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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第175回 現場から実況です!人は誰でも変われる!50代男性の覚醒

 

年前程前にご支援していた会社で、取締役だったMさんから、常務に昇格した旨のメールを受け取りました。メールの文面に書かれた内容をみて、胸が熱くなりました。「あのMさんが・・・」とても感慨深かったのです。

私は、20年近くにわたり、1000名以上のリーダーと接してきました。もちろん、1000人いても、1000通りです。

しかし、頭の中で、「あ、またこの問題だ!」「あ、こういうケース前もあったな。」と何かしら、過去の事例に該当する部分があると、処方箋がいくつかパパッと浮かびます。だから、より早く、より確実に対処出来る事例が増えているのです。

ところが、このM取締役は、「え?こんな人いるの?」というちょっと特異なケースでした。私としては、研究心に火がつきます。もう俄然、両腕とも腕まくり状態、「さぁこい!」とテンション最高潮となったのです。そのため、このMさんのことは強く印象に残っています。

 


 

Mさんは、転職組みで、その能力の高さから、トントン拍子で出世していきました。Mさんは、ある領域のスペシャリストで、その知見において、社内では圧倒的な質を持っていたのです。Mさんの作る資料は、社内でも評判のものでした。

念願の役員となり、Mさん本人は、意欲満々でしたが、社長、副社長、専務、常務は、Mさんのことには頭を痛めていました。

Mさんは、部長付で入社されて、翌年部長へ昇格、その翌年に取締役就任でした。役員の方々が頭を痛め始めたのは、Mさんが役員会に出席するようになってからのことでした。異変が起きたのです。

一つ目の異変は、Mさんが取締役となり、2つの部門の管掌をするようになったことで起きました。2名の部長から苦情が相次いで上がるようになったのです。

2名の部長からの訴えは、「M取締役が、それぞれの部門の社員に対して、仕事を依頼するのですが、特定の社員に集中し、公私構わず特別な距離感で接している」というものでした。

役員会メンバーはその現場を見ているわけではないので、2人の部長とM取締役のちょっとした行き違いで、時間が解決することだろうと高を括っていました。ところが、一人の部長が退職届けを持ってきたことで、話は急展開します。部門メンバーからのヒヤリングが始まりました。

結果、部長、課長のみならず、一般社員からも、苦情や不満の声が数多く上がっていることが確認されました。

 


 

二つ目の異変は、役員としての資質という点にも、疑問視される事案が増えて行きます。役員会のメンバーの共通の認識となっていきました。

M取締役の資料の内容は、相変わらず素晴らしい内容だったそうです。全社的な見地からの課題の抽出、将来起こりえるリスクなどを分析した結果がわかりやすく、まとめられています。

しかし、課題の指摘で終わるのです。当初、役員会のメンバーは、M取締役は、転職組みなので、遠慮があるのかと、ひいき目に見ていたそうです。ところが、「言いっぱなし」の内容が増えるにしたがって、どうやら、遠慮しているわけではないという結論になっていきました。

 


 

これ以外にも細々とした、懸念事項が増えていきました。これ以上は放置できないということになり、専務から、M取締役へ改善点の指摘をいただくことになりました。専務からの指摘事項を告げられた時、M取締役はその指摘内容にとても驚いたそうです。まったく悪気はなく、指摘されたことに関しては、改善しなければと考えたそうです。そして、その指摘から3ヶ月が経ちました。

 


  

全く改善の兆しがないことで、M取締役以外のメンバーは更に頭を抱えることになります。更に3ヶ月後、社長はMさんを解任することも選択肢と考えるようになりました。このタイミングで社長からM取締役の件を相談されました。

早速、私はM取締役からお話を聞くことにしました。第一印象は大変気さくな方というものでした。お応えに難いだろうことにも、真摯にご対応いただいた印象でした。聞けば、M取締役は、前職、前々職でも、マネジメントの問題を抱えていたことがわかりましたが、M取締役としては、自分の問題ではなく、周りが自分をのけ者にしたと心の底から信じているようでした。

専務から指摘事項も、自分としては、改善するべきとは思うものの、何をすれば良いのか検討がつかなかったのです。また、一部の内容については、M取締役は、「濡れ衣」と受け止めていることもわかりました。


 

本格的にM取締役とのコンサルティンが始まりました。全体を通して振り返ると「これほどまでに抵抗した人には滅多にお目に掛からないないなぁ」というものです。

M取締役の態度は2回目お会いした時から一変しました。M取締役の課題を確認し始めたあたりから、本人の態度が大変ふてぶてしいものになったのです。

一つ一つのやりとりも、面倒くさそうに答える。言葉遣いはぶっきらぼうになり、宿題に対しても、ブツブツ文句が聞こえてきそうな対応です。

実践の確認をすると、「全部解決した!」と本人は言います。私が周囲の方々に確認をすると、「全く何も変わっていない。」と言います。それを本人にフィードバックして更に改善を迫っていきました。これを繰り返していきます。

 


 

M取締役の支援を始めて4ヶ月目のことです。Mさん御本人から私に様々な質問が出てくるようになりました。そして5ヶ月目には、役員会のメンバー誰もが、M取締役の改善を見てとれるようになったのです。

M取締役から、最後の面談でこんな言葉をもらいました。「正直、専務から指摘を受けた時、言いがかりだ、としか考えることができなかったのです。ただ、今は、全てが私にとって必要なことだった、とはっきりと分かります。」この言葉から約3年の後、M取締役からいただいたのが冒頭のメールです。

 


 

退職届けが出た部長と営業部門の部長でした。M取締役とは、一緒にプロジェクトを手がけ、社内の受注プロセスの大幅な改善が図られました。営業プロセスの可視化によって、改善点が明確になりました。結果、一人辺りの営業力の大幅な改善となりました。

ゴタゴタによって、2名のベテラン営業が退職したのですが、2名減ったにも関わらず、部門史上、最高売上の達成につながりました。

 


 

人生経験もあり、社会人としても、成功体験を積まれた人が見たくない現実を突きつけられた時、多くの人は、人に見せないまでも、深く落胆し、激しく動揺されます。Mさんもそうでした。

今回のMさんのように、改善点を指摘される内容がどんなに正しいものであっても、本人にとっては、やりたくても実現できなかった内容というケースがほとんどです。直せるものなら、とっくに直していたのです。

 Mさんのように、改善が短期間ですすむ為には、本人がその課題に本気で取り組むことが大前提です。その課題の改善をしない場合の未来を見定めること、そして、改善した場合の未来も見定めること。その上で、何を目指すのか決断してもらいます。

そこが決まれば、後は技術の習得となるので、進み始めます。人によっては、未来を見定める前に、ジタバタします。なので、今回のMさんのように少し時間が掛かります。

 


 

重職であり、成功体験を持ち、当然高いプライドを持っている人の場合でも、20年、30年の悪習慣を克服し、変わっていくことは可能です。

私は特別の能力を持っているわけではありません。私が実践していることは、1000人以上のリーダーにお伝えし、伝承してきたマネジメント技術を使っているだけです。

気づきのツールを使い、やり切るまで確認し続ける。当初の意図通りに、推し進めるだけです。

相手が人間であるならば、どんな相手であっても、モノの見方を変え、判断を変え、思考を変え、行動を変える。一連の技術を手にすれば、誰もが出来るようになります。

このように書いてくると、この技術は、とても深遠な、とても難しいステップなのではないかと思うことでしょう。

しかし、この技術の内容は、驚くほどシンプルです。そうでなければ、業界を超えて、業種を超えて、効果を発揮するわけがない。入社2年目のリーダーが使いこなさせるワケがない。

ただこの技術を知り、訓練することで、目の前の一人を着実に変えることができます。このマネジメント技術を手にする人を社内に一人でも多く揃えることで、組織は、音を立てて、変わっていきます。 

自転車に乗れるようになって、乗り方を忘れて、乗れなくなる人はいません。もう元に戻ることはないのです。