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代表 木村黒バック写真 コラム「組織の成長加速法」-第114回 本当に恐い、経営幹部の化石化。防ぐ手立てとは?!

創業社長で成長著しい企業の場合は、創業社長はもちろんパワフルなんですが、創業以来一緒に苦楽をともにしてきた凄腕の経営幹部がいらっしゃる場合も少なくありません。

ある分野で、今年NO1になるを目指している企業があります。その成長企業の50代手前の経営幹部のYさんもそういう一人でした。

平成の時代を社長と共に駆け抜け、わずか数名だった企業を60億円を超える企業にしてきた殊勲者の一人。

にらまれたら、それはそれは恐ろしいだろうなという眼光の鋭さ。すごまれたら、言い訳なんかできないなというほどの、しゃがれながらも、野太い声の持ち主です。

そんなYさんは、社長からは全幅の信頼を勝ち取っているのですが、近頃は、少々自分の居場所が以前ほど心地よくないと感じるようになっていました。


M社長がYさんのことを話す時は、いらだちがその言葉の中に入り込みます。苦楽をともにしてきたYさんだからこそ、変わって欲しいと思う気持ちと頑固一徹の性格をも知り尽くしていて、「無理かもしれない」そう心のどこかで思っている様子でした。

「会社の売上げにこれほど貢献してきた人はいない。」と最初にYさんのことをM社長が話してくださった時に言った言葉でした。力強く、確信に満ちた声色で、M社長が本当に頼りにしていることが伺える一言でした。

ところが、社員が150名を超える大所帯になった今、属人的なやり方は組織の様々な階層、様々な部門から批判の対象になってしまいました。

否、その批判は、以前からありました。しかし、Yさんに匹敵する売上げを上げる対抗馬が社内には皆無だったのです。M社長はそんな批判を一蹴してきました。しかし、組織単位でみると、必ずしもYさんの部門がダントツとは言い難い今、Yさんのやり方を見ぬふりできなく
なってきました。

M社長にしてみれば、「いわんこっちゃない」です。10年以上も、Yさんには注意してきたのですから。M社長に言わせると、Yさんは全く変わる気配がなかったそうです。

「Yは、売上げを作ってはきたけれど、組織は作ってことなかった」とまた、M社長の言葉にはいらだちが込められます。


Yさんに起こったことは、化石化という現象です。化石化とは、成長、進化が止まってしまった状態を指します。

成長著しい組織では、組織の変化のスピードが速い。組織内にいる人はその組織の変化のスピードについていかなければ、化石化することになるのです。

例えば、毎日使うパソコンの基本ソフトのウィンドウズ。バージョンアップをしないウィンドウズは役に立たなくなります。ウィンドウズは、なぜバージョンアップするかというと、世の中の流れについていくためです。

最初のウィンドウズが世に出た頃、インターネットが世の中に普及し始めた頃でした。携帯電話は未だありませんでした。ですから、携帯電話との連携機能などもちろんありませんでした。

ところが、最新のウィンドウズ10では携帯をすっ飛ばして、スマホとの連動機能がいくつもあります。世の中の流れについていくために、バージョンアップして、機能強化を果たしています。

組織の中の人々も、組織の成長と共に、自らの能力のアップデートが必要なのです。


30名以下の時には必要の無かったことが50名になると必要なことがでてきます。同様に、50名以下では必要なかったことが100名になると必要なことがまた出てきます。更に、100名以下では必要の無かったことが、更なる組織の成長と共に、必要なことが増えていきます。

具体的な例を上げると、50名を超える頃から、社員間の経験値の違いの幅が大きくなっていきます。すると、組織の更なる拡大のためには、経験値の違いの幅を埋める機能が組織に必要になります。組織の機能がアップデートされないと組織自体の化石化がはじまります。

社員間の経験値の違いを埋めるために、仕組みでの対応が始まります。しかし、そのいつまでも機能する万能の仕組みは存在しません。100名を超える頃には、それまで役にたっていた仕組みでは不十分になってきます。

過去はうまくいっていたという仕組みに固執すれば、その行為自体が、化石化を生む原因となります。


古参の社員の能力アップデートが進まないと、組織の機能のアップデートが上手くいかなくなります。そして、よくある現象が組織に現れます。相対的に組織で立場が弱い人が、病気になったり、辞めたりという現象です。

多くの会社は、社員が病気になったり、辞めたりすると、対処療法的なことを行います。配置換えをしてみたり、待遇を改善してみたりというその場その場の対応に終始するのです。

これは、もちろん根本解決とはことなるので、一端治まったかのように見えても、数年すると、また同じ問題に遭遇します。また組織の立場の弱い人達にしわ寄せがいくのです。


人は変化を嫌います。変化への対応は面倒だからです。そのため、社員各人に任せていると、社員は能力のアップデートを怠り、化石化し、やがて自らが所属する組織も化石化させてしまいます。

化石化したYさんは、社員の変化成長を促すことができず、成長意欲の高い社員たちは、Yさんに愛想を尽かして次々に辞めていきました。

残った社員は、盲目的に言われるがまま動く社員ばかり。中長期的には勝者が誰一人いない組織をせっせと作っていたことになります。


そんな状況だったYさんも、実は自分の弱点をよくわかっていました。Yさん曰く、「試行錯誤の連続だった」というのです。結果的には、わかっていたものの、どう取り組んだら良いのか、わからず時間が経過していたというのです。これは悲劇です。

Yさんは、やり方を知らなかったとはいえ、自分の力不足故に多くの社員が去っていったことを顧みて、深く反省していましたし、強面を装いながら、深く傷ついていました。

社長は、変わるべき方向性を示してはいましたが、どうやったら具体的にそこにたどりつけるのかは、具体的には伝えていませんでした。Yさんはそのことで社長を責めるようなことは一切ありませんでしたが、結果的にYさんは、身動きが取れなかったのです。

コンサルティングを受けた後は、Yさんは、メキメキ技術を身につけ、能力アップを見事に果たしました。1年後には、「人育て上手」と周りから評価されるまでになったのです。


多くの企業を観てきて思うことがあります。入社5年以上の社員のアップデートするべき能力のひとつは、まちがいなくマネジメント能力だと。

マネジメント能力は、本人の化石化を防ぎ、そして、組織の柔軟性を保つために最も有効な能力であると、私たちは信じています。


さて、御社の経営幹部に、化石化の兆しはないでしょうか?もし、あるとしたら、どのように、能力のアップデートを行うか、その具体策を社長はもっていますか?