK部長は、技術部門のトップを務めていました。社長からは再三再四過剰在庫を指摘されていましたが、この在庫は減るどころか、徐々に増える一方。

K部長は、工場の稼働率を下げたくないという気持ちが強く、過剰在庫の指摘を受けて、改善策を出したものの、そのまま手つかずの状態が続いていました。

H社長は、4,5年間指摘し続けてダメだったことが、いくら何でも、数ヶ月改善できるとは考えていなかったのです。

ところが、5ヶ月目には、在庫が減り始めました。これにはH社長、”信じられない”という顔をしながら、変化後の数字と過去の数字の比較したものを見せてくれました。5年言い続けて変わらなかったことが、変わってしまったのですから。

T社はコンサルティング開始して1年後、過去最高利益を叩き出します。その時のH社長の言葉は、「計画通り、最高益達成できました!」という言葉でした。僅か1年の内に、「ホントに変わるの?」から「当たり前に変わる」への変化でした。社長のマネジメントの基準も変わりました。

その後、T社では、次世代リーダー研修が2年継続しました。M&Aも成功し、M&A先の1社での導入も来期から始まります。


残念ながら、このやり方を知らずに、成長軌道に乗れない企業は、急速に企業価値が劣化していきます。

組織の場合は、基準を上げ続けなければ、生き残るころは不可能です。顧客の基準は年々引き上がっていきますので、基準を引き上げられない組織は、顧客のニーズに応えられなくなってしまうのです。

こうして順を追ってみてくると、これほど当たり前のことが多くの企業で見落とされていることに驚くばかりです。

しかし、多くの企業が見落としてしまうのにも、これまた理由があるのです。まさにT社が経験したことがドンピシャな事例。

T社のように過去上手くいったやり方を持っている企業は、慢心してしまうのです。一度上手くいくと、自分は顧客基準を満たしてるという勘違いをしてしまいます。成功体験は仇となる。というのは、言い古されているのですが、この勘違いは、多くの人を盲目にしてしまいます。

一度は顧客の基準を満たし、上手くいったとしても、そこで止まったら終わりです。すぐに顧客の基準からズレていきます。すぐさま手を打たないと基準はズルズルと下がる一方になります。

また厄介なことに、基準のズレといのは、気づかれにくい。目に見えないからです。目に見える売上げという指標に明確に現れるまでには時差があります。

例えば、多店舗展開している企業の場合、前まで上手くいっていた、既存店舗の売上げが下がるということがあります。顧客の基準を満たさなくなり、売上げの伸びが止まります。数字で減少傾向が見えるころには、大手術が必要になるという具合です。

この状況を回避するには、組織の基準は引き上げ続けることこそが当たり前にしなければならないのです。

組織の基準を上げ続ける方法は、ホントに些細な仕掛けでできます。知らないと、知っているの小さな小さな差が、成長か衰退化の差となるのです。


慣れについて知っておかなければ成らないことがあります。これだけ多くの企業人と出会ってきて思うのは、「慣れ」の状態を放置すると、「慣れ」の状態から抜け出すのは急速に難易度が増していきます。

まるで、流砂に填まってしまって身動きが取れなくなるが如くです。流砂といのは、砂漠にあると言われる自然にできた落とし穴です。そこに足を踏み入れると、自分の重みでドンドン砂に埋もれていき、やがて完全い砂の下に埋没して、命が奪われます。

人はどんな状況にも慣れてしまいます。例えば、「喜ばない」ことにも慣れます。発見や、変化が無ければ喜びは生まれない。つまらない。でも、それにすら慣れてしまいます。こうなるとここから抜け出すのは、相当なエネルギーと時間の投資が必要になります。

放っておくと、新しいことに挑戦する喜びを失った社員が、大量に増殖してしまいます。組織が硬直化する原因のひとつです。

経営者として、組織をこのような状態にしたい人は誰もいません。何もしなければ、これは実際に起こることです。今すぐ取り組めば、少しの時間とエネルギーで、真逆の状態を作り出せるのです。


さて、あなたの会社の場合は如何でしょうか?

組織のあらゆる基準は当たり前の如く引き上がっていますか?

それとも、知らず知らず、低下している状況にも気づいていない状況でしょうか?組織の基準が低下し続けることで失うものは何でしょうか?