コラム「組織の成長加速法」-第246回 「基本を守る力」が組織の未来を救う──“守破離”の“守”にこそ、成果を生む再現性がある
「結果を出す人って、やっぱり“基本”がすごいですよね。」
先日、あるスポーツ観戦中に、隣にいた方がふと漏らしたこの一言に、私は大きく頷きました。
ビジネスの世界で数多くの企業を支援してきた私にとって、成果を出し続ける組織と、スポーツで成長し続ける選手には、驚くほどの共通点があることを日々実感しています。
その共通点とは何か?
それは、「型を守る力」です。
トップアスリートたちは、試合でいきなり自由にプレーしているように見えて、実は“脊髄反射”レベルで基本動作を体に染み込ませています。
素振り、トス、ランニングフォーム、呼吸のリズム……どれも地味な反復練習の積み重ね。つまり、「守破離」で言えば“守”を徹底してきた人たちなのです。
守を飛ばす組織は、成果を失う
一方で、今のビジネス現場では、この“守”を軽視する風潮が強まっています。
「もっと自由にやっていい」
「型にはめないマネジメントを」
「個性を活かす組織へ」
その言葉の裏には、「型=時代遅れ」「基本=ダサい」といった認識が無意識にあるのかもしれません。
ですが、これは極めて危険です。
型を知らずに自由に動けと言われても、人は混乱するだけ。
それは、泳ぎ方を知らない子どもを、いきなり深海に放り込むようなものです。
「守」があってこそ、「破」や「離」が活きる。
これは、どの世界でも変わらない原理原則です。
「言ったつもり」と「伝わったつもり」の大きなズレ
ある技術系の企業で、実直で責任感の強いリーダーからこんな相談を受けました。
「部下には何度も注意しています。でも、全然変わらないんです」
本人は「ちゃんと伝えている」と言います。
ところが、その注意の内容を確認してみると――
「もっとちゃんとやれ」
「空気読めよ」
「そろそろ気づけよ」
……これは、伝えたというより、放り投げただけの言葉です。
実際、部下に聞くと、「自分なりに気をつけたつもりです」と返ってきました。
両者とも“やったつもり”になっている。にもかかわらず、現場の空気は悪化し続ける。
これは、極めて典型的な“型なきマネジメント”の末路です。
ラストワンマイルは「加工の技術」で埋める
物流の世界では「ラストワンマイル」という言葉があります。
中継センターまでは完璧でも、最後の配達工程が最も手間がかかる。
組織マネジメントにも、全く同じ構造があるのです。
戦略はある。方針もある。資料もある。
それなのに、なぜ成果が出ないのか?
最後のひと押し=“相手に伝わる形”に加工できていないからです。
先のリーダーには、伝える内容をそのままに、「動作として伝わる形」に加工してもらいました。
たとえば、
-
「来週の朝礼で、△△について1分で話してもらえる?」
-
「次の週報では、〇〇について3点だけ記載してほしい」
このように、抽象→具体/あいまい→明確/感情→行動へと変換することで、相手に伝わる・動ける指示になる。
この加工こそが、「守」の技術。
そしてそれを“型”として仕組み化した瞬間、現場が一気に変わり始めたのです。
型があるから、誰でも変われる
この変化は、本人だけにとどまりませんでした。
彼は自分の学びを、そのまま部下に展開しました。
すると、現場で少し浮いていた“変わり者”の新卒社員にも、同じような変化が起きたのです。
これが示すのは、再現性のある「守の型」があれば、誰にでも変化が起こせるという事実です。
才能やキャラではなく、「仕組みとしての守」がその人を育てていく。
この経験が、チーム全体の成長エンジンになっていきました。
基本が「測れる」から、改善が進む
さらに大切なのは、この型が「確認可能」であることです。
注意や指導の内容が、曖昧な言葉で放たれている限り、それが改善されたかどうかは分かりません。
でも、「挨拶の声の大きさ」「報告のタイミング」「1on1での発言内容」など、行動ベースで加工された項目であれば、改善は“測れる”ようになる。
測れるから、振り返りができる。
振り返りがあるから、成長が加速する。
この循環のスタート地点こそが、“守”なのです。
「守る文化」は、強い組織をつくる
成果を出し続ける組織には、決まって“守る文化”があります。
それは「言われたことを鵜呑みにする」という意味ではありません。
基本を守るからこそ、応用が効き、個性が活きるのです。
「型があるから、自分らしさを加えられる」
「軸があるから、ズレても戻れる」
「仕組みがあるから、属人化しない」
これが、「守」のもたらす最大の価値です。
御社には、“守るべき型”がありますか?
あなたの組織には、誰でも実行できる基本型がありますか?
その型は、ただ掲げられているだけでなく、実際に“守られて”いますか?
守があって、破がある。
守があるから、離ができる。
成果を出す組織とは、「守るべき基本を、日々の仕事の中で実行している組織」です。
そしてその文化を作るのは、リーダーであるあなたの“姿勢”に他なりません。
さあ、今日から“守ること”を、始めてみませんか?