代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第104回 社長のための最良の時間の使い方

今年は更に30%の売上アップを見事に達成させ、今期70億円に迫ろうとする組織を率いる40代のF社長が、幹部研修会の締めの場面で、次のように言いました。

「この半年間、私自身、この対話法を実践し、幹部の皆さんとも途中から定期的な面談をしてきて、着実に組織が前に動き、成果が違うことを本当に実感しています。これを全社に広げたいと考えています」

このF社長の言葉を聞きながら、半年前のことを考えていました。F社長も当初からコンサルティングを受けてはいたものの、営業に時間を取られて進捗が滞りがちでした。

2ヶ月目を過ぎた時、「いつになったら(幹部との)面談が始められますか?」と私が問うた時、「すぐに始めます。」という返答。しかし、実際に始まったのはそれから更に1ヶ月後のことでした。成果に必要な時間としては、3ヶ月は最低必要でしたので、私は内心穏やかでは
ありませんでした。

しかし、私の心配は杞憂におわりました。なぜなら、実際に社長が面談を始めると、社長の目の色が変わり、ものすごいスピード変化が起こり始めたからです。

社長の目が変わったのは、社長が面談を開始して、上手くいく幹部と、うまくいかない幹部が
出てきたことでした。F社長は、全部上手くいくと想っていたようで、想定外の出来事に遭遇して、一気に行動への圧力が変わったようでした。自分の対話の仕方をとても注意深く検証を繰り返されたようです。


F社長は類い希な営業センスの持ち主。このシンプルな対話法の技術を理解するのはワケのないことでした。ところが、つい型から脱線してしまったり、いつもの、話し方に戻ってしまうことももちろんありました。対話というのは、習慣ですから、一瞬にして習慣化されたものを変えることが出来る人はいません。

それでも、私からみると、F社長は経営幹部との面談を重ねる毎に、着実に進歩していました。その改善スピードはとても速く、正直驚いたものです。

しかし、その進歩をゼロにしてしまうような致命的な弱点がF社長にはひとつありました。私がその点を指摘した時、「いやぁ、これは苦手なんですよ。昔からずっと、これだけは出来ないのですよ」といいながら、頭を掻いていました。

それから3度ほど、同じようなやり取りを経て、最後の研修会当日、社長から出る言葉に、驚きました。

あれほど苦手と言っていたことが嘘のように、ばっちりと決まっています。全てがお手本レベル「型」を見事に実践され、またレベルアップが実践されていました。


新入社員を2つの会社に入れてその変化を観察するとどうなるか?
実際にそんな実験をすることはできませんが、以前、企業研修をした時にこの実験に似た事例を目にしたことがあります。

会社の規模、業務内容がほぼ同じな会社であっても、わずか数週間で人はその会社色に染まるという事実です。

業種が同じ、業務内容が同じという共通点を超えて、会社の文化の違いが人に与える影響の大きさを実感したものでした。

この事実は、私たちに重要な示唆を与えてくれています。数百年も前に言われた「朱に交われば赤くなる」ですが、これは現代でも十分に通用します。「朱に交われば、、、」の「朱」とは会社の文化を指します。

この会社の文化の発信源はどこかを探って聞くと社長に行き着きます。特に創業会社の経営者は、強力な個性を持っている方が多いのですが、それが会社そのものに浸透しているのです。

社長は、会社の文化の起点。だからこそ、十二分に注意を払う必要があるのです。


研修会が終わり、第2期のメンバーについてF社長と話していた後、別れ際に、F社長が言いました。「今、1週間の中で、ほぼ1日丸々面談に時間を使っています。」といってニヤニヤ。「でもこれ、しばらくは続けています。効果ありますからね。」というと、いつもキリリとした顔に戻っていました。

経営幹部の時間の使い方は、組織を大きく変えます。言うまでもなく、本当に重要なことにどれだけ時間を使えるか、これが勝負です。F社長が体験したことは、これまで、他の企業の社長にも同じように体験されてきました。

コンサルティングの前にも必ずお伝えするのですが、「社長が関わることで、スピードがまるで違いますよ」ということ。

もちろん、ここから先は、あくまで経営者ご自身の判断です。

しかし、経営幹部の変化を創り出すためには、その中心にいる社長との関わりが重要な要素のひとつです。

ここが変わることが驚くべき変化を創り出しますから。このことは、私の中では確信となっています。

そして、これほど、組織全体に波及する効果のある取り組みもそうそうないと私は考えています。多くの社長は、初め躊躇されますが、社長の時間の投下の投資対効果は、通常、多くの社長の想像を超えるものになっていきます。


さて、御社の場合はどうでしょうか?
組織を大きくかえるマネジメントの「型」を使い、組織を大きく変えていきますか?それても、現状のまま維持、または、ゆっくりと坂を下っていきますか?