コラム「組織の成長加速法」-第248回 組織を学べど成果は上がらず——なぜ、こんなことが起こるのか?
■ 成功事例に惹かれ、現場で止まる組織
以前、上場企業の経営者の方から、ご相談を受けたことです。
「○○という方式を取り入れてみようと思うのですが、どう思いますか?」
話を聞いた瞬間に分かりました。経営者の腹は、すでに決まっていました。
名前の通った組織運営の手法には、必ず成功事例があります。
しかも、それらは決まって「再現性」や「普遍性」を強く謳っている。
経営者の気持ちはよくわかります。
実績があり、多くの企業が成果を出している。
それを自社に取り入れたくなるのは、自然なことです。
私は、メリットとデメリットを率直にお伝えしました。
それでも社長は、その業界の巨人が実践し、大成功した話を
目を輝かせながら語っておられました。
うまくいったら、すごい。これは間違いありません。
ただ、結果はどうだったか。
この取り組みは、その企業では頓挫しました。
社長が旗を振ったのは、最初の一度きり。
現場は一度動いたが、続かなかった。
チーム全体で動くことが前提でしたが
そうはならず、
リーダー一人が奮闘することになりました。
その結果、リーダーの負担が大きく名リア過ぎて
続けることが出来なくなってしまったのです。
これは、特別な話ではありません。
むしろ、多くの組織で、極めて頻繁に起きていることです。
どんなに優れた考え方でも、
運用できなければ、何も変わりません。
■ 組織論を学び続けた、私自身の遠回り
私自身もかつて、実行部隊のトップとして、
必死に「組織の作り方」を探し求めていた時期があります。
ドラッカーに始まり、有名どころは一通り学びました。
自ら率いる組織の成果が、
自分の期待と違えば、原因を探したくなる。
「自分の何が悪いのか」
「仕組みが悪いのか」
「やり方が時代遅れなのか」
リーダーであれば、誰しも通る道です。
私も同じでした。
本を読み漁り、取り入れては、次へ。
試してみては、また次へ。
今振り返ると、
部下たちにとっては、相当な迷惑だったと思います。
最後に虜になった組織論は、日本独自のものでした。
自分の組織の問題点や、根本原因が次々と解き明かされ、
「これこそが、自分が求めていたものだ」と
強い興奮を覚えました。
それも含めて、それまでに学んだこと、
現場で試してうまく行ったことを抽出し、
自分なりに整理し、メソッド化し、起業します。
経営者の悩みを聞き、頭の中を整理し、方向を示す。
ご支援した方は満足し、成果も着実に上がっていきました。
■ 成果は出る。だが、組織は変わらない
正直に言えば、
経営者の方や、幹部メンバー、実行力をもった
社員のパフォーマンスを変えるために、
高尚なメソッドは必要ありません。
悩んでいる頭の中が整理されれば、
もともと実力のある人たちのパフォーマンスは上がる。
これが事実です。
御本人達は満足し、時には紹介もいただいて、広がって
いったのですが、続けるうちに、
強烈な違和感が高まっていったのです。
先ほどの理由で、社長や、リーダーは大満足していただけました。
しかし、組織全体が変わらない。
できる人が、よりできるようになる。
これは、もちろん良いことですが、
ただ、それは所詮、個人依存です。
組織としての、持続性のある成長にはつながらなかった。
時に、馬力のあるリーダーは、叱咤激励しながら、
止まりそうな組織をグリグリ引っ張ることはできます。
しかし、そういう人は、どこの組織でも少数派です。
多勢に無勢。
いずれ頭打ちになるのは、見えていました。
■ 「ふつーのリーダー」を前提にしなければ、組織は動かない
それ以降、私が追い求めたのは、
ふつーのリーダーが、目の前の部下を動かせる仕組みでした。
当然のように、人を動かす技術である、コーチングにも辿り着きます。
様々な場所で、必死に学び、プログラムに組み込み、展開しました。
ところが、うまくいかなかった。
理由はシンプルです。
私が、ふつー過ぎたのです。
コーチングの技術は、素晴らしいものが沢山あります。
実際、海外の有名コーチ、日本人の著名なコーチも雇いました。
ただ、結論は同じでした。
簡単にマスターできるものではない。
片手間でできると考えるのは、現実的ではありません。
コーチングの技術は、
トップセールスマンの技術とほぼ同等です。
100人に2〜3人。
多くても20人に1人。
この確率を考えれば、
組織に凄腕のコーチングをマスターしたリーダーが
次々と生まれる前提そのものが、狂っているのです。
多くの組織で、リーダーになる人は、
プレーヤーとして結果を出した人です。
しかし、
リーダーとしては、ほとんどがふつーの人。
出来るリーダーを前提とした組織論は、
運用の段階で破綻します。
■ コミュニケーションに頼らず、思考力を育てる仕組み
だから私が目指したのは、
コーチング力に依存しない、
コミュニケーション力に依存しない、
仕組みでした。
人と話すのが得意でなくてもいい。
カリスマ性がなくてもいい。
・言われた通りやったら成果が出て、
気づいたらリーダーになっていた
・憧れの先輩がいて、真似してたら
リーダーになっていた
・10年以上も、チームを任されているけど
まったく手応えを感じなかった
そんな人達でも、機能する仕組みです。
仕組みといっても、
超細かいチェックリストを
延々と回す方法ではありません。
(因みにこのやり方を否定するつもりはありません。
業界やによっては、非常に有効です。)
ただ、私がご支援してきた企業では、
社員の「考える力」が上がらなければ、未来がなかった。
どの部門にいても、
社員が考え、判断し、行動できなければ、
組織として伸び続けることはできません。
だから、私の仕組みに
超細かいチェックリストはありません。
絶対に譲れなかったのは、ただ一つ。
社員の考える力が、確実に強化されること。
■ ふつーのリーダーが、組織を伸ばす現実解
考えて、行動し、また考え、行動する。
この循環を回せば、
ふつーのリーダーでも、
目の前の社員を動かすことは、ほぼ確実にできます。
実際、ご支援してきた企業の中には、
5年で2倍以上の成果を上げた企業も少なくありません。
その裏側では、
ふつーのリーダーが、段階的に進化しています。
まずは、
目の前の部下を動かすための
最低限の仕組みと技術を身につける。
その後で、
言葉を磨き、
考え方を磨き、
覚悟を磨く。
カリスマを目指す必要はありません。
すべて、技術として形式化されています。
だから再現できる。
だから組織が伸びる。
■ 組織づくりは、理論ではなく「現実への適応」である
組織の業績を拡大するために、
リーダーを増やすことは不可欠です。
ただし、
何を身につけさせるのか。
どんな順番で身につけさせるのか。
ここを間違えると、
努力はすべて空回りします。
組織づくりは、理論ではありません。
現実に即した実践です。
身につかない理論や、
美しいだけの方法論は、
現場では、何の意味もなさないのです。