代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第83回 経営者の幹部への○○に社員全員はしらける

とある地域では誰もが知る老舗企業の3代目社長。堅実な2代目からバトンタッチを受けて、矢継ぎ早に改革をし、また事業の柱も増やし地元では元気のよい100年企業といえば、必ず名前が挙がる優良企業です。

そんな外の声とは裏腹に社長にはある悩みがありました。その悩みとは、成果を出さない役員の存在でした。

社長はそれを「大企業病」と称するのですが、どうもお話を聞いていると釈然としません。いつも社長らしくないのです。はっきりとは口にはしないものの、「相手が如何にサボっているか」「相手が如何に態度が悪いか」「相手が如何に能力がないか」「向上心がないか」挙げ句、「役員に向いてないか」ということを並べ立てるのです。

そこで、経営計画書の「自らが先頭にたって問題を解決すること」という一節とと現在の社長の発言の関連について確認させてもらいました。

すると、社長は自分に言い聞かせるように「そうですよねぇ、そうですよねぇ」と、ばつが悪そうに机に視線をを落として、しばし沈黙。その後、ふと顔を上げていいました。

今度は本当にわからないといった感じで「常務、どうしたもんでしょう」と。


IPO一直線となると、パフォーマンスの悪い役員への対応は少し話が違ってきます。しかし、圧倒的多数の創業経営者は、今ひとつパフォーマンスが上がらない役員に対して苦々しく思いながらも、温情的な対応をしています。

多くは一緒に苦労を共にしてきた役員に特別な感情を持っているからです。「創業間もない頃は、何でも手伝ってくれた」「他の連中が辞めていく中、ヤツだけは残ってくれた」「アイツだけは絶対自分を裏切らない」等々。

ここまで見ると、美談なのですが、その裏はそうではありません。


経営者の方からそうした問題役員の方々についてのお話を聞くと「アイツのことなら全部知っている」という話が必ず出てきます。全部知っているから、その状態のままにしているというわけです。ある意味、あきらめです。

しかし、もう一方の当事者である問題役員と話すと、違う様相になってきます。結論から言えば、経営者の対応が変わると嘘のように解消される問題です。問題役員に対する経営者のあきらめ、そして遠慮が、その問題を長く横たわらせてしまっているのです。


実際、経営者から相談されて、その問題役員に関する課題整理を行うことがあります。どんな場合も最初は複雑に絡み合った状況に見えるのです。当の本人だけではなく、周りの人間関係もあります。一言でいうなら、様々なしがらみでがんじがらめ。あっちを立てればこっちが立たず。

なかなか言葉で形容するのが難しいのですが、話を重ねているうちに突破口が見えてきます。「もうこんなに絡まってしまってはなぁ」という当初の状況から、あれよやあれよという間に、それまでの状況が嘘のように突如状況が一変します。


とはいえ、過度な期待は禁物ですので、なかなか上手くいかないケースについても敢えてお伝えしておきます。

どんなケースがダメかというと、一つは、その役員の方がパフォーマンスが悪い状態が10年以上経過している場合。

これは、双方がその問題に慣れきっちゃっている状態です。問題役員の方には気力すら残っていないという場面にも遭遇しました。

例えば、かつては筋骨隆々のスポーツマンでどんな激しいトレーニングに耐えた人でも、10年間一切運動しなければ贅肉の塊になっていきます。10年間何もしない状態。何もしないという習慣が身についてしまっているのです。

以前できたからといって、いきなり激しいトレーニングをしようにも、メンタルもフィジカルもついてこない、そんな状態。本人が相当の覚悟をもって望まなければ、10年以上のブランクを短期間で埋めるのは容易ではありません。

もう一つの難しいケースは、相手がご年配の場合。年齢でばっさり切るのはあまり気が進みませんが、真実です。

通常のコンサルティングでも起こることです。似たような問題を抱えている方々がいるとします。やはり、30代、40代、50代と年齢があがる毎に成果までの時間が長くなる傾向があります。もちろん個人差あります。時々、30代が悶々として進まないのに、60代の方々が驚くべき変化を遂げる場合ももちろんあります。しかし、全体傾向としては、やはりそれはある。

ご年配の方々の尊厳のためにも申し上げますが、30代と50代、60代、マネジメントの領域の知識を覚えることにさして多くありませんし、習得までの時間の差はありません。

時間がかかるのは、獲得するほうではなく、捨てるほうです。新しいやり方、考え方を獲得するために、一端リセットしなければなりません。

例えば、ゴルフのスイングを想定してください。変なクセがついていると、そのクセを取っ払うの時間が掛かる。やったことが無い人が覚えるほうが余程早いわけです。なので、それまでの経験が長ければ長いほど、時間が掛かることは覚悟しなければなりません。


では、解決可能な事例に話を戻しましょう。

解決に向かうケースでは、本人には実はやる気があり、改善努力もできる筋力が残っている場合です。(大概のケースはこちらです)

こうなると、ネックは経営者の方です。「もうアイツはダメ」そう決めてしまっているのです。長年そう信じてきたことですから、無理もありません。ここで押し問答してもらちが

そこで、経営者を巻き込み、明確に課題設定し、それを期間内で実現させることを確認するプロセスを組みます。経営者にとっても、当事者である問題役員の方にとっても、このマイルストーンの設定がとても重要です。

相手が30代なら、半年で十分です。経営者はかつてのダメダメ役員に対する認識を改めていきます。相手が50代を超えてくると1年を見据える必要がありますが、これまた確実に変化を実感するようになります。


経営者だけの問題としているように感じた方もいらっしゃるかともしれませんが、もちろん双方に問題があるわけです。経営者にももちろん言い分はあります。最初からあきらめていたワケではないというのです。これも真実です。

経営者の方も、かつては、何度も、その役員に変わってもらおうといろいろと骨を折った。しかし、その役員は、何も応えてくれなかった。何も変わらなかった。

その結果、不本意ながらも、「仕方の無いこと」、「しょうがないこと」として、そのまま不問の形を継続することになったのです。

経営者とその問題役員の関係ではそれもありなのかもしれません。ところが、組織図を取り出してい見ると分かるように、それは個人と個人の問題で片付かない。その問題が有り続けることは組織にマイナスを影響を出し続けることになるのです。

経営者がかつて最善を尽くしてダメだったから、あきらめて、長期にこの問題を放置してもいいということにはやはりならない。様々な経緯があったとしても、経営者側があきらめたが故に、改善に対する働きかけを止めてしまったのです。

とはいえ、なかなか今から切り出すのも躊躇することでしょう。きっかけ作りは第三者に手伝ってもらうのも手です。第三者が入ることは、以前とは全く違うアプローチになります。アプローチが違えば結果も変わります。そして、実際改めてこの問題に取り組む時、結果が変わる場合がほとんどですから。


パフォーマンスが悪い役員をそのまま放置することは、経営者、問題役員も含め、組織の誰一人得する人はいません。社員は口には出さないまでも、こうした状態を実によく覚めた目でみています。

古参の社員は、社長と同じようにそれまでの経緯をしていますから事情も分かるのですが、新しく組織に加わるメンバーにとってみれば、社内に一部治外法権区域がある状態を訳も分からず飲み込まないとならないのです。

問題を抱える役員と一度腹を割って話してみてください。遠慮で塗り固めた関係を断ち切ってください。相手にもし改善の意志を少しでも感じるなら、今こそ解消に向けて一歩踏み出す時です。課題を明確して、経営者自らがその役員の変化、変容の後押しをするべきです。

恐ろしく大きな思い歯車を回す気分かと思います。が、投下するエネルギーと時間の何倍もの見返りがあることに、半年後、1年後気がつかれるはずです。


さて、御社の場合は、如何でしょうか?

パフォーマンスの悪い役員はいるでしょうか?
そして、その状況は何年続いているのでしょうか?
いつ、その状況改善に手をつけますか?