代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第98回 圧倒的成果を上げる幹部の1年前の秘密

上場を間近に控え、急速に拡大する企業の事業部で圧倒的な成果を上げるA部長。先日第2期のコンサルティングでお邪魔をした際に、エレベーターホールで朝ばったり出会いました。

全国飛び回っているA部長が珍しく午前中本社にいるとのこと。昼食を御一緒することにしました。昼食の時間、A部長から近況を伺っていたのですが、A部長から出てくる話は、ほとんどが部下の話。

部下の方々の活躍ぶりが楽しいとのことで、「彼女は前はこんな感じだったのが、今はこんな活躍をしてくれている」「あいつはこうだったのが、今ではこんな仕事をするまでになった」というのが次から次へと。あんまり楽しそうに話すもので、私もついつい食事もそこそこに聞き入ってしまいました。

その話の締めくくりはこうでした。「教えてもらったやり方を順番にいろんな部下に試していってるのですが、面白いほどにうまくいくんですよ。その変わりようを見るのが本当に嬉しくて。」

笑顔で話すA部長の話を聞きながら、改めて「こんなに変わるもんなんだなぁ」とお会いした1年前を振り返って思ったのです。


私がA部長とお会いしたのは、Aさんが、降格人事でまだA課長だった頃のことです。(部長、課長という呼称が入り乱れるので、ここからAさんという表現にします。)この会社では、それまで降格人事というのはなく、とても珍しいことでした。

こういうと、どれほどの失敗をAさんが経験をしたか想像していただけると思います。会社始まって以来の最大規模の赤字案件の責任者がAさんだったのです。

当時の周りからのAさんの評判は惨憺たるものでした。

・ミスをした部下を詰めまくり、挙げ句、相手が休日だろうがお構いなしに、電話、メールで指示をだす
・Aさんの意図を理解できない部下がいると、不機嫌な態度丸出しであからさまに嫌みを言う
・場所も時間も関係なく、怒鳴りまくし立てる
・同じ話を繰り返す。1時間以上説教をし続ける等々

プロジェクトの混乱の一因には、Aさんのやり方に耐えられず、途中離職者が相次いだため、
現場の混乱に更に拍車がかかり、ミスがミスを誘い、大規模な不具合につながったこともありました。

こうした前評判を聞いていたので、Aさんに出会う前は、どれほど偏屈な人なんだろうかと思っていました。ところが、最初の面談で、自分の予想は裏切られることになります。


Aさんの仕事にかける情熱は本物でした。会社のことも、顧客のことも、とても真剣に考えていました。その考え方には私も共感するところが多かったのを覚えています。

実は、経営幹部のコンサルティングをしていると、Aさんのような方に遭遇することは少なくありません。コンサルティングをする経営幹部の方々には、Aさんのようにその会社の中で誰よりも、会社の将来を考え、サービス、商品の質の向上に心を砕き、部下の成長を心から願いながらも、ひどい悪評を持つ人が少なからずいます。

自分にも厳しいのですが、部下にも厳しい。ただ、その厳しさの発揮の仕方が、常軌を逸しているため、会社に実質的な損害をもたらすことにさえなるのです。

仕事に対するストイックなまでの考え方をもつ人は今の時代は少数派。本来ならば、会社にとっては宝のような人材なのですが、対人対応のまずさがその人の良さを帳消しにしてしまいます。

プラスとマイナスでゼロならまだいいのですが、会社が時間とお金を投下して採用した
貴重な社員が辞めていく原因として、その人の名前が何度も何度も挙がってくるため、厄介者という烙印を押されることもあるのです。

Aさんの場合も全くこれと似た状況でした。Aさんは、1人の作業者としたら、一点の曇りもなく、ハイパフォーマーなのですが、部下をもつリーダーとしては最低最悪でした。Aさんの元に配属されると、マイナス面があまりに大きすぎて、部下の目から光が徐々に失われ、やがて一抜け二抜けとプロジェクトから去る。そして、その後、その多くが会社を去って行くのです。


これまでの私の経験からいうと、半年間のコンサルティングの後に、一番成果を上げる人はAさんのような属性をもつ人です。

半年間で「組織をして成果を出す」リーダーとなるためには、新しいマネジメントの概念をインストールするところから始まります。継続的に成長をする組織は、1人または数人に頼るという形式をとりません。組織で成果を出す形式をとります。これを作り出すためには、間違えた努力では行き着くことはまずありません。

