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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第172回 組織の成果を変えたのは、たった1枚のシート?

ある販売会社の課長の件で、F社長から相談をいただいた時のことです。F社長は、その課長のお人柄を話し始めました。「Yは不器用ですが、部下を思う気持ちは人一倍強いのです。」と。

そして、それにまつわる様々なエピソードを教えてくれました。ひとしきり話した後に、腕組みをされて、一呼吸置いて、話しを続けられました。

「ただ・・・どういうわけか、部下達の成果がでない。(部下から)反感を買っているようなのです。」「私はあまりそういう場面には遭遇しないのですが、そういう声が聞こえてきます。」と。

Y課長は、40代後半の背の高い方でした。若い頃はスポーツマンで、元体育会系という言葉がぴったりな方でした。風貌もそうですが、爽やかな笑顔が印象的で、営業成績も抜群です。その営業力のセンスは、役員や部長の皆さんも認めるところでした。

Y課長は社内でもトップの成果を誇るのですが、F社長が教えてくれた通りで、チーム業績は惨憺たる状況でした。

離職率が高止まりしていました。8名いる課員の半分以上が2年未満の社員。2年間で1回4名が入れ替わることが続いていたのです。お客様からの満足度も低下し、クレームもありました。Y課長は必死で支えるものの、課の雰囲気は殺伐としています。

大変僭越な表現ではありますが、F社長は人を見る目がある方でしたので、Y課長の人となりも見抜いていたはずです。ただ、私には、社長からいただいたY課長像とチームの状況とが合致しませんでしたので、社長に御願いして、課員の方々からお話を聞くことにしました。

 


個人の営業成績が高いものの、リーダーとして、チームを率いるとチームでは成果がでない。よく聞く話の類いではありましたが、今回のケースはちょっと毛色がちがっていました。

トップセールスマンがリーダーになった時、「相手が出来ない状態が理解できない。」「相手ができないという理由がわからない。」「相手が悩むポイントに共感できない。」という原因で、チームメンバーを動かすことができないということがあります。

今回のリーダーは、自分が当初苦労したこともあり、部下の悩み事、困りごとには真摯に対応していました。実際に部下達からも、口々に「とても親身になってくれる」ということだったのです。

部下達もサボっている風でもなく、新規のアポイントの件数も必要量をこなしていました。詳しくみていくと、見積もりまでは、進むものの、契約率が著しく低い社員が多いことがわかりました。そして、更に詳しく見ていくと、あることに気がついたのです。それを改善するべく、取り組みをY課長に依頼すると、成果は劇的に改善が始まりした。

 


やったことは、単純です。案件の進捗管理の回数を増やしたのです。

Y課長は、昔、マイクロマネジメントをする管理職の元で、嫌な思いをしていました。窮屈で、自分の成果は上がるばかりか、やる気も低迷し、朝起きるのも辛くなったといいます。ついには転職するハメになったのでした。

Y課長は、この経験から、部下に対して、細かく管理することをやらなくなったのです。私がY課長と確認したことがあります。それは「細かく管理すること自体が悪いのではない。」ということです。実際に、Y課長が嫌な思いしたのは、細かく進捗を管理されたことではなく、細かく一方的な指示が出たことでした。

一般的にマイクロマネジメントは、マイナス面が大きいとされます。その理由は、本人のやる気を削いでしまうからだとされています。ところが、マイクロマネジメントはやり方に工夫があれば、とても効果的なものにもなります。

実際に、細かくプロジェクトを管理することのメリットは、修正する機会が多いことです。実力がある人は自ら修正することができますが、実力が十分ではない社員、経験値が足りない社員には、修正が多ければ多いほど、無駄な努力の量が減ります。成果に向かって無駄な動きがなく、より早く前に前にと進むことができます。

Y課長のチームでは、とてもうまくいきました。社歴が短い社員の場合は、単位時間当たりの成果はうなぎ登りになったのです。Y課長のチームの過去最高売上げは6億5千万だったのですが、同じメンバーで一気に10億手前、9億8千万まで引き上げることができました。

他にも良いことがありました。離職が激減したのです。Y課長が、細かく管理することで2年で50%が、2年で0%。3年で0%、4年で12%と激変。
5年後、Y課長の部門は8名から10名に増えていました。売上げ16億2万まで増えました。8名で6.5億だったチームが、2名増えただけで、10億増えた計算です。

 


私達は、さまざまな経験から学びを得ますが、必ずしも、その学びが役に立つものばかりではありません。経験したことを誤って理解しまうこともあります。Y課長の場合もそうでした。
経験した事の意味を取り違えてしまうと、当然、間違った判断をするようになるのです。このようなことは、Y課長にだけ起こることではなく、日々、誰にでも起こりえることです。そして、繰り返し起こりえることです。
どうやって、この状況を回避できるのか?

実は、この問題を回避するために私は1枚のシートを使っています。一連の質問に答えることで、経験した意味の取り違いに気がつき、その問題を修正ができるのです。

Y課長にもこのシートを埋めてもらって、勘違いに気づいてもらったのです。そして、今度はY課長が、自分の課員の指導に使い、今度は課員の行動が代わり、成果も変わっていきました。わずか10分で出来るのですが、自分の体験の勘違いに気がつけば、違う行動をとるようになるのです。

逆を言えば、このシートを使わなければ、Y課長のチームが生み出した10億円は生まれなかったとも言えます。この勘違いに気がつかず、修正がなければ、この成果は生まれませんでした。
更に言うと、このシートがなければ、リーダーは、相手にこれを分からせ、新しい行動に変えるように導かなければなりません。書いてみると簡単ではありますが、実行出来る人は100人に1人か2人となります。

マネジメントは技術ですから再現性が重要です。こうしたシートを使うことで、相手の成果を繰り返し変更していくことができるようになります。

御社のリーダーはこうした再現性のあるツールを使っているでしょうか?それとも、リーダーの任せになっているでしょうか?