代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第99回 見せかけの技術と本物の技術の違い

「私も実際に現場いったらびっくりしましたよ。あんなに雰囲気かわってるんですから。」月次の役員に対する報告会の際に、ひょんなことから、1年前ににプログラム終了したY事業部長の話となりました。その際に、常務がその部長の手腕を表して言った言葉です。

常務曰く、その事業部は、事業部のトップが次々と変わったことで、士気が下がり、会社批判の急先鋒の輩の巣窟のようになっていたとのこと。

2期前のプログラム中に、最高益を叩きだしたY事業部長に白羽の矢が立てられました。すっかりマネジメントに自信を持ち始めた本人は「修行のつもりで」と当初は乗り気だったのです。

ところが、前任者の退職時期が早まり、引継ぎを前倒しでやることになった時、少し雲行きが変わり始めました。数日間かけて事業部の主要メンバーと面談した後、Yさんからいつも屈託のない笑顔が消えていました。そのかわり、「なかなかしんどそうです。。。」と苦笑いが残っていました。


継続訪問している企業の場合、過去のプログラム参加者から状況を聞いたり、時には再度アドバイスをする機会もあります。しかし、この事業部は他の事業部と場所が離れており、なかなか出会うチャンスがありませんでした。

それでも、Y事業部長からは、時々メールで質問がきて、それに返事をする。私もその事業部の状況を耳にすることがあれば、
私の方からもメールをする、そんな流れでサポートをしていました。

そんなある日、Y事業部長に別の研修に参加されていたようで、研修室と研修室の間にある休憩スペースいいるYさんをみつけました。以前に比べて随分精悍なイメージになっていたので、声をかけた際に、その旨をお伝えすると「まぁ、想像以上でしたから、、、」と言って笑いました。その笑顔は屈託のない以前のYさんの笑顔でした。

そして、Yさんが続けていいました。「まぁ、見てて下さい。手応え感じていますから」といって研修室に戻って行かれました。短い言葉でしたが、自信に満ちた言葉。そして、あの笑顔。Yさんは表裏のない方なので、「もう大丈夫だ!」私はそう確信しました。

冒頭の常務の言葉を聞いたのはそれから、3-4ヶ月後のことです。


この組織の成長加速プログラムを実施した際に、多くの社長から質問をされることがあります。質問の内容は、コンサルティング終了と共に、効果は継続するのか否かです。

特に近年は、プログラム導入企業の社長はその効果を目の当たりにします。それでもこの質問をもらうことがあるのです。恐らく、この効果が消えてなくなるではないか、、、という不安が頭をよぎるのでしょう。

この質問に対する答えはいつも同じです。「大丈夫、効果がなくなることはありません。」
そして自転車の例を出して言います。「一度自転車に乗れた人が乗れなくなることはありません。便利なので乗り続けますからね。」と。

実際に、多くの社長の心配は全くの杞憂に終わります。
経営幹部の方々の場合、マネジメント業務をしない日なんてないからです。つまり毎日自転車に乗り続けることになるのです。プログラム中に、気負いも、根性も必要とせず、慣れれば以前よりも、消費するエネルギーさえも減るという新しいペダル漕ぎ方を覚えます。

プログラムが終了したからといって、そのやり方を止める人は居ません。止める理由がないからです。

マネジメントも全く一緒となります。実際、半年のプログラムが終わる頃は、皆さんが口にする言葉は、異口同音に同じです。

「以前のやり方になんか戻れません。」「知らないでやっていたと思うとぞっとする」「このまま続けていきます」「他のメンバーにも広げます」等々、やはり、コンサルティングを終了しても、身につけたやり方お手放す理由がないのです。


Yさんの場合も同様でした。今回の組織変革の結果、まだ売上まで数字が反映されていませんが、それは時間の問題でしょう。というのは先日確認したところ、各プロセスの指標は前年同期比で軒並み150%以上に大幅に改善していました。

Yさんが最初に主要メンバーと面談した際に、具体的な目標の設定をしてもらいました。Yさんが赴任する直前の事業部の売上げの9割以上を稼ぐ法人営業部門の行動量は他事業部のそれと比べて、どの項目もマイナス20-30%という壊滅的な状況からのスタートでした。

また、その事業部は士気の低さとだけはいえない上雇用に陥っていました。成果の出ない組織のマイナスの文化が定着しつつあったのです。端的に言えば、サボリ、オゴリ、マモリという、行動量の低い営業マンが標準のようになっていました。

染みついた意識を切り替えるのは、その意識の醸成にかかった時間と比例して、改善するまでに時間を要するのを覚悟しなければなりません。(本当に恐ろしいことですから、こうした状況に長く組織を落としいれては絶対になりません。)

それを考えると、Yさんの取り組みの成果は目に見える状態で成果を上げているといえるのです。もちろん、プログラムで身につけたことを実践しているからに他なりません。すぐに社内の至る所から、賞賛をえることになるはずですが、Yさんは、それを自分の手柄だと喧伝するような人ではありません。

きっと「みんな良くやってくれて」とあの人の良い笑顔で言うのに違いありません。Yさんの人柄が来たるべき大成功の大きな鍵のひとつなのです。


報告会の後に、常務と立ち話しした時、常務もまた同じようなことを言っていました。「あの課長と主任が笑顔で挨拶してきたのには驚いたよ」と。常務曰く、きっとYさんの人柄が良い影響をもたらしているのだろうと、Yさんのことをべた褒めされていました。

組織で成果を出す社内の第一人者の一人になったYさんも初めからそうだったのではありません。最初に出会った時は、「しんどいです」が決まり文句でした。

「さっきYさんが言ったことをいつからやりましょう?」「・・・しんどいですね」
「それすごくよさそうですね。どう進めます?」「・・・正直、しんどいですね」
という具合。

そしてまた、Yさんは、決めつけも多かった、です。誰にでも起こりえることですが、何かを決めつけてしまうと、その決定から人は逃れなれなくなります。たとえそれが、他人からみれば、間違っていることであっても、本人にしてみれば、それこそ真実です。

例えば、全社で強化指標として上がった項目の中で、Yさんの事業部が最下位から2番目という状態から抜け出せない状態が半年間続いたことがありました。

その原因を聞くと、Yさん曰く「事業部の稼ぎ頭のトップの実績を誇る営業の上位3人が、頑として、その指標に対する協力を拒否しているから」というものでした。

結論から先にいうと、それはYさんの勘違いでした。実のところその3人は協力的でもなく、かといって非協力的でもなくただその必要性を理解できてないだけでした。

一言でいえば、Yさんの1人相撲だったのです。Yさんは、それまでそうした、一人相撲を知らず知らず続けていたのです。努力は人一倍するのですが、結果がついてこなかった原因が、決めつけてそこに捕らわれるというものでした。

これは、仕組みと運用技術を使うことで、すぐにその問題は解消しました。その結果、プログラムを始めた年は、惜しくも通期達成はできなかったのですが、改善率では社内でダントツNO1になったのです。

あれほど毎回「しんどい」を繰り返していたのが、3-4ヶ月目辺りから「楽しいです」に変わっていました。そして最後には、リーダーとして盤石の自信を手にしたのです。Yさんの伝説はまだ始まったばかりです。


さて、御社の場合はどうでしょうか?

御社のリーダーは、組織に継続的に成果をもたらすマネジメント技術を手にしているでしょうか?それとも、見せかけの知識や、技術に振り回されているでしょうか?

御社は本物を手にされますか?