それを知らなければついつい足を取られてしまう窪みや茂みが、組織作りを行う道のりには潜んでいます。Aさんがそうだったように、知らぬが故に、よかれと思ってやっていることが、実はその窪みや茂みに足をとられ、知らず知らずのうちにドツボにはまってしまうことになるのです。

しかし、こうした窪みや茂みは、無秩序にあるわけではなく、あるパターンで存在しています。ですから、そのパターンを学習してしまえば、気合いも、特段の経験値もなくても、この窪みや茂みを避けて進むことができるのです。

また、部下の成長を加速させるためにとても効果的な道具もあります。その道具を手にすれば、狙い通りに、期待するスピードで部下の成長を、意図通りに作り上げることができます。今まで3年かかっても全く進まなかったことが、わずか3ヶ月で進んだり、5年間も続いていた課題が4ヶ月で解消されたり、やっている本人もびっくりするようなことが起こります。

しかし、ほとんどの人はこの道具があることすら知りません。すると、素手で立ち向かうことになります。狙い通りに部下の成長を創り出すことは、道具をもってしても、1日2日で成果が上がるようなものではありません。素手で取り組むとなると、ひたすら試行錯誤の積み重ねをしても、なかなかほとんど変化を創り出すことはできません。

とはいえ、部下が動いてくれない状態を放置してはおけません。そこで、押したり、引いてみたり、叩いてみたり、投げてみたり、こじ開けてみたりとあの手この手で自分なり試し、ダメならまた押して、引いて、、と進めていきます。

そんな中で、偶然に部下が動くことがあると、その偶然に頼っていくことになります。この偶然が多くは、「怒鳴る」、「怒る」という行為です。ある時、部下を怒鳴ったら「動いた」、怒ったら「動いた」。すると、これが学びになります。「そうか、怒鳴れば部下は動くんだ!」というわけです。

ところが、ご承知のように、同じように怒鳴ってもやがて部下は動かなくなります。そのとき、多くの人が取る行動は、怒鳴るのを辞めるのではなく、もっと怒鳴るという方法です。
部下を動かしたい一新で始まった部下を動かすための探求が、誤った答えに行き着いた時、本人と組織の破滅が始まることになります。


Aさんの話に戻ります。
半年間かけてAさんは、組織で成果を出すための方法論を身につけ、狙い通り部下の成長を創り出す道具も手にしました。その後、Aさんのチームの快進撃が始まりました。この過程を知らない人にしてみれば、魔法のように見えるのですが、何度もお伝えしているように、特定の人にしか使えない怪しい代物ではありません。誰もが身につけられる形式知であり、誰もが使えるシンプルな技術です。

Aさんのように、仕事に情熱を持ち、会社を思い、顧客を思い、部下を思う人がこの形式知と技術を手にした時、驚異的な変化をわずか半年間で創り出すことになります。

事実、その後も、狙い通りに部下の成長を加速させ続けました。Aさん自身が変化にも周りは目を見張りました。それ以上にAさんの部下の変化が目覚ましかったのです。

指示まちだった社員が打ち合わせの際、ドカスカ提案を持ち寄るようになったり、空気のように漂うが如く寡黙だった社員が、嬉々として自分の課題を明らかにし、自らその解決策をみつけ、課題の解消に向けて動き出したり、何事にも遠慮がちだった社員が、組織全体の課題解決に率先して取り組み始めたりと、連鎖的に、Aさんの部門の社員達の変化が継続したのでした。

Aさんの部門の利益率が他の部門の2倍(社内圧倒的NO1)になったのも、部下の行動変化を目の当たりにすると、驚くに値しないと思えてしまいます。


さて、御社の場合はどうでしょうか?

部下をつぶしていくリーダー、部下の目から光を奪うリーダは、御社にいませんか?
そのリーダーは改善するのでしょうか?それとも、変わらずに人が辞め続けるのでしょうか?
それても、そのリーダーさえも辞めていくのでしょうか?

選択肢は他にもあります。Aさんのように、お荷物リーダー、衰退リーダーが、半年間で見事に脱皮して、部下の成長を促進する成長リーダーになる方法です。

御社はいつこの方法を実践しますか?