代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第10話 経営幹部の成果改善の鍵は社長にあり!

かつてベンチャー企業の役員をしていた頃、社長のYさんからマーケティングの総責任者を任ぜられたことがあります。当時の私は、マーケティングという言葉は知っていたものの、
まだ営業とマーケティングの違いすらわかっていなかったので、何をどのように進めたらいいか皆目見当がつきませんでした。

詳しくわからないなりにも、当時、その会社にとってマーケティングはとても重要なものであることは、なんとなく私にもわかっていました。挑戦してみたい気持ちもありながらも、「さすがに無謀すぎる」と思い、Yさんにその旨伝えました。

ところが、「やりながら勉強すればいい。すぐに覚えられるよ。」と取り合ってくれませんでした。Yさんは、外資消費財大手企業でマーケティング責任者もした経験もある人で、素人が一朝一夕にできるものではないことはよく知っていたはずでした。が、敢えて、現在進行形の課題を解決させながら、学ぶことの重要性をもっとわかっていたのだと今では思います。

経営立て直しの事業責任者として、全社の売り上げに責任を持ち、エリア責任者の面倒も見ながら、自らも担当エリアをもっていました。それだけでも、十分な業務量でしたが、マーケティングの担当をしてから、業務量は一気に膨らみました。

朝8時に出社して、終電ぎりぎりまでやっても終わらない日々が続いたのです。数か月も続いた頃、Yさんから言われた言葉があります。

「担当エリアを捨てろ」です。
一瞬耳を疑いました。

外資系の投資家が多いベンチャー企業でしたので、取締役会は、いつも紛糾していたのです。
運が味方をしてくれていたとしか思えなかったのですが、綱渡り状態で、利益計画に余裕は全くなかったのです。

大変Yさんのことを尊敬していたのですが、現場を自分のほうがわかっているという自負から、利益が大幅に下がることは避けられないと思いました。とっさに、思いつく理由を並べ立て異を唱えました。
・ようやく現場との信頼関係が構築できたところであること
・もし一度売り上げが下がると再度引き上げることの難しさ
・投資家が到底納得するはずない等

ところが、Yさんは「大丈夫、担当エリアを捨てろ」一点張りでした。最終的には私が折れるしかなく、指示通りマーケティングに集中することになりました。

結論から申しますと、私の心配は杞憂に終わりました。まず私の担当エリアの売上は下がるどころか上がりました。これは運がよかった。

驚いたのは全社売り上げです。

上昇幅が低迷していたその前の3か月間と前年対比20%以上を記録したのでした。

現在私が支援する企業は、業態業種も様々、幹部の経験値も様々です。ですから短期的な売り上げ上昇という効果が出るまでのスピードは一概に論ずることはできません。

その一方で、これまでご支援した経営者、経営幹部の顔を思い浮かべてみますと、成果のスピードが早かった企業には共通点もあるのです。

ご支援する企業のほとんどは、中規模の企業ですから、ご支援する方々も朝から晩までびっちり業務が入っている方々がほとんどです。そうであっても、かつてのYさん宜しく、「これを変えてくれ」と私のほうからと依頼するいことも、少なくありません。ここまでどこの企業も同じです。皆さん、宿題もこなしてくれます。ここも同じです。

ところが、成果に大きな差が出てくるのです。どれだけ徹底してやるか否かの違い。最初はほんの僅かな違いですが、会を経るごとに大きな違いとなって差が歴然とします。

でも、
多くの場合は、手を抜いているわけではありません。成果の出ない人に共通するのは、前述の私のように「手放せない」ことに原因があります。

現状を手放せないから、新しいことができない。
新しいことができないから、現状と違う成果は生まれない。

こうして膠着状態から抜け出ることができないのです。私のご支援する企業は、成長に投資をする企業ばかりです。経営者、経営幹部も、とても前向き、向上心も強い方々が多いのです。

それでも違いが生まれます。様々な事例を見てきて成果がでるのが早いか否かのカギがわかりました。

実は、経営幹部にはありません。
経営幹部の能力ではないのです。

鍵は経営者によるのです。とはいえ、経営者の能力の差ではありません。ただ、やり方を知っているか、知らないかだけの違いです。実は経営者にあることをしていただくこと、役員は、新しい取り組みに比重を置くようになります。

私の知る限り、経営幹部が従前のやり方を離れられず、一定期間内に成果を上げられない原因は、経営者にあります。経営幹部の取り組みの優先順位を変えるのは、経営者の役割です。
なぜなら、大きな環境変化を認識しない限り、人の優先順位というのは、しらずしらず固定化していくからです。

責任感があればあるほど、現状の優先順位にはこだわりが強いのです。そのため、その欠点に気が付くことが、構造的に難しい。ですから、経営者は、経営幹部の成果を変えるための、
経営幹部の優先順位を変えるすべを知っておかなければなりません。

ここ半年、御社の成果に飛躍は見られますでしょうか?
社長の働きかけによって、経営幹部の優先順位に変化はあるでしょうか?