コラム「組織の成長加速法」-第231回 女性リーダー飛躍の条件は“ロールモデル”ではなく“距離感”だった

「女性社員はいるのにリーダーが育たない」社長の悩みとは?
「女性社員は増えているのに、リーダーが育たないんです。」――ある30億規模企業のY社長からのご相談です。確かに優秀な女性社員は次々と入社しているのに、役職者はまだ係長が一人だけ。Y社長は部門長達にこの理由を尋ねたそうです。「自信がない」「幹部は男性ばかり」という声が多かったとのこと。Y社長自身、現場の女性リーダー候補に展望を聞いても「指標となる人がいない」と返ってきたそうです。
なぜ女性リーダーは増えない?最大の理由は“イメージ不在”
女性リーダーが増えない一番の理由は「リーダーのイメージできないから」です。目標がぼんやりしていると、具体的な行動がとれないのと同様です。誰もやったことがない役割は、自分ごととして想像するのが難しい。これは女性に限らず、男性でも同じです。たとえば、新規事業に初めて挑むとき、多くの幹部が「前例がないから無理」と後ずさりします。つまり「女性だから」ではなく「未知の領域だから」人は尻込みするのです。
「女性には無理」という思い込みが成長を止める
「女性には無理」という声もよく聞きます。ですが、これは大きな誤解です。むしろリーダーに求められる能力の一つであるコミュニケーション力は、統計的に見ても女性の方が高い傾向があります。実際、私が関わってきた企業でも、社内で強い影響力を持つのは女性リーダーであることが多い。問題は「能力がない」のではなく「能力の活かし方を間違えている」ことなのです。
女性の強み=コミュニケーション力は最強の武器
女性の強みは、現場社員との信頼関係をつくる速さです。小さな変化に気づき、相手の気持ちを汲み取る力は、リーダーシップに直結します。ある会社では、女性主任がわずか数ヶ月でチームの雰囲気を改善しました。コミュニケーションは武器であり、組織にとって大きな財産です。ところが、この武器がある局面から弱点に変わることをご存知でしょうか?
リーダー昇進で急失速?“距離感の壁”に要注意
実は、物理的に距離が離れると女性リーダーの影響力は急速に低下することがあります。現場に近いポジションでは強みが生きますが、課長・部長になると、一人一人と直接接する時間が減ります。その結果、「近くにいないと伝わらない」状態に陥り、組織が機能不全になる。ここに女性リーダー育成の最大の壁があるのです。
ロールモデル探しの落とし穴―真似しても成果は出ない
「尊敬できるリーダーを見つければ道が拓ける」と考える人もいます。しかし、これは幻想です。男性リーダーでさえ「憧れの上司がいたから自分も成長できた」とはなりません。ロールモデルを真似するだけでは成果につながらないのです。大切なのは「誰を目指すか」ではなく、「自分がどう行動するか」。ここを勘違いすると、リーダーとしての成長は止まってしまいます。
飛躍する女性リーダーは“距離感マネジメント”を持っている
女性リーダーが飛躍するために必要なのは、距離感のマネジメントです。近づきすぎても、離れすぎても組織は回りません。初期の段階から「適度な距離」を保つ訓練をすることが、次のステップを支える基盤になります。これは男女関係なく必要ですが、特に女性リーダーが成長するうえで意識しておくと、後の壁を乗り越えやすくなります。
「適度な距離」とは、社員が持続的に成果をあげていれば、それが正解です。成果にぶれがあればそれは、距離の調整が必要なサインです。
業績低迷から執行役員へ!金融業女性リーダーの逆転劇
ある金融企業で、初めて課長になった女性管理職がいました。昇進直後、チームは低迷し「やはり女性には無理か」と囁かれました。しかし彼女は学び直しました。「一歩引いて、相手に任せる」距離感を意識したのです。するとチームは急速に回復。やがて部長、執行役員へと昇進し、全社を動かす存在にまで成長しました。
降格寸前からV字回復!サービス業女性部長の挑戦
サービス業の女性部長は、かつて直属の部下とはうまくいくものの、他部門の課長達との関係が築けず降格寸前でした。そこで実践したのが距離感マネジメントです。「全員を近くに置かなくてもいい」と割り切り、要所を押さえるスタイルに切り替えました。その結果、コスト部門だった部署は全社一の利益貢献部門へ。今では3期連続で最高売上・利益を更新しています。
御社の女性リーダーは距離感を意識実践できていますか?
女性リーダーが育つかどうかは、能力の差ではなく「距離感のマネジメント」があるかどうかにかかっています。御社の女性リーダーは、距離を意識してマネジメントできているでしょうか?「女性だから難しい」のではなく、成長を支える仕組みがあるか否か。ぜひ、自社の現状を点検してみてください。
「距離感のマネジメント」聞き慣れない言葉で、イメージがわかない方もいるかもしれませんが、これはマネジメント技術を実践することで、誰もが無理なく身につけられます。