代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第135回 これまで自分で勉強して、自分で社内に教えるという形式でやってきたのですが、どうやら、そろそろ限界だなと思いまして

先日お会いした社長のお一人に、「これまで自分で勉強して、自分で社内に教えるという形式でやってきたのですが、どうやら、そろそろ限界だなと思いまして」という方がいらっしゃいました。

詳しくお話を伺うと、超高収益企業ではあるのですが、リーダーの育成に課題を抱えていました。もったいないなぁ。というのが率直な感想です。

経営に必要な知見は、マネジメントに加えて、マーケティング、営業、財務、新規事業開発、またその組織の発展段階によっては、業務改善の仕組みなどが加わってきます。最初から全部に長けた起業家などありえません。

しかし組織の拡大と共に必須なものばかり、苦手とか嫌いとかでは済まされません。だからといって、全部自分が勉強しようとするのは、どう考えても非効率です。

自動車を運転するために、自ら組み立てる必要はないのであって、自動車を買って運転をすればいい。きっと誰もがうなずくと思うのですが、いざ自分に降りかかると見えなくなってしまうものですね。


実は、私も、ベンチャー企業に役員として参加していた時、自分で考えたり、自分で編み出すことに喜びを感じていました。今の仕事をしていて思うのですが、業種や業態を超えて社員を着実に成長させるマネジメント手法にたどりつくまで、いろいろな人について学びながらかれこれ20年かかっています。

自分では普遍性があると思っても、業種が違う、職種が違うことで、不具合が見つかってきます。また、経験値、教育水準、文化の違いでも違うことも、いろいろな場面で試してこそわかるもの。

専門家でもないのに、それを自分で考えていけると信じていたとは、我が身を振り返って、あまりにも幼稚だったなぁと反省しかありません。

自分なりに一生懸命やってはいましたが、単なる自己満足でした。お客様はもちろん、上司の社長をもさぞイライラしてまってくれたことだと思います。

結果を出すことが重要なのであって、プロセスの開発そのものを重視するのは、本人だけが楽しんでいて、頑張っている自分に酔っている状態。周りはどん引きです。

しかし昔の私のように、プロセス開発に酔う人達に、今も時々遭遇します。ある企業の40代後半のR部長の場合もそうでした。R部長は、大変な勉強家でした。サラリーマンとして、そこまで自己投資するのか?と驚くほどの自己投資をしてきた方でした。自分の弱点を探しては、方々学びに行っていたのです。親分肌で、社内もR部長の信者みたいな人もいるくらいでした。

ところが、あふれんばかりの知識を持ちながらも、マネジメントでは成果を上げることができていませんでした。このR部長が、「新しく主任に昇格した人に渡そうと思っている資料なんですよ。」といって、共有してくれた資料がありました。

その資料には、組織マネジメントに関わる考え方が、40-50ページに書かれていました。確かに、こうしたことが全て網羅されていたら、すごいことになりそうだ、、、というものは書かれていました。しかし、初めて部下を持つ人が理解できるような代物には思えませんでした。

本人から何度もアドバイスを依頼されたので、「内容が難し過ぎて、消化不良を起こすだろうから、もっとシンプルにするべき」とお伝えしたところ、気に入らなかったようで、憮然とした表情を浮かべられたのです。


R部長が組織を上手くまとめられない理由も実は、そこにありました。正しいのだけど、誰も理解できない。具体的に何を指すのかわからない、だから部下は動けない。この状況が繰り返されてたのです。

マネジメントは実践なので、部下に成果を出させてなんぼ、です。なので、極論言えば、部下が動かないものは、マネジメントとしては使えない。それがどれだけ正しいかはどうでもよいことです。

私はR部長に、新しいやり方を身につけるつもりで、今までのことは脇に置いて3ヶ月は徹底的に、新しいやり方に取り組むようにお願いし、修正を重ねて行きました。

結果的に、直属の部下2名が、それぞれのチームメンバーを動かし、社内の誰もが驚くような成果を上げるようになり、それをみたR部長は、腰を抜かしそうなぐらい驚いていました。

R部長が後日教えたえくれたのですが、私から「新しいやり方の完全マスター」を促された時、「こんなやり方でうまく行くわけない」と思っていたそうです。

しかし、私が導入したのは、技術なので、本人の思いとは裏腹に結果がでたというものです。


セミナーでは繰り返しお伝えしていますが、組織に導入するものは、どんなものでも、シンプルでなくてはならないのです。実行できなければ絵に描いた餅だからです。

マーケティングの実験でもよく言われますが、選択肢が増え、判断が複雑になると人は購入を止めて、何も買わないという選択をします。

複雑さは、行動を抑制します。新しいものを導入するのは、ただでさえ、ハードルが高いのに、説明を聞いて「複雑だなぁ」と思わせたら最後、その正しいけど複雑な仕組みは入りません。

御社でうまく導入されてない仕組みを考えてみてください。人事制度であれ、業務管理の仕組みであれ、動いてない理由のひとつは、複雑さです。ステップが多いのも、複雑というとらえ方をされます。人は行動をあきらめてしまうのです。

もちろん、導入しようとした張本人は、いつもこう思って導入します。「あーこれらなら導入できそうだ」だけど、周りは別のことを思っているのです。「これは○○さんだから、できることでしょ。」です。もちろん導入した本人は、自分以外の人達がそのようなことを考えているとは、つゆほどにも思いません。でも、この「「これは○○さんだから、、、」という言葉を、訪問先の企業で良く耳にするのです。


さて御社の場合は如何でしょうか?

早く成果を得ることに集中していますか?それとも、プロセスにこだわりすぎて、成果を得るための時間を無駄にしていますか?