代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第82回 決断先延ばしの今日なのか? 決断の結果の今日なのか? 意外に多い組織○○の原因とは?

先日、知り合って5年になるF社長から、事業計画についてのアドバイスが欲しいという連絡をもらいました。約束の時間よりいつも早く社長。それを見越して早めに準備をしてお待ちしていると、案の上、電話がなりました。

席に着くなり、書類をバサバサと並べて、展開されている3つの事業の計画概要を最近作り替えたというパワーポイントを使ってご説明いただきました。

冒頭、私は、F社長に、どのようなアドバイスを期待しているかを確認しました。すると、出来るだけ手厳しくということでしたので、忌憚のない意見をお伝えすることにして、全体の説明を聞きつつメモをとりました。

最初の2つの事業は、従来予想を大きく上回る展開をしていて至極順調。以前とは違い、離職率も低く抑えられていて、技術、知識の伝承も上手く進むようになっていました。

3つ目の事業の説明をされた時に、この事業の課題が、幹部社員の課題の課題であるという説明を受けた時に、私は口火を切りました。

「この事業の本当の課題は別にあります。」

この3つめの事業は、丁度私が社長と知り合った頃スタートした事業でした。以来時々、進捗のご報告を頂いていましたが、3つめの事業は、ここ数年ほぼ変わらずで社長の頭痛の種になっていました。


社長は3つ目の事業開始時からずっと2つの悩みを抱えていたと言います。1つ目の悩みは、従来の事業との親和性がなく、これまでの事業ノウハウが使えないということ。利益率は高いものの、この事業を続けるべきなのかどうか、ことある毎に、この疑問が頭をもたげたそうです。

もう一つの悩みは、3つめの事業に関わるメンバーを信用できないという問題。他の事業と違い、この事業の責任者は単純計算で、社長の直下の部長は、2年に1回の割合で
入れ替わっていました。


社長だって人間ですから、完全無欠の決断を常にできるわけではもちろんありません。簡単に解消出来ない悩みだってあって当然です。

一方で、事業を展開する上で、F社長のように自分では気がついてない悩みも含めて、社長の悩みをズルズルと引きずることはマイナス要因でしかありません。

口では組織を拡大させたいと言いながら、実は自分が組織の拡大に一番ブレーキを踏んでいるということが少なくありません。

いずれにしても、社長が解決を望まない限り、周りが進めても意味がありません。社長が自分の悩み向き合うと決めることが最初の一歩です。F社長にも、一つの仮説、一つの意見ということで終わりにするか、一緒に悩みの部分を紐解いてみるのか?確認したところ、、F社長は後者を選びました

これまで蓋をしていた悩みに向き合うことになったのです。


結論からいうと、お話してから、半年後社長は、部長に事業を任せることにしました。それから1年。事業は前年比二桁の伸びを記録し、利益が一気に2.4倍になりました。

そしてこの事業は本体から切り離し、法人化することになる方向だそうです。社長はというと、2つの目の事業を海外展開させるべく、今はその分野に傾注しています。

経営者の悩み事の解消するか否かは、事業に大きな影響をもたらします。


今回事例でご紹介したように、、事業の一番の阻害要因は多くの場合、社長自身と結び付いていることが多いのです。

対処方法としては、信頼出来る外部の専門家を交えて話すことが直接的な方法です。もう一つのアプローチは、一端ゼロベース考えるということ。

事業が動き出すとついつい、数字に目がいきがちですが、課題が多い事業の場合は、今回のように、事業の目的、事業の価値まで溯って考えることは、本当の課題に気づくきっかけとなります。


F社長の場合も、そもそもなぜこの事業を始めたのかを改めて問い直してみたところ、利益率がいいという理由は確かにありましたが、2つの既存事業の伸びが鈍化してきたことで、3つめの柱を早急に立ち上げる必要があったことを確認しました。

この事業を続けるのか、続けないのかという視点よりも、4つ目の事業を立ち上げの準備をすることが大切だったのです。4つ目の事業は、既存事業と3つめの事業の溝を埋めるような事業となり、会社自体の競争力を高めることにつながることも再認識しました

当初の計画には盛り込まれていませんでしが、こちも中長期の展望の箇所で、詳しく入れることになりました。


また、社長が部長にたいして不信感をぬぐい去れないことも話し合いました。

様々な話をしていくうち、F社長は、過去に一度会社を精算したことがあることに話が及びました。その精算の原因は、社長が信用していた幹部の裏切り行為が元でした。

F社長は、この一件から、人に対する不信感を根底に持つようになります。以来、ある程度の年数、一緒に過ごしてくれるというのが最低限の基準になっていました。

一方で、本当にそれが適切な基準なのかを一緒に考えてみたところ、別の基準のほうが好ましいということになったのです。その結果、前述したように、早期の権限委譲が実現したわけです。


さて、御社の場合は如何でしょうか?
成績が不振の事業、部門の本当の原因は分かっているでしょうか?
もしかすると、社長自身の悩みに根ざして決断してこないことの結果かもしれませんよ。