代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第11話 衰退する組織は失敗を恐れ、成長する組織は失敗を奨励する

11-02ある会社の社長からの電話がありました。

相談の内容は、
・ある部門の離職が特に激しい。
・原因はどうも部門長の言動。
・仕事には一生懸命なので伸ばしてやりたい。
それを受けて調査した結果、この部門長は部下に対して大変高圧的な態度であることがわかりました。

この部門長は自分の基準に満たない部下の行動、言動に遭遇すると、ことごとく罵倒し、部下の行動を修正するということを繰り返していました。ずっとそうだったのです。ところが、このところ、急に目に見えて部下が辞め始めたのには理由がありました。

相対的に他部門の業績と比較すると見劣りするようになると、これまで以上に部下達に厳しく当たるようになっていったのです。残った部下の方々を見ているとみんなストレスがべっとり顔に張り付いている表情。それもそのはず。部下が何か言うと、その部門長の言葉はいつも一緒。「ダメ!」「ダメ!」「ダメ!」ですから。

部門長曰く、

「部下に失敗されるとその尻ぬぐいで大変な目に遭う。」
「だから、できるだけ失敗しないようにこと細かい指示を出す。」
というのです。


一度も失敗しないで自転車に乗ることはできません。
自転車に乗ることに比べれば、大概の仕事はより複雑であるといえるはずです。どう考えても、「失敗しない」なんてことはありえません。

この部門長もこの話はわかるわけです。しかし、行動と理解がバラバラのままでした。気になると思いますので、結末だけお話ししますと、あることをきっかけに、この部門長は別人のように変わっていきました。10年以上続いた彼のマネジメントは、わずか数か月で変わっていったのです。


「失敗を奨励するべきだ」というのは、よく言われることです。
ところが、マネジメント技術を持たない部門長にとって、「失敗」を許容することはまさに恐怖でしかありません。ただ、失敗を許容しない部門、組織に未来はありません。

この事例にもあるように、部門長も含め誰一人得しないのです。どんなに集中して作業をしたとしても、どんなに綿密な計画を立てたとしても、どんなに相手に配慮したとしても、失敗は必ず起こります。

「失敗は仕方がない、次どうするか?だ」これはある経営者の言葉ですが、すべてはこの言葉に凝縮されています。

・失敗は避けられないとして受け入れて、その先を見るのか?

・失敗そのものを避けようとして、手前を見るのか?

ほんのわずかな差ですが、部門、組織の存立の危機にまでつながる大きな結果の差になります。


失敗を奨励する組織では、挑戦者が生き生きと仕事をしています。もちろん、野放しにしているわけではありません。予算が決まって、撤退基準が決まっているので、大きく失敗しない
仕組みを持っています。

経営者は、リスクを取る人たちですから、うまくいっている人は基準というよりも、嗅覚です。ところが、嗅覚は共有できないので、基準に変換してあげる必要があります。カリスマ経営者の嗅覚を、基準に置き換えることで、現場で判断できる仕組みを御社にはあるでしょうか?

またそもそも、
御社の経営幹部は、部下に失敗を奨励しているでしょうか?
それとも、失敗を恐れて組織を締め付けているでしょうか